2019年4月から「医療機能情報提供制度」で、かかりつけ医機能保有状況など報告を―社保審・医療部会
2019.1.21.(月)
国民が医療機関を選択する際の重要情報の1つとなる「医療機能情報提供制度」について、より分かりやすくなるよう、「がんゲノム医療中核拠点病院」や「小児がん拠点病院」など、新たな医療提供体制の分類を加えるとともに、「かかりつけ医機能」に関する情報を加え、医療機関から都道府県への報告を求めることとする―。
1月17日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった点が了承されました。
患者・国民の医療機関等選択に当たり、より有益な情報を分かりやすく提供
「医療機能情報提供制度」は、国民が医療機関を適切に選択できることを目指し、医療機関等(▼病院▼診療所▼歯科診療所▼助産所―)に対し、自院の持つ機能を毎年度、都道府県に報告することを義務付けるものです。都道府県では報告された情報を整理して、ホームページ上で公開しています(厚労省のサイトはこちら(各都道府県のホームページに飛ぶことができる)。
2007年度のスタートから10年以上が経過し、医療を取り巻く環境や医療提供体制そのものが大きく変化していることを踏まえ、厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、以下のような見直し方向が固められました(関連記事はこちら)。
まず、医療機関が「かかりつけ医機能」を有しているかどうかを国民に提示することになります。
大病院に軽症患者が集中してしまえば、重度者への集中的な医療提供が阻害されるため、外来医療においても、「専門外来は大病院が担い、一般外来は診療所や中小病院が担う」という機能分化を進めることが求められています。いわゆる「緩やかなゲートキーパー制」の構築を目指すものです。
2014年度の診療報酬改定で、診療所や中小病院における「かかりつけ医」機能を評価する【地域包括診療料】などが創設されたことを皮切りに、さまざまな「かかりつけ医」機能を評価する診療報酬項目が準備されてきています。「かかりつけ医」の持つべき機能については、2013年8月に日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)が取りまとめを行い、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会でも、その妥当性が確認されています。
ただし、患者・国民サイドからは「どの医療機関が、かかりつけ医機能を持っているのか、なかなか分からない」のが実際でしょう。そこで、「かかりつけ医」機能を有しているか、また「かかりつけ医」機能を評価する診療報酬を届け出・算定しているかが分かるように、「医療機能情報提供制度」へ次のような項目追加が行われます。
▽診療所が、「かかりつけ医」の持つべき4機能((1)日常的な医学管理と重症化予防(2)地域の医療機関等との連携(3)在宅療養支援、介護等との連携(4)適切かつ分かりやすい情報の提供―)を実施しているか、またその実施内容をホームページ等で情報提供しているかどうか
▽診療所等が、「かかりつけ医」機能を評価する診療報酬である【地域包括診療加算】、【地域包括診療料】、【小児かかりつけ診療料】、【機能強化加算】を算定しているかどうか
また、病院にかかる際には、その病院が「どういった機能を有しているのか」「どういった設備を保有しているのか」なども患者・国民には重要な情報となります。
例えば、がん医療については、高度かつ専門的ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」、患者の遺伝子情報に基づいて効果的なゲノム医療を実施するための「がんゲノム医療中核拠点病院」、小児のがん患者に対し専門的な医療を提供し養育支援も行う「小児がん拠点病院」などが整備されてきています。
また、放射線治療技術が進む中で、患者の「医療被曝」の状況を的確に把握することが求められており、そうした点に積極的に取り組む病院はどこなのか、という患者・国民サイドの要望も強くなっています。
こうした機能について、より分かりやすく国民に情報提供するために、病院に対して次のような報告を改めに求めることになります。
▽病院が、「がん診療連携拠点病院等」「がんゲノム医療中核拠点病院等」「小児がん拠点病院」「都道府県アレルギー疾患医療拠点病院」として指定されているか
▽病院が、「移動型デジタル式循環器用X線透視診断装置」「移動型アナログ式循環器用X線透視診断装置」「据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置」「据置型アナログ式循環器用X線透視診断装置」「X線CT組合せ型循環器X線診断装置」「全身用X線CT診断装置」「X線CT組合せ型ポジトロンCT装置」「X線CT組合せ型SPECT装置」を何台保有しており、うち照射線量表示機能を持つものは何台か
