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病床機能報告 病床ユニット

切除可能な食道がん、現在の「術前CF療法」よりも、生存期間延長が期待できる「術前DCF療法」が新たな標準治療へ―国がん・JCOG

2024.7.3.(水)

切除可能な食道がんについては、現在「術前CF療法(5-FUとシスプラチンの併用)による化学療法」が標準治療とされているが、ここにドセタキセルを加えた「術前DCF療法」を実施することで、生存期間延長が期待できる。「術前DCF療法」を新たな標準治療として、より推奨していくべきである—。

ただし、術前DCF療法では、重篤な副作用である【発熱性好中球減少症】が術前CF療法よりもやや多くなるため、「高齢患者や臓器機能に問題がある患者に強く副作用が出る」ことが考えられる—。

食道がん治療では、このほかに「食事への影響」や「再発の可能性」など考慮すべき様々な事項もあり、「治療法の利点と欠点について、個々の患者がよく説明を受けたうえで治療法を決める」ことも重要である—。

国立がん研究センターと日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が6月27日に、こうした研究結果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。難治がん・希少がん対策が着実に進んでいる状況が伺えます。

欧米の標準治療である「CF+RT療法」は他病死誘発も、標準治療の世界的転換点

食道がんは依然予後の難治性のがんです。現在、我が国では「術前CF療法(5-FUとシスプラチンの併用)による化学療法」が標準治療とされていますが、より強力な術前治療の開発が求められています。

そこで今般、切除可能な進行食道がんに対して、(1)現在の標準治療である術前CF療法(2)より強力な細胞傷害性抗がん剤であるドセタキセルをCF療法に加えた術前DCF療法(3)欧米の標準治療である放射線治療をCF療法に加えた化学放射線療法(CF+RT療法)の—の比較試験を実施。具体的には601名のIII期食道がん患者(扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、類基底細胞がん)患者を(1)から(3)の3つのグループにランダムに割り付け、治療結果を比較しました((1)のCF療法:199名、(2)のDCF療法:202名、(3)のCF+RT療法:200名、患者背景に違いなし)。

3つの治療法の内訳と評価項目



そこから次のような「有効性」に関する結果が得られました。

▽主要な評価項目である「生存期間」の中央値は、(1)のCF療法群:5.6年、(2)のDCF療法群:未到達(多くの患者が生存)、(3)のCF+RT療法群:7.0年—(下図の上段)
→統計学的に、(2)のDCF療法群が(1)のCF療法群を上回った
→統計学的には、(3)のCF+RT療法は、(1)のCF療法群を上回らなかった

▽3年生存率は、(1)のCF療法群:62.6%、(2)のDCF療法群:72.1%、(3)のCF+RT療法群:68.3%—(下図の下段)

3つの治療法比較1(全生存期間、3年生存率)



▽死亡患者の死因を群別にみると、以下のような状況であった
▼食道がんの再発に伴う死亡
→(1)のCF療法群:75.5%、(2)のDCF療法群:79.7%、(3)のCF+RT療法群:64.0%

▼肺炎や心臓疾患などがん以外での死亡(他病死)
→(1)のCF療法群:13.3%、(2)のDCF療法群:9.5%、(3)のCF+RT療法群:25.8%

3つの治療法比較2(生存者、死亡者、死因)



さらに、観察期間5年終了時の最終解析結果を見ても、▼(1)のCF療法群に対し、(2)のDCF療法群は引き続き有意に生存期間が良好であった▼(3)のCF+RT療法群は、引き続き、CF療法群に対する有意差を示せなかった—ことも明らかとなっています。

このように「DCF療法」が、CF療法や、欧米の標準治療であるCF+RT療法よりも「有効」であることが伺えます。



もっとも、治療法は有効性だけで判断することはできず、「安全性」も加味して判断することが必要です。そこで各療法の安全性を比較するために「術前治療に関連した副作用」の状況を見ると、次のような状況が明らかとなりました。
【重篤な好中球減少】
→(1)のCF療法群:23.4%、(2)のDCF療法群:85.2%、(3)のCF+RT療法群:44.5%

【発熱性好中球減少症】
→(1)のCF療法群:1.0%、(2)のDCF療法群:16.3%、(3)のCF+RT療法群:4.7%



また、「術後の合併症」に関しては、次のような状況が明らかになりました。
【肺炎】
→(1)のCF療法群:10.3%、(2)のDCF療法群:9.8%、(3)のCF+RT療法群:12.9%

【吻合部漏出】
→(1)のCF療法群:10.3%、(2)のDCF療法群:8.7%、(3)のCF+RT療法群:2.4%

【反回神経麻痺】
→(1)のCF療法群:15.1%、(2)のDCF療法群:10.4%、(3)のCF+RT療法群:9.6%

【治療関連死】
→(1)のCF療法群:2%、(2)のDCF療法群:2%、(3)のCF+RT療法群:1%



こうした結果を踏まえて、国がん・JCOGでは「いずれも大きな違いは見られず3群とも安全性は許容範囲と考えられる」としたものの、「(2)の術前DCF療法に関しては、重大な副作用である【発熱性好中球減少症】が他の治療に比べやや多く、特に高齢患者や臓器機能に問題がある患者に強く副作用が出る」ことから、「患者と相談しながら注意して治療を行う必要がある」とコメントしています。



併せて、結果を総合して次のような提言を行いました。

▽切除可能な進行食道がん(扁平上皮がん、類基底細胞がん、腺扁平上皮がん)患者での術前化学療法は、「術前DCF療法」が最も生存期間延長効果を期待できる治療で、従来の術前CF療法に替わる「標準治療」となる

▽ただし、食道がん治療では「食事への影響」「抗がん剤や手術に伴う副作用」「再発の可能性」など様々な考慮すべき事項もあり、「治療法の利点と欠点について、個々の患者がよく説明を受けたうえで治療法を決める」ことも重要である



さらに、欧米の標準治療である術前CF+RT療法については、▼術前CF療法と比べて生存期間を延長できなかった▼心臓病や肺炎など他病死をより多く誘発している—という結果から、欧米における標準治療を見直しの必要性も示唆しています。欧米でも同様の研究が進められており「世界的な食道がんの治療法が大きな転換期を迎えている」ともコメントしました。



なお、JCOG食道がんグループでは、「術前DCF療法(上記(2)や術前CF療法(上記(1)に、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(販売名:オプジーボ)を加えることで、より治療効果を高めることができるかどうか)を評価する医師主導治験も進めており、そこからは「手術の安全性」と「短期的な治療効果の改善」が示されています。

さらに、JCOG食道がんグループでは、「術前DCF療法後に手術を行い、術後にさらに治療を加えることで予後が改善するか否か」を検証する研究も進めています。



食道がん治療が進展し、より多くの患者が恩恵を受けられるようになることに期待が集まります。

【更新履歴】DCF療法は「標準治療」に盛り込まれております。「今後、標準治療になる」旨の記載をしておりましたが、その点で記事が誤っておりました。大変失礼いたしました。お詫びして訂正いたします。



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