治療・検査・介護データを収集し、利活用する新基盤を構築―改訂「健康・医療戦略」
2017.1.5.(木)
健康・医療分野の研究推進を図るために、省庁が連携する9つのプロジェクトを▼横断型(5プロジェクト)▼疾患領域対応型(4プロジェクト)―に再整理するほか、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が今後さらに注力すべき役割を明確化する。さらに▼治療▼検査▼介護―などのデータを広く収集し、安全な管理・匿名化を確保した上で利活用する新たな基盤を構築する―。
健康・医療戦略について、こうした内容の改訂がこのほど行われました(関連記事はこちらとこちら)(首相官邸のサイトはこちら)。
戦略の中間年に当たり、最新の社会情勢などを踏まえてマイナーチェンジ
健康・医療戦略は、▼世界最高水準の技術を用いた医療の提供▼健康長寿産業の創出・海外展開などによる経済成長―の2本柱を基本理念に据えた、2014年度からの5か年を対象期間とする戦略です。具体的には、(1)世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発など(2)健康・医療に関する新産業創出および国際展開の促進など(3)健康・医療に関する先端的研究開発および新産業創出に関する教育の振興・人材の確保など(4)世界最先端の医療の実現のための医療・介護・健康に関するデジタル化・ICT化―のそれぞれに関する施策の詳細と、それを実現するための方策について規定しており、2014年7月22日に閣議決定されました。
2016年度が戦略の中間年度に当たることを踏まえ、政府の「健康・医療戦略参与会合」が、これまでの取り組み状況や社会醸成の変化などを踏まえたマイナーチェンジ(基本的な構成は維持)を行ったものです。
(1)の研究開発については、医療分野の研究開発の推進に多大な貢献があった事例の功績をたたえる「日本医療研究開発大賞」(仮称)を創設します。
また戦略の具体的計画に当たる「医療分野研究開発推進計画」では、次の2点の見直しが行われました。
▼9つの「各省庁連携プロジェクト」を、5つの「横断型統合プロジェクト」(▽医薬品創出▽医療機器開発▽革新的な医療技術創出拠点▽再生医療▽オーダーメイド・ゲノム医療)と4つの「疾患領域対応型プロジェクト」(▽がん▽精神・神経疾患▽新興・再興感染症▽難病)に再整理し、一層整合的で効果的な取り組みにつなげる
▼AMED(日本医療研究開発機構)が今後さらに注力すべき役割として、▽専門家を活用した課題選定能力の強化▽研究開発マネジメントに資するデータベースの構築▽海外事務所も活用した国際共同研究等の推進▽産学連携による研究開発の促進―などを明確化する
前者については、4つの「疾患領域対応型統合プロジェクト」を縦糸、5つの「横断型統合プロジェクト」を横糸として、「健康長寿(健康寿命の延伸)」という織物を仕上げていくことになります。
(2)の新産業創出に関しては、これまでの「健康経営銘柄」に準じた顕彰制度として、特に優良な健康経営を実践している中小企業や医療法人等を対象とした「健康経営優良法人認定制度」が構築されます。
同じく(2)のうち国際展開については、日本の事業者などの海外進出を支援することで「アジア地域に介護産業などを興す」ほか、介護人材の国際循環を通じた「我が国(日本)における介護人材の充実を図る」方針を明確にしています。
また(4)のデジタル化・ICT化に関しては、大幅な見直しが行われていますが、次の2点を打ち出しているが特に注目されます。
▼医療等分などの情報を活用した創薬や治療の研究開発の促進に向け、▽治療▽検査▽介護―などのデータを広く収集し、安全に管理・匿名化を行い、利用につなげていくための新たな基盤として、所要の法制上の措置を含めた制度を構築する
▼収集されたビッグデータを基に人工知能(AI)を活用し、診療支援や新たな医薬品・医療技術の創出に資する研究開発を推進する
なお、従前(4)は「世界最先端の医療の実現のための医療・介護・健康に関するデジタル化・ICT 化に関する施策」とされていましたが、今般の見直しで「オールジャパンでの医療等データ利活用基盤構築・ICT利活用推進に関する施策」に改められています。
このほか、KPIの期限と対象期間を1年延長(2020年3月まで)することも明確にしています。
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