看護職員の離職率は低下し正規雇用11.3%、新卒8.8%、既卒16.1%、看護職員給与は大きく上昇しているが・・・—日看協
2025.4.3.(木)
看護職員の離職率を見ると、新型コロナウイルス感染症の中で2021年度・22年度は「高い水準」となっていたが、2023年度には▼正規雇用で11.3%(前年度から0.5ポイント低下)▼新卒で8.8%(同1.4ポイント低下)▼既卒で16.1%(同0.5ポイント低下)―などと落ち着きを見せている—。
看護職員の給与(2024年)は、税込給与(平均)で「高卒+3年課程」の新卒:27万6127円(同9569円増)、「大卒」の新卒:28万4063円(同9311円増)、勤続10年(31-32歳)・非管理職で33万4325円(同7650円増)と上昇した—。
看護職員の働き方を見ると、多職種へのタスク・シフト、ICT利活用が相当程度進んでおり、その効果も出ている—。
日本看護協会が3月31日に公表した「2024年病院看護実態調査」結果から、このような状況が明らかになりました(日看協のサイトはこちら)。
なお、給与増は喜ばしいことですが、「他産業ではより大幅な給与増」を行っており、他産業への看護職員流出を食い止めるために、2026年度の次期診療報酬改定などでどのような対策が図られるのか注目する必要があります。
目次
看護職員の離職率は2年度ぶりに低下、正規雇用全体で11.3%、新卒採用で8.8%
日看協は毎年、病院に勤務する看護職員の需給動向や労働状況、看護業務の実態などを調査(病院看護実態調査)しています(2023年の調査結果に関する記事はこちら)。
2024年調査では、例年と同じく(1)看護職員の離職率(2)給与状況―などを調べるとともに、「看護職員の労働環境」(夜勤の状況や多様な働き方、タスク・シフト/シェアなど)、「専門性の高い看護師の活動」、「ICT活用状況」について実態を調査しています。ポイントを絞って調査結果を眺めてみましょう。
まず(1)の離職率について見てみます。
2022年度からいわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、今年度(2025年度)にはすべて後期高齢者となります。このため、地域の医療・介護ニーズが今後、急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者の増加スピードは鈍化するものの、高齢者を支える現役世代の数が急速に減少します。こうした状況の中では「医療・介護提供体制の確保」(端的に人材の確保)が極めて難しくなるため、「看護職員の離職防止」が重要テーマの1つとなってきます。
2023年度における看護職の離職率を見ると、▼正規雇用で11.3%(前年度から0.5ポイント低下)▼新卒で8.8%(同1.4ポイント低下)▼既卒で16.1%(同0.5ポイント低下)―などとなりました。2021年度・22年度と高い離職率が続いていましたが、コロナ感染症が落ち着く中で「離職率の上昇」にもいったん歯止めがかかっています。

看護職員離職率の推移(2024年病院看護実態調査1 250331)
病院の規模別に離職率を見ると次のような状況です。
▼99床以下:正規雇用12.6%(前年度から0.1ポイント低下)・新卒12.1%(同1.7ポイント低下)・既卒21.8%(同2.3ポイント上昇)
▼100-199床:正規雇用12.6%(同0.2ポイント低下)・新卒12.1%(同0.2ポイント低下)・既卒17.6%(同1.1ポイント低下)
▼200-299床:正規雇用12.2%(同0.4ポイント上昇)・新卒9.4%(同0.9ポイント低下)・既卒15.6%(同0.6ポイント低下)
▼300-399床:正規雇用11.5%(同0.2ポイント上昇)・新卒8.8%(同2.0ポイント低下)・既卒14.5%(同1.4ポイント低下)
▼400-499床:正規雇用10.4%(同0.7ポイント低下)・新卒8.2%(同2.2ポイント低下)・既卒11.5%(同1.5ポイント低下)
▼500床以上:正規雇用10.4%(同1.1ポイント低下)・新卒8.0%(同1.2ポイント低下)・既卒11.8%(同0.2ポイント上昇)
今後、離職率がどう推移するのか、今後の状況を詳しく見ていく必要があります。

病床規模別の看護職員離職率(2024年病院看護実態調査2 250331)
また設置主体別に「離職率の高い病院」を見ると、正規雇用では▼医療法人:14.4%(前年度に比べて0.1ポイント上昇)▼公益社団・財団法人:13.4%(同0.3ポイント上昇)▼私立学校法人:12.5%(同1.0ポイント低下)―などです。
また新卒では、▼社保関係団体(健康保険組合、共済組合など):21.9%(前年度に比べて13.4ポイント上昇)▼個人:11.8%(同3.8ポイント低下)▼その他の法人(一般社団法人、一般財団法人等):10.9%(同0.2ポイント低下)—などで離職率が高くなりました。社保関係団体立病院で新卒採用看護師の利所得率が飛びぬけて高くなっていますが、母数が38病院にとどまっており「特殊事情」による可能性があります。今後の状況を見守る必要があるでしょう。
逆に離職率が低いのは、正規雇用では▼その他公的医療機関:7.5%(前年度に比べて6.6ポイント低下)▼公立(自治体立、地方独立行政法人など):7.7%(同1.1ポイント低下)▼会社:9.0%(同1.2ポイント低下)▼日赤:9.4%(同0.4ポイント低下)―など、新卒では▼その他公的医療機関:3.0%(同0.1ポイント上昇)▼会社:3.9%(同5.8ポイント低下)▼日赤:5.7%(同3.3ポイント低下)▼国立:7.0%(同2.2ポイント低下)—などとなりました。どういった取り組みにより離職防止につなげているのかに注目が集まります。

