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病院のスタッフ配置、医療法標準適合率は医師98.3%、看護師・准看護師99.4%、薬剤師97.9%—2021年度立入検査結果

2024.9.24.(火)

2021年度に医師配置の標準を満たしている病院は98.3%、看護師・准看護師については99.4%となった―。

また、薬剤師については「改善」傾向が見られるものの、適合率は97.9%で厳しい状況が依然続いている―。

このような状況が、厚生労働省が9月20日に発表した2021年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

医師配置の地域格差(偏在)が依然として存在

医療法では、医療の質・安全性を担保するために、人員配置や構造設備に関する「標準」(基準)を定めています(診療報酬では、ここに上乗せした、より厳しい基準を設けていることもある)。都道府県都知事や保健所設置市の市長、特別区の区長は毎年度、医療機関に立入検査を行い「医療法の基準が遵守されているかどうか」を確認しています(医療法第25条、前年度結果の記事はこちら)。

2021年度には、全8032病院(当時)のうち5515病院に対して立入検査が行われ、実施率は68.7%(前年度から36.6ポイント上昇)となりました。前年度の実施率低下は、述べるまでもなく「新型コロナウイルス感染症」拡大防止のためです。



まず医師の配置状況を見てみます。医療法では、▼一般病床は16対1(患者16人に対し医師1人、以下同様)以上▼療養病床は48対1以上―などの医師配置標準が定められています。

2021年度の医師配置標準数遵守状況は98.3%で、前年度から0.8ポイント向上しました。▼2009年度:90.0% →(1.8ポイント向上)→ ▼2010年度:91.8% →(0.7ポイント向上)→ ▼2011年度:92.5% →(1.1ポイント向上)→ ▼2012年度:93.6% →(0.9ポイント向上)→ ▼2013年度:94.5% →(1.0ポイント向上)→ ▼2014年度:95.5% →(0.4ポイント向上)→ ▼2015年度:95.9% →(0.5ポイント向上)→ ▼2016年度:96.4%→(増減なし)→ ▼2017年度:96.4%→(0.6ポイント向上)→ ▼2018年度:97.0%→(0.3ポイント向上)→ ▼2019年度:97.3%→(0.2ポイント向上)→ ▼2020年度:97.5%→(0.8ポイント向上)→ ▼2021年度:98.3%—となっており、改善傾向を確認できます。今後も「さらなる向上、基準の遵守」に向けた取り組みに期待が集まります。

医師配置の状況(年度・地域別)(2021年度立入検査結果1 240920)



地域別に見ると、近畿(99.5%、前年度に比べ0.1ポイント上昇)や東海(99.2%、同増減なし)、九州(98.8%、同0.2ポイント低下)、関東(98.7%、同0.3ポイント低下)などでは高いものの、北海道・東北(95.5%、同4.6ポイント上昇)、北陸・甲信越(97.6%、同0.6ポイント上昇)、四国(97.7%、同2.6ポイント上昇)では若干低くなっています。

地域ブロック間の格差(つまり医師の偏在)が依然として小さくないことが伺えます。この点、厚生労働省は、8月30日に「近未来健康活躍社会戦略」の中で「医師偏在対策総合パッケージの骨子案」を提示。あわせて、武見厚生労働大臣を本部長とする「厚生労働省医師偏在対策推進本部」が9月5日に発足し、「医師偏在対策総合パッケージ」に向けた論点を整理(関連記事はこちら)を行っており、年内(2024年内)に医師偏在対策総合パッケージがとりまとめられます。

医師偏在対策(近未来健康活躍社会戦略2 240830)



医師の充足は「医師の働き方改革」にも強く関係します(医師が不足していれば、個々の医師の負担が大きく、働き方改革を進めにくい)。この点、「病院の再編・統合」が▼地域医療構想の実現▼医師働き方改革▼医師偏在の解消—のいずれのテーマにおいても「重要なカギ」となります。とりわけ医師確保が困難な北海道・東北ブロックや北陸・甲信越ブロックなどでは、患者のアクセスにも十分配慮したうえで、今後、「病院の再編・統合」をしっかり検討していくことが重要となってくるでしょう。



