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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

コロナ感染症の影響もあり、2021年度・22年度の看護職員離職率は、正規雇用11.8%、新卒10.2%、既卒16.6%と高い水準—日看協

2024.4.4.(木)

看護職員の離職率を見ると、新型コロナウイルス感染症の中で2021年度・22年度は「高い水準」となっている—。

看護職員の働き方を見ると、医師からのタスク・シフト、他職種へのタスク・シフトが一定程度進んでいるが、「院内での医療職種の業務を検討する会議体」が必ずしも設置されていないなどの課題もある—。

日本看護協会が3月29日に公表した「2023年 病院看護実態調査」結果速報から、このような状況が明らかになりました(日看協のサイトはこちら)。

看護職員の離職率、2021・22年度は高い水準で推移、コロナ感染症の影響大

日看協は毎年、病院に勤務する看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などを調査(病院看護実態調査)しています。

2023年調査では、例年と同じく(1)看護職員の離職率(2)給与状況―などを調べるとともに、「看護職員の働き方」について実態を調査しています。ポイントを絞って調査結果を眺めてみましょう。



まず(1)の離職率について見てみます。

2022年度からいわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度にはすべて後期高齢者となります。このため、地域の医療・介護ニーズが今後しばらくの間、急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者の増加スピードは鈍化するものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少します。こうした状況の中では「医療・介護提供体制の確保」が極めて重大な課題となり、「看護職員の離職防止」が重要テーマの1つとなるのです。

2022年度における看護職の離職率を見ると、▼正規雇用で11.8%(前年度から0.2ポイント上昇)▼新卒で10.2%(同0.1ポイント低下)▼既卒で16.6%(同0.2ポイント低下)―などとなりました。2021年度・22年度と高い離職率が続いており、コロナ禍での尽力による「燃え尽き」なども関係している可能性があります。

看護職員の離職率(2023年病院看護実態調査1 240329)



病院の規模別に離職率を見ると次のような状況です。
▼99床以下:正規雇用12.7%(前年度から0.6ポイント上昇)・新卒13.8%(同0.1ポイント低下)・既卒19.5%(同0.6ポイント低下)
▼100-199床:正規雇用12.8%(同増減なし)・新卒12.3%(同0.4ポイント低下)・既卒18.7%(同0.5ポイント上昇)
▼200-299床:正規雇用11.8%(同0.4ポイント低下)・新卒10.3%(同1.1ポイント上昇)・既卒16.2%(同1.8ポイント低下)
▼300-399床:正規雇用11.3%(同0.7ポイント低下)・新卒10.8%(同1.0ポイント低下)・既卒15.9%(同0.3ポイント上昇)
▼400-499床:正規雇用11.1%(同0.4ポイント上昇)・新卒10.4%(同0.8ポイント上昇)・既卒13.0%(同2.7ポイント上昇)
▼500床以上:正規雇用11.5%(同0.7ポイント上昇)・新卒9.2%(同0.1ポイント低下)・既卒11.6%(同1.2ポイント低下)

コロナ感染症が落ち着いてきた中で、今後、離職率がどう推移するのか、今後の状況を詳しく見ていく必要があります。

看護職員の離職率・病床規模別(2023年病院看護実態調査2 240329)



また設置主体別に「離職率の高い病院」を見ると、正規雇用では▼個人病院:17.6%(前年度に比べて3.0ポイント上昇)▼医療法人:14.3%(同0.1ポイント低下)▼その他公的(日赤や済生会など以外):14.1%(同3.1ポイント上昇)▼私立学校法人:13.5%(同0.8ポイント上昇)▼公益社団・財団法人:13.1%(同0.6ポイント上昇)―などです。

新卒では、▼個人病院:15.6%(前年度に比べて1.8ポイント上昇)▼済生会:12.9%(同2.9ポイント上昇)▼医療法人:11.5%(同0.4ポイント低下)▼その他の法人(一般社団法人、一般財団法人等):11.1%(同1.6ポイント上昇)▼社会福祉法人:10.9%(同2.5ポイント低下)―などで離職率が高くなりました。



逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼公立(自治体立、地方独立行政法人など):8.8%(前年度に比べ0.8ポイント上昇)▼厚生連:9.7%(同0.4ポイント低下)▼日赤:9.8%(同0.4ポイント上昇)―など、新卒では▼その他公的:2.9%(同2.2ポイント低下)▼社会保険団体(健保組合、共済組合立など):8.5%(同増減なし)▼日赤:9.0%(同0.3ポイント上昇)―などとなりました。どういった取り組みにより離職防止につなげているのかに注目が集まります。

看護職員の離職率・病院開設主体別(2023年病院看護実態調査3 240329)



さらに都道府県別に見ると、離職率が高いのは、正規雇用では▼東京都:15.5%(前年度に比べて0.9ポイント上昇)▼神奈川県:13.7%(同0.9ポイント低下)▼兵庫県:13.7%(同1.1ポイント上昇)―など、新卒では▼高知県:25.5%(同15.8ポイント上昇)▼香川県:16.9%(同7.5ポイント上昇)▼大阪府:13.1%(同1.2ポイント低下)―などです。高知県・香川県は特殊事情があったものと考えられそうです。

逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼岩手県:6.5%(前年度に比べ0.9ポイント低下)▼鳥取県:7.2%(同0.5ポイント低下)▼徳島県:7.2%(同1.3ポイント上昇)―など、新卒では▼福井県:3.9%(同0.2ポイント上昇)▼石川県:5.4%(同1.2ポイント低下)▼鳥取県:4.7%(同1.8ポイント低下)▼秋田県:5.6%(同2.4ポイント低下)―などとなっています。

東京や大阪などの大都市とその周辺では「転職しやすさ」が離職率に大きく関係しているようですが、より詳しい分析に期待が集まります。

看護職員の離職率・都道府県別1(2023年病院看護実態調査4 240329)

看護職員の離職率・都道府県別2(2023年病院看護実態調査5 240329)



なお、多くの病院で「コロナ感染症と看護職員離職との間に関係がある」と考えている状況も分かりました。

コロナ禍で臨床実習が不十分であった看護師へ、多くの病院が一定の配慮・訓練強化

このように離職率が高まる中で、看護職員にどういったサポートがなされているのかを見ると、次のような状況が浮かび上がってきました。

▽コロナ感染症により臨地実習等に影響を受けた新人看護職員への対応(新人看護職員の育成のために教育・訓練の面で強化・工夫して実施したこと)としては、「技術演習」「検査や処置の独り立ちまでの技術チェック」「e-ラーニング」「シャドーイング」などが多いが、「特に対応していない」との回答も一部ある

新人看護師への訓練強化等(2023年病院看護実態調査6 240329)



▽新人看護職員の夜勤の独り立ちに関して行った 運用面での配慮としては、「夜勤帯に1人カウントで配置するまでの期間を長くした」「夜勤帯の独り立ち後、受け持ち患者数を少数に留める期間を長くした」などが目立つ

▽新人看護職員に対するメンタルサポートとしては、「業務時間内に新人看護職員が集合できる場(研修等)を確保した」「新人看護職員対象の研修等の際にリフレクション(振り返り)の時間を確保した」などが目立つ

看護職員の給与、勤続10年で税込給与平均が32万6675円に

次に「看護職員の給与」を見てみると、次のような状況です。

●2023年度採用の新卒看護師の初任給
▽高卒+3年課程:基本給(平均):20万4950円(前年度調査から1674円上昇)、税込給与(平均):26万6558円(同2847円上昇)
▽大卒:基本給(平均):21万963円(同1346円上昇)、税込給与(平均):27万4752円(同3022円低下)

