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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

2016年、抗がん剤の生産・輸入が大幅に増加—薬事工業生産動態統計

2018.9.21.(金)

 2016年の医薬品の国内生産額は6兆6239億円、輸入額は3兆9445億円となった。薬効別に見ると、「腫瘍用薬」の生産金額増加が著しく、前年に比べて43.5%の増加となった―。

 こういった状況が、厚生労働省が9月20日に発表した2016年の「薬事工業生産動態統計年報の概要」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年の記事はこちら)。

医薬品の国内生産は6兆6239億円、抗がん剤の生産金額拡大が目立つ

 薬事工業生産動態統計は、医薬品や医療機器の生産・輸入の実態を明らかにするために毎年行われている調査です。

 まず医薬品の生産・輸入状況を見てみましょう。

 2016年の国内生産金額は6兆6239億円で、前年に比べて1243億円・1.8%の減少となりました。また、外国からの輸入金額は3兆9445億円で、前年に比べて765億円・1.9%減少しています。生産額と輸入額の合計は10兆5693億円で、前年に比べて2009億円・1.9%の減少となっています(厚労省発表の2015年数値に誤りがあり、2016年発表と同時に訂正されています、正しい2015年の数値はこちら)。
2016薬事工業生産動態統計1 180920
 
 国内生産金額のうち、医療用医薬品は5兆8714億円(前年に比べて2.1%増)、一般用医薬品は8235億円(同14.2%増)となりました。医療医薬品が88.6%を占め、前年より0.3ポイント、シェアが低下しました。

 国内生産金額を薬効大分類別に見ると、最も多いのは「循環器官用薬」で1兆77億円(前年から生産金額が7.4%減少し、医薬品生産金額全体に占めるシェアは16.1%→15.2%で0.9ポイント低下)となりました。以下、次のような状況です。「消化管薬」の大幅減、「腫瘍用薬」の大幅増により、前年と生産金額の順位が入れ替わっています。
▼「中枢神経系用薬」8009億円(同2.1%増、同11.6%→12.1%で0.5ポイント上昇)
▼「その他の代謝性医薬品」6898億円(同0.1%減、同10.2%→10.4%で0.2ポイント上昇)
▼「血液・体液用薬」4256億円(同7.8%減、同6.8%→6.4%で0.4ポイント低下)
▼「消化器官用薬」4003億円(同13.7%減、同6.9%→6.0%で0.9ポイント低下)
▼「外皮用薬」3708億円(同2.0%減、同5.6%→5.6%で増減なし)
▼「腫瘍用薬」3265億円(同43.5%増、同3.4%→4.9%で1.5ポイント上昇)
▼「生物学的製剤」3261億円(同0.6%減、同4.9%→4.9%で増減なし)
▼「感覚器官用薬」3068億円(同10.1%増、同4.1%→4.6%で0.5ポイント上昇)
▼「体外診断用医薬品」2437億円(同3.3%増、同3.5%→3.7%で0.2ポイント上昇)
▼「アレルギー用薬」2122億円(同9.2%減、同3.5%→3.2%で0.3ポイント低下)
2016薬事工業生産動態統計2 180920
2016薬事工業生産動態統計3 180920
 
 構成割合の大きな医薬品を見ると、(1)循環器用薬15.2%(2)中枢神経系用薬12.1%(3)その他の代謝性医薬品10.4%(4)血液・体液用薬6.4%(5)消化器官用薬6.0%―となっており、上位5分類で50.1%を占めています。前年に比べて集中度が低下している(分散している)状況が伺えます。

 さらに各大分類項目の内訳を見ると、次のようになっています。

●循環器官用薬:「血圧降下剤」4820億円(前年に比べて生産金額が9.0%減)、「高脂血症用剤」1693億円(同5.6%減)、「血管拡張剤」1436億円(同11.5%減)ほか

●中枢神経系用薬:「精神神経用剤」2168億円(同10.3%増)、「解熱鎮痛消炎剤」1841億円(同5.6%増)、「その他の中枢神経系用薬」1659億円(同1.7%増)ほか

●その他の代謝性医薬品:「他に分類されない代謝性医薬品」4162億円(同1.0%増)、「糖尿病用剤」1701億円(同0.8%減)、「痛風治療剤」455億円(同28.2%増)ほか

●血液・体液用薬:「その他の血液・体液用薬」2132億円(同24.6%減)、「血液凝固阻止剤」1329億円(同31.8%増)、「血液代用剤」683億円(同0.4%増)ほか