解説主体別の看護職員離職率(2024年病院看護実態調査3 250331)
さらに都道府県別に見ると、離職率が高いのは、正規雇用では▼東京都:14.2%(前年度に比べて1.3ポイント低下)▼大阪府:13.7%(同0.6ポイント低下)▼神奈川県:13.6%(同0.1ポイント低下)—など、新卒では▼香川県:15.2%(同1.7ポイント低下)▼東京都:11.7%(同1.0ポイント低下)▼大阪府:11.3%(同1.8ポイント低下)—などです。
一方、離職率が低いのは、正規雇用では▼岩手県:6.8%(前年度に比べて0.3ポイント上昇)▼山形県:6.8%(同1.4ポイント低下)▼秋田県:7.4%(同0.1ポイント低下)—など、新卒では▼富山県:2.8%(同4.1ポイント低下)▼福井県:4.7%(同1.2ポイント上昇)▼沖縄県:4.7%(同3.4ポイント低下)—などとなっています。
東京や大阪などの大都市とその周辺では「転職しやすさ」(他病院への転職、他業界への転職など)が離職率に大きく関係していると考えられます。より詳しい分析に期待が集まります。

都道府県別の看護職員離職率1(2024年病院看護実態調査4 250331)

都道府県別の看護職員離職率2(2024年病院看護実態調査5 250331)
こうした中で、看護管理者は「新卒採用看護師の離職理由」として、(1)健康上の理由(精神的疾患)(2)自分の看護職員としての適性への不安(3)自分の看護実践能力への不安(4)上司・同僚との人間関係(5)他施設への関心・転職(6)健康上の理由(身体的疾患)(7)他分野(看護以外)への関心・転職—などがあると考えています。
離職防止に向けた対策を、他院の事例なども参考にしながら総合的にとることが極めて重要です。

看護管理者の考える離職理由(2024年病院看護実態調査6 250331)
看護職員の給与は相当程度上昇、勤続10年で税込給与平均が33万4325円に
次に「看護職員の給与」を見てみると、次のような状況です。
●2024年度採用の新卒看護師の初任給
▽高卒+3年課程:基本給(平均):20万9697(前年調査から4747円増)、税込給与(平均):27万6127円(同9569円増)
▽大卒:基本給(平均):21万5614円(同4651円増)、税込給与(平均):28万4063円(同9311円増)
●勤続10年(31-32歳)・非管理職の給与
▽基本給(平均):25万380円(同2751円増)、税込給与(平均):33万4325円(同7650円増)

看護職員の給与(2024年)(2024年病院看護実態調査7 250331)

新卒看護職員の給与の推移(2024年病院看護実態調査8 250331)

金属10年看護職員の給与の推移(2024年病院看護実態調査9 250331)
2024年度診療報酬改定では「看護師をはじめとする多くの職員の給与増に充てるためのベースアップ評価料創設」などが行われており、その効果が伺えます。もっとも、他産業では「より大幅な給与増」となっており、「他産業への看護職員の流出」も懸念されます。2026年度の次期診療報酬改定などでどういった対応が図られるのか、注目が集まります。
看護師から多職種へのタスク・シフト、看護業務へのICT活用などが相当程度進んでいる
今般の調査では、▼看護職員の労働環境(夜勤の状況や多様な働き方、タスク・シフト/シェアなど)▼専門性の高い看護師の活動▼ICT活用状況—についても実態を調査しており、例えば次のような状況が明らかになっています。
【看護職員の労働環境】
▽2024年9月(1か月間)における一般病棟勤務看護職員の夜勤状況を見ると、「ゼロ時間が6.4%」、「1-16時間未満が8.8%」「72時間超が34.4%」などであった。夜勤ゼロの理由としては「子どもの世話」「身体的疾患による健康上の理由」が多かった
▽一般病棟における「看護職員の夜勤者の確保策」としては、「夜勤専従の導入」45.1%、「多様な夜勤の導入(回数・時間・曜日)」37.2%などが目立つが、確保状況改善度合いは十分とは言えない

夜勤の状況(2024年病院看護実態調査10 250331)

夜勤者確保策(2024年病院看護実態調査11 250331)

夜勤者確保の効果(2024年病院看護実態調査12 250331)
▽看護師から医師以外の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアは相当程度進んでおり、薬剤師・理学療法士・臨床検査技師への業務移管が多い。タスク・シフトによって「業務改善」につながる効果も相当程度出ている

タスク・シフトの状況(2024年病院看護実態調査13 250331)

タスク・シフトの効果(2024年病院看護実態調査14 250331)
【専門性の高い看護師の活動】
▽専門性の高い看護師による「地域の介護施設や事業所での活動状況」を見ると、訪問や電話相談等で、「感染症の予防や発生時の対応」73.5%、「皮膚・排泄障害への対応」46.3%、「認知症のBPSD(行動・心理症状)やせん妄への対応」23.7%などが多い

専門性の高い看護職員の活動状況(2024年病院看護実態調査15 250331)
【ICT活用状況】
▽看護に関して活用されているICTとしては、「電子カルテシステム(看護記録)」76.8%、「院内コミュニケーションツール」59.4%、「医療スタッフの教育プラットフォーム」56.3などが多い。「患者モニタリングシステム」は27.1%にとどまり、「個々の患者のケアに関わる ICT」の活用は進んでいない

ICT利活用状況1(2024年病院看護実態調査16 250331)
▽「疾患や障害などの身体的要因で通院が困難な患者」へのICT支援25.2%、「通院するための交通手段の確保が困難な患者」へのICT支援19.5%など、「通院が困難な患者を対象としたICT活用による療養支援」が一定程度進んでいる

ICT利活用状況2(2024年病院看護実態調査17 250331)
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