●勤続10年(31-32歳)・非管理職の給与
▽基本給(平均):24万7629円(同859円上昇)、税込給与(平均):32万6675円(同2229円上昇)

看護職員の平均給与(2023年病院看護実態調査7 240329)

看護職員の平均給与の推移(2023年病院看護実態調査8 240329)

看護職員処遇改善評価料取得病院では、看護職員給与アップ幅が大きい

ところで、2022年度の診療報酬改定では、救急病院を中心に「看護職員処遇改善評価料」が創設されました(関連記事はこちら)。これに関連する調査結果を見ると、次のような状況が浮かび上がってきています。

▽評価料の対象「外」病院でも、27.0%が基本給引き上げ、14.1%が手当引き上げを実施

▽評価料の「対象病院」と「対象外病院」とで比較すると、「対象病院」のほうが基本給、税込給与総額ともに高く、税込給与総額の上げ幅も対象病院のほうがかなり大きい(処遇改善の状況に格差がある)

看護職員処遇改善評価料の有無別の給与比較(2023年病院看護実態調査9 240329)



こうした状況も踏まえ、2024年度診療報酬改定では、医療従事者全体・医療機関全体を対象にした「ベースアップ評価料」が新設されています(関連記事はこちら)。

看護職員から他職種へのタスク・シフトを院内で組織的に進めることが重要だが・・・

今般の調査では、「看護職員の働き方」にも注目しています。目を引く調査結果としては、次のような点があげられそうです。

▽2022年度のメンタルヘルス不調による連続休暇取得者(正規雇用)が増加した病院が28.1%、減少した病院が11.5%

▽夜勤勤務者の仮眠取得時間に関するルールの整備状況を見ると、明文ルールありが56.5%、非明文ルールありが22.2%であるが、19.7%はルールなし(部署任せ)

▽仮眠用個室について、「清潔な寝具あり」「空調あり」「部署内設置あり」の病院が多いものの、42.5%で「仮眠用の個室設置」がなされていない

看護職員の仮眠室の状況(2023年病院看護実態調査10 240329)



▽業務の効率化に向けた取り組みとしては、「標準化」「多職種との連携、タスク・シフト/シェア」「勤務体制の整備」などが一定程度進んでいるものの、「ロボットなどを用いた作業の効率化」「記録の効率化」「勤務表作成ソフトの導入」「ICTを用いた情報の共有」などがまだ遅れている

看護職員の業務効率化の取り組み(2023年病院看護実態調査11 240329)



▽医師からタスク・シフト/シェアを受け、看護師が行うようになった業務としては「注射、採血、静脈路の確保等」「診察前の情報収集」「事前に取り決めたプロトコールに基づく薬剤の投与、採血・検査の実施」「特定行為(38行為21区分のすべてまたはその一部)の実施」「カテーテルの留置、抜去等の各種処置行為」などが目立つ

医師から看護職員へのタスク・シフト(2023年病院看護実態調査12 240329)



▽看護師からタスク・シフト/シェアを実施した医師以外の医療関係職種としては、「薬剤師」「臨床検査技師」「管理栄養士」などが目立つ

▽タスク・シフト/シェア実施上の課題としては、「タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の余力(人員確保等)」「医療従事者全体の意識改革・啓発」「タスク・シフト/シェアを受ける側の医療関係職種の知識・技能の習得」「タスク・シフト/シェアに関する組織の方針決定や取組み内容を決定する会議体等がない」などがあげられている

タスク・シフトの課題(2023年病院看護実態調査13 240329)



ついに、この4月(2024年4月)から勤務医の労働時間が制限され(原則960時間以内、特例でも1860時間以内)、結果、「医師から看護職員へのタスク・シフト」などが生じると考えられます。その際、「看護職員から他職種へのタスク・シフト」を同時に進めなければ、看護職員がパンクしてしまいます。院内で組織的に「どの業務をどの職種が行うことが有効かつ安全か」を検討することが必要です。



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