●消化器官用薬:「消化性潰瘍用剤」1981億円(同22.4%減)、「その他の消化器官用薬」613億円(同12.1%減)、「下剤、浣腸剤」363億円(同1.6%増)ほか

●外皮用薬:「鎮痛,鎮痒,収斂,消炎剤」2547億円(同1.1%減)、「外皮用殺菌消毒剤」309億円(同1.7%減)、「その他の外皮用薬」205億円(同0.2%減)ほか

●腫瘍用薬:「その他の腫瘍用薬」2627億円(同59.5%増)、「代謝拮抗剤」354億円(同0.2%減)、「抗腫瘍性植物成分製剤」192億円(同4.9%増)ほか

●生物学的製剤:「血液製剤類」2031億円(同2.3%減)、「ワクチン類」660億円(同5.1%減)、「その他の生物学的製剤」291億円(同40.2%増)ほか

●感覚器官用薬:「眼科用剤」2572億円(同10.9%減)、「耳鼻科用剤」399億円(同13.5%増)、「鎮暈剤」97億円(同16.8%減)ほか

●対外診断用医薬品:「生化学的検査用剤」1135億円(同3.7%増)、「免疫血清学的検査用剤」936億円(同1.0%増)、「血液学的検査用試薬」199億円(同13.0%増)ほか

 
 また薬効中分類別では、多いほうから▼血圧降下剤:4820億円(同9.0%減)、構成割合7.3%(同0.6ポイント減)▼他に分類されない代謝性医薬品:4162億円(同1.0%減)、6.3%(同0.1ポイント増)▼その他の腫瘍用薬:2627億円(同59.5%増)、4.0%(同1.6ポイント増)▼眼科用剤:2572億円(同10.9%増)、3.9%(同0.5ポイント増)▼鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤:2547億円(同1.1%減)、3.8%(同増減なし)―といった状況です。腫瘍用薬、つまり抗がん剤の躍進が目を引きます。

輸入薬に関しても、抗がん剤がシェアトップ

 医薬品の輸入金額が多い医薬品を見てみると、「その他の腫瘍用薬」6564億円(同19.0%増)、「抗ウイルス剤」5815億円(同33.1%減)、「他に分類されない代謝性医薬品」2629億円(同8.9%増)、「糖尿病用剤」2246億円(同3.0%増)、「眼科用剤」1543億円(同3.7%増)などが多くなっています。生産だけでなく、輸入においても「腫瘍用薬」(抗がん剤)の増加が目立ちます。
 
 輸入元は米国6860億円(前年に比べて0.8%減、輸入金額の17.4%)、ドイツ6235億円(同0.2%増、同15.8%)、スイス6181億円(同0.8%増、同15.7%)アイルランド4693億円(同29.6%減、同11.9%)、が多く、この4か国で輸入金額の60.8%を占めています。

医療機器の国内生産は1兆9146億円、輸入は1兆5564億円

 医療機器の国内での生産金額は1兆9146億円(同1.6%減)、輸入金額は1兆5564億円(同9.2%増)で、合計3兆4709億円(同3.0%増)でした。全体に占める輸入金額の割合は、医薬品では4割弱(37.3%)、医療機器では4割強(44.8%)となっており、両者の差は前年よりも拡大しています。
2016薬事工業生産動態統計4 180920
 
 国内生産金額を大分類別に見ると、「処置用機器」が最も多く5232億円(前年比0.4%増)・構成割合27.3%(同0.5ポイント増)でした。次いで、▼生体機能補助・代行機器:2764億円(同1.8%増)・14.4%(同0.4ポイント増)▼画像診断システム:2667億円(同8.65%減)・13.9%(同1.1ポイント減)▼医用検体検査機器:2010億円(同11.2%増)・10.5%(同1.2ポイント増)▼生体現象計測・監視システム:1677億円(同18.3%減)・8.8%(同1.8ポイント減)―となっています。

 また輸入金額を大分類別に見ると、▼生体機能補助・代行機器:4051億円(同13.7%増)▼処置用機器:3979億円(同17.1%増)▼眼科用品および関連製品:1986億円(同0.3%減)▼治療用または手術用機器:1230億円(同25.4%増)▼画像診断システム:1027億円(同16.5%減)―などが多いことが分かります。2018年度の診療報酬改定では、ロボット支援手術の対象術式が増加しており、「治療用または手術用機器」の増加が見込まれます。

 輸入元は、米国7451億円(輸入金額の47.9%を占める)、アイルランド1549億円(同10.0%)、ドイツ1299億円(同8.3%)、中国1055億円(同6.8%)となっており、ドイツが中国を抜き返しています。

 
 
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