また病床規模別に医師配置状況を見てみると、一般病院では▼500床以上:100.0%(前年度から変わらず)▼400-499床:100.0%(同増減なし)▼300-399床:98.5%(同0.3ポイント上昇)▼200-299床:97.3%(同0.7ポイント上昇)▼150-199床:98.9%(同0.9ポイント上昇)▼100-149床:98.8(同1.4ポイント上昇)▼50-99床:98.5%(同2.0ポイント上昇)▼20-49床:96.4%(同1.7ポイント上昇)―となっています。中小規模病院で医師確保が難しい状況ですが、尽力している状況が伺えます。

医師配置の状況(病床規模別)(2021年度立入検査結果2 240920)

看護職員の確保、中小規模病院のみならず、大病院でも厳しい

次に、看護師・准看護師(以下、看護師等)の配置状況を見てみます。医療法では、▼一般病院の一般病床は3対1以上▼同じく療養病床は4対1以上▼特定機能病院は2対1以上―などといった標準配置数が定められています(病棟単位)。

2020年度は99.4%の病院で医療法標準を満たしています(前年度から増減なし)。▼2009年度:99.2% →(0.2ポイント向上)→ ▼2010年度:99.4% →(増減なし)→ ▼2011年度:99.4% →(0.4ポイント低下)→ ▼2012年度:99.0% →(0.2ポイント低下)→ ▼2013年度:98.8% →(0.5ポイント向上)→ ▼2014年度:99.3% →(増減なし)→ ▼2015年度:99.3% →(0.1ポイント向上)→ ▼2016年度:99.4% →(0.2ポイント低下)→ ▼2017年度:99.2→(0.2ポイント低下)→▼2018年度:99.0%→(0.3ポイント上昇)→ ▼2019年度:99.3%→(0.2ポイント上昇)→ ▼2020年度:99.4%→(増減なし)→▼2021年度:99.4%—と「増減を繰り返し」ており、日本全国で「看護師等の確保・定着に苦労している」状況は変わっていないようです。

適合率の高い地域は▼四国(100.0%、前年度から増減なし)▼九州(99.9%、同0.1ポイント上昇)▼東海(99.4%、同0.5ポイント上昇)▼中国(99.4%)—などですが、逆に低い地域は▼関東(98.9%、同0.2ポイント上昇)▼北海道・東北(99.3%、同0.7ポイント低下)▼北陸・甲信越(99.1%、同0.9ポイント低下)—などとなっています。

看護師配置の状況(年度・地域別)(2021年度立入検査結果3 240920)



病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:100.0%(前年度から増減なし)▼400-499床:99.5%(同0.5ポイント上昇)▼300-399床:100.0%(同0.6ポイント上昇)▼200-299床:99.8%(同0.2ポイント低下)▼150-199床:100.0%(同0.3ポイント上昇)▼100-149床:99.5%(同0.8ポイント上昇)▼50-99床:98.8%(同0.5ポイント低下)▼20-49床:98.6%(同0.2ポイント低下)―となっています。中小規模の病院はもちろん、大規模な病院でも看護師等確保に苦戦している状況を再確認できます。

なお、看護師等を標準の50%未満しか配置できていない病院は、2015年度には解消しましたが、2016年度には3病院、さらに2017年度には1病院、2018年度には2病院、2019年度には1病院、2020年度には3病院、2021年度には2病院となりました(一般病院)。看護師等の配置不足は、個々の看護師等の負担増に直結する(50%未満であれば、単純計算で100%病院の2倍以上の負担となっている計算である)ため、地域全体による支援(個々の病院の努力には限界もある)充実が求められます。

看護師配置の状況(病床規模別)(2021年度立入検査結果4 240920)

病院薬剤師の確保、中小規模病院でとくに厳しい

薬剤師については、医療法上、▼一般病院の一般病床は70対1以上▼同じく療養病床は150対1以上▼特定機能病院は30対1以上―などといった標準配置数が定められています(病棟)。

