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「糖尿病治療薬を用いたダイエット」などで不適切医療広告が目に余る、不適切広告への対応を厳格化せよ—医療機能情報提供制度等分科会(2)

2024.1.31.(水)

「糖尿病治療薬を用いた痩身術」などに関する不適切な医療広告が後を絶たず、医療広告ガイドライン見直しなどの対応を図る—。

不適切な医療広告事例の中には「長期間、改善が見られない」ものもあり、厳正な対処を都道府県が行いやすい環境整備に向けて「全国統一ルール」などを2024年度前半を目標に国が提示する—。

1月29日に開催された「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」(以下、分科会)でこうした方針が了承されました。今後、パブリックコメントを募集し、その結果を踏まえた最終調整を経て、早ければ年度内にもガイドライン改正などが行われます(同日の専門医資格の広告に関する議論の記事はこちら)。

1月29日に開催された「第2回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」

不適切な医療広告が長期間放置されている実態もあり、厳正対処しやすい環境整備へ

かねてから糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬)を「ダイエット薬」として処方する不適切事例が問題視され、関係学会も「2型糖尿病を有さない日本人における有効性・安全性は確認されていない」と警鐘を鳴らしています

不適切な糖尿病治療薬処方に関係学会も警鐘を鳴らしている(社保審・医療部会(2)1 221223)



しかし、「GLP-1メディカルダイエットを手軽なオンライン診療で受けられる」「飲み薬によるGLP-1メディカルダイエット」「食事制限不要のダイエット」などを謳い文句にした医療広告がネット上にあふれています。



ところで医療に関しては「不適切な広告が巷に溢れれば、国民・患者の健康・生命に取り返しのつかない被害が出かねない」ことから、医療機関が広告可能な事項は「限定」列挙されています。具体的には、広告可能告示(「医療法第六条の五第一項及び第六条の七第一項の規定に基づく医業、歯科医業若しくは 助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項」)で「広告して良い」と明示された事項以外を広告することは許されません。

ただし、医療機関のホームページやSNSについては、「医療機関選択の際に能動的に(自分から)情報にアクセスする」という特性があること、「患者・国民の医療機関選択を補助する重要なツールである」ことなどから、一定の要件(医療機関連絡先を掲載する、治療内容・費用などを分かりやすく提示するなど)を満たした場合には「限定事項」以外の内容を広告することが認められています【限定解除】。

もっとも無制限に情報を掲載できるわけではなく、厚労省は併せて、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン)を示しています。

例えば、上述した「糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬」を「ダイエット薬」などとして用いるケース「未承認の医薬品を用いた治療」に該当し、ガイドラインのQ&Aで(1)未承認医薬品等であることの明示(2)入手経路等の明示(3)国内の承認医薬品等の有無の明示(4)諸外国における安全性等に係る情報の明示—を広告内で行うことを求めています。

しかし、このルールに違反する((1)から(4)を明示しない)ケースが少なくありません。そこで厚労省は1月29日の分科会に次のような対応を行うことを提案しました。

▽医療広告ガイドラインに、以下の5項目を医療機関ウェブサイト等で適切に情報提供するとともに、必ず施術前に患者に対して丁寧に説明しなければならない旨を盛り込む(「Q&Aで示している要件」+αを、Q&Aからガイドラインに規定を格上げする)
(1)未承認医薬品等であることの明示
(2)入手経路等の明示
(3)国内の承認医薬品等の有無の明示
(4)諸外国における安全性等に係る情報の明示
(5)未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度等の救済対象にはならないこと

医療広告ガイドライン見直し案1(医療機能情報提供制度等分科会(2)1 240129)

医療広告ガイドライン見直し案2(医療機能情報提供制度等分科会(2)2 240129)



▽同様の事項を、「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取扱い等について」に明記する

美容医療サービスの自由診療におけるIC取り扱い等見直し案1(医療機能情報提供制度等分科会(2)3 240129)