▽病院が、「医療に関する相談窓口」を置き、そこに何人の相談員を配置しているか
▽病院、診療所ともに、医療法や関連ガイドラインに沿った「オンライン診療」を実施しているか
併せて、「臨床研究中核拠点病院の指定を受けた診療所」「特定機能病院の指定を受けた歯科診療所」など、ありえない項目の削除なども行われます。
医療部会では、こうした見直し内容を了承しましたが、「医療機能情報提供制度」のあり方についていくつか注文もついています。今後の検討課題となりそうです。
例えば山崎學委員(日本精神科病院協会会長)は、「診療内科などを標榜する医療機関が増えているが、医師が、ほんとうに患者の状態を適切に把握し、適切な治療を行えるような経験を積んでいるのか、現行制度では把握することはできない。そうした情報を国民目線で伝えられるよう工夫する必要がある」と指摘。
また中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「医療機能情報提供制度は、『医師が、患者を別の専門医療機関等に紹介する』際には有用であるが、国民には分かりにくいのではないか」と指摘。また現在、情報提供は「都道府県が独自の仕様」で行っていますが、将来的に「優れた点を厚労省で吸い上げ、仕様を一定程度標準化する」方向で検討が進められている点について、「各都道府県で独自に工夫していく方向が正しいのではないか」との見解も示しています。この点、情報の受け手である国民の目線に立った検討が必要でしょう。
なお、「国民には分かりにくい」という点に関連して、「医療機能情報提供制度の認知度が低い」(11%程度)点が大きな課題と言えます。もっとも、利用者のみに限れば満足度は9割程度と高く、どうPRするかを工夫していくことが重要と言えるでしょう。厚労省医政局総務課の北波孝課長は「利用者目線や各地域の工夫を取り入れるなど、真に必要な情報は何かを今後も議論してほしい。認知度向上に向けた工夫なども検討していく」考えを示しています。
医療部会での了承を受け、厚労省では改正内容について今月(2019年1月)中にもパブリックコメントを募集し、その結果も踏まえて、2月(2019年2月)には改正告示を行う考えです。各医療機関等は、来年度から(2019年4月以降)新項目に沿った報告を行うことになります。
ナショナルセンターの機能強化に向け、研究推進組織を新たに構築
また1月17日の医療部会では、「国立高度医療研究センターの今後の在り方に関する検討会」の報告書についても説明がなされました。
現在、▼国立がん研究センター▼国立循環器病研究センター▼国立精神・神経医療研究センター▼国立国際医療研究センター▼国立成育医療研究センター▼国立長寿医療研究センター―の6つの国立高度医療研究センター(ナショナルセンター)がありますが、検討会では、各センターが有機的・機能的に連携し、世界最高水準の研究開発・医療提供を行えるよう、「新たなニーズに対応した研究開発機能」「6つのナショナルセンターが連携し、効果的な研究開発が期待される領域の取り組み」「6つのナショナルセンター全体としての研究成果の実臨床への展開」を支援強化する「研究推進組織」を構築することなどが提言されています。
厚労省では、報告書を踏まえて具体的方針を議論しています。
なお、臨床研究中核病院(現在、▼国立がん研究センター中央病院▼東北大学病院▼大阪大学医学部附属病院▼国立がん研究センター東病院▼名古屋大学医学部附属病院▼九州大学病院▼東京大学医学部附属病院▼慶應義塾大学病院▼千葉大学医学部附属病院▼京都大学医学部附属病院▼岡山大学病院▼北海道大学病院―の12病院が指定)の臨床研究等の実績要件については、従来基準から変更せず、過去3年間において▼当該病院自ら「医師主導治験4件」または「臨床研究法の臨床研究80件」▼多施設共同研究で「医師主導治験2件」または「臨床研究法の臨床研究30件」―以上の実施、とすることも承認されました。
実績要件については、旧基準において「『医師主導治験4件』または『医薬品等の臨床研究30件』究法の臨床研究80件」以上の実施」といった要件が設けられ、2018年度からは、新基準として「『医師主導治験4件』または『臨床研究法の臨床研究一定数』以上」などが設定され、2018年度中に「実態を踏まえて変更の必要性があるか否かを検討する」こととされていました。調査の結果、研究実績数に大きな変動がなかったため、新基準においても従前と同数の基準を設定することが妥当と判断されたものです。来年度(2019年4月以降)から適用されます。
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