適合状況を見てみると、2021年度は97.9%の病院で医療法標準を満たしていることが分かりました。前年度と比べて0.3ポイント上昇しています。

地域別に適合率を見ると、▼近畿(99.5%、前年度から0.6ポイント上昇)▼北陸・甲信越(99.5%、同1.2ポイント上昇)▼東海(98.5%、同0.4ポイント低下)—などで高く、逆に▼四国(96.4、同1.1ポイント低下)▼北海道・東北(96.5%、同0.6ポイント上昇)▼九州(96.5%、同0.5ポイント上昇)―などで低くなっています。

薬剤師配置の状況(年度・地域別)(2021年度立入検査結果5 240920)



病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:100.0%(前年度と増減なし)▼400-499床:99.5%(同0.5ポイント低下)▼300-399床:99.7%(同0.3ポイント上昇)▼200-299床:99.3%(同0.2ポイント低下)▼150-199床:98.3%(同0.9ポイント上昇)▼100-149床:98.0%(同0.1ポイント上昇)▼50-99床:98.0%(同0.3ポイント低下)▼20-49床:95.7%(同2.7ポイント上昇)―となりました。中小規模病院では「薬剤師適合率が低い」状況を確認できます。

薬剤師配置の状況(病床規模別)(2021年度立入検査結果6 240920)



これに関連し、厚労省が昨年(2023年)6月9日に公表した「薬剤師偏在指標」によれば、病院薬剤師は「すべての都道府県で少な」く(目標値・必要数をクリアできていない)、最高の京都府でも「目標値の94%」にとどまり、最低の青森県では「目標値の55%」しか確保できていないことなどが明らかにされています(関連記事はこちら)。

また、日本病院会の調査では、例えば▼多くの病院が「薬剤師不足、薬剤師確保の難渋」を感じ、とりわけ「薬剤師業務を評価する診療報酬」(病棟薬剤業務実施加算や外来腫瘍化学療法診療料など)を取得する病院ほど「薬剤師不足」を強く感じている▼事態の改善に向け多くの病院では薬剤師の確保のため「学会や研修会への参加を経済的に支援する」「専門資格取得を経済的にも、その他の面でも支援する」などの取り組みを行っているが、それでもなお薬剤師不足に難渋している—ことなどが明らかになっています(関連記事はこちら)。

一般病院で薬剤師不足感が強い(日病・病院薬剤師確保アンケート調査5 220711)

大規模病院で薬剤師不足感が強い(日病・病院薬剤師確保アンケート調査6 220711)



他方、2024年度からスタートした第8次医療計画でも「病院薬剤師の確保」が重視され、▼医療計画の中に「薬剤師確保」に関する記載を求める(現在は「資質向上」に関する記載のみ)▼各都道府県において「地域における薬剤師確保・配置状況」を把握したうえで、「薬剤師確保」策を推進していく(現在は、4割近くの都道府県が地域の薬剤師充足状況を把握していない)▼地域医療確保総合確保基金を活用し「地域医療機関で一定期間勤務することを条件に奨学金返済を免除する」などの薬学生支援が可能である旨をPRする—といった方向性が示されています(関連記事はこちら)。これを踏まえ厚生労働省は「薬剤師確保ガイドライン」と「薬剤師偏在指標」を公表し、病院薬剤師が「すべての都道府県で不足している」(目標値・必要数をクリアできていない)ことを確認したうえで、薬剤師の偏在解消に向けて、また病院薬剤師の確保に向けて、「3年を1期とする薬剤師確保計画」を作成し、これに沿って計画的・戦略的に薬剤師確保を進めるべきことを各都道府県などに求めています。

薬剤師偏在を計画的に解消していく1



なお、病院全体で法令遵守の度合いが芳しくない項目は、低い順(悪い順)に(1)診療放射線の安全利用に係る研修実施:92.6%(2)検体検査に係る精度管理体制整備:94.6%(3)検体検査に係る台帳整理:96.0%(4)検体検査に係る作業日誌の作成:96.4%(5)職員の健康管理:96.7%—などとなっています。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

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