美容医療サービスの自由診療におけるIC取り扱い等見直し案2(医療機能情報提供制度等分科会(2)4 240129)



この厳格化方針に異論・反論は出ておらず、近く、厚労省は両見直し案についてパブリックコメントを募集。その結果も踏まえた最終調整の後、早ければ年度内(2043年3月中)にもガイドライン見直し・インフォームド・コンセント取り扱い等見直しが行われます。



もっとも分科会構成員からは「今般の見直しでは、十分な効果は期待できないのではないか。より厳格な対応をとるべきではないのか」との意見も多数出されています。例えば幸野庄司構成員(健康保険組合連合会参与)は「未承認薬を用いた治療とは、例えば『未承認の海外で開発された抗がん剤を用いた診療』などを想定しているのではないか。本邦では『GLP-1受容体作動薬』の在庫が逼迫し、本来の糖尿病患者の治療に難渋する事態も生じている。にもかかわらず、(1)から(5)の記載をすれば『自由診療で、本来目的とは異なるダイエット治療薬などへの投与が認められる』ことは矛盾していないか。『不適切医療』としてより踏み込んだ対応を検討すべきではないか」と強調。磯部哲構成員(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)も「自由診療下で『GLP-1受容体作動薬』が本来の糖尿病治療でなく、痩身目的などに広く使用されていることに強い懸念を持っているが、医療法制による規制では効果が弱いのではないか」と同趣旨の考えを述べています。

また福長恵子構成員(消費者機構日本理事)は「医療機関のウェブサイト規制だけでなく、そこにつないでしまうSNSや広告などにも厳正に対処すべきでないか。また『アンケートに回答すればオンライン初診料無料』などの誘因事例もある。ダイエット薬としてGLP-1受容体作動薬を服用した患者からの健康被害相談が増加している」と指摘。

さらに山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「この問題は従前よりあったが、コロナ禍で『初診からのオンライン診療』が解禁されてから急激に増加した(関連記事はこちら(コロナ禍でのオンライン初診特例)こちら(オンライン初診の一般的な解禁))。次なる対応を考えておくべき」と訴えています。

こうした意見も踏まえて「さらなる対応」を厚労省で検討していくことになりますが、例えば「無料動画投稿サイトなどから医療機関サイトへ誘導されるケースも少なくないようである。動画投稿サイトなどに『不適切な内容の動画を掲載しない』よう依頼する」などの対応も考えられそうです。同時に「一般国民へ正しい情報を提供し、理解を促す」ことなどもさらに強化していく必要があるでしょう。



なお、不適切な広告に対しては「ネットパトロール事業で発見→都道府県による是正指導」などの対応も行われており、1月29日の分科会には2022年度のネットパトロール事業の状況が報告されました。それによれば、「一般国民からの通報受け付け」「能動監視(パトロール)」により不適切サイトを発見し、是正が一定程度進んでいることが分かります。

しかし、一部に「長期間改善が認められない」事例もあります。その背景には「他県、他の医療機関との対応の差を引き合いに出されると強い指導が難しい」「法に基づく措置(罰則適用)に進む判断が難しい」という事情があるといいます。

2022年度ネットパトロール事業の概況1(医療機能情報提供制度等分科会(2)5 240129)

2022年度ネットパトロール事業の概況2(医療機能情報提供制度等分科会(2)6 240129)



このため分科会では、「全国統一の改善指導ルールなどを国が示す」「都道府県がより厳正な対処を行える環境を整備すべき」ことが必要との提案がなされています。厚労省はこの提案を踏まえ「2024年度前半を目指して全国統一ルールの検討を進める」考えを明らかにしています。

このほか、厚労省は、▼自治体の現状把握調査を引き続き実施し、「医療広告に関する都道府県等担当者会議」等において優良な取組事例(違反種類毎の法に基づく措置例など)を紹介する▼自治体による医療法第25条第1項に基づく「立入検査」(医療監視)にあたっても、改正後の医療広告ガイドライン遵守に向けて適切に指導等を行うことを求める—などの考えを示しています。



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