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社会福祉法人の指導監査、法人の自主性・自立性を前提とした内容に改善—厚労省

2017.5.9.(火)

 社会福祉法人について、法人の自主性・自律性を前提として、指導監査の効率化・重点化および明確化を図るため、定期的に行う「一般監査」の周期を従前の「2年に1回」から「3年に1回」に改め、適切な財務状況が確保されている場合にはさらに頻度を減らす—。

 厚生労働省は4月27日、社会福祉法人に対する指導監査に関するこのような新たな考え方を、通知「社会福祉法人指導監査実施要綱の制定について」の中で明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。会計監査人を設置するなど、自らガバナンスを強化する社会福祉法人では、より自由度の高い運営が可能になると言えそうです。

一般監査の頻度を減らし、適切な経営確保を条件にさらなる緩和

 「社会福祉法等の一部を改正する法律」「『社会福祉法人の認可について』の一部改正」などにより、社会福祉法人制度の大改革が行われています。少子高齢化が進展する中で、高齢者福祉や児童福祉などの事業を担う社会福祉法人の意義・重要性がますます高まる一方で、「地域社会への貢献が十分ない法人もある」「一部法人では同族経営が常態化し、経営が不透明」といった批判を受けたものです。

 具体的には、(1)経営組織のガバナンスの強化(2)事業運営の透明性の向上(3)財務規律の強化(適正かつ公正な支出管理・いわゆる内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業等への計画的な再投資)(4)地域における公益的な取組を実施する責務(5)行政の関与の在り方の見直し―を柱とした改革が順次施行されています(関連記事はこちらこちら)。

社会福祉法等の一部を改正する法律の概要、社会福祉法人のあり方について大改革を行っている

社会福祉法等の一部を改正する法律の概要、社会福祉法人のあり方について大改革を行っている

社会福祉法等の一部を改正する法律の概要(2)

社会福祉法等の一部を改正する法律の概要(2)

経営組織のあり方については、評議員会の設置を義務づけるなどのほか、「一定規模以上の法人への会計監査人(公認会計士・監査法人)による監査の義務付け」を断行している

経営組織のあり方については、評議員会の設置を義務づけるなどのほか、「一定規模以上の法人への会計監査人(公認会計士・監査法人)による監査の義務付け」を断行している

 

 このように「経営組織のガバナンス強化」や「事業・財務内容の透明性確保」が図られていることを受け、社会福祉法人に対する指導監査の在り方も、従前の「逐一公的機関が監督する」ものから「法人の自主性・自律性を前提として、指導監査の効率化・重点化および明確化を図る」ことが求められ、今般、厚労省が新たな指導監査実施要項を制定したものです。

 まず指導の目的について、従前は「指導監査事項について指導監査を行うことによって、適正な法人運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図る」としていましたが、新要綱では「法人の自主性・自律性を尊重し、法令・通知などに定められた法人として遵守すべき事項について運営実態の『確認』を行うことによって、適正な法人運営と社会福祉事業の健全な経営の確保を図る」と変化しています。

 また指導監査は、従前と同じく▼一般監査▼特別監査—の2類型で行われる点が変わりませんが、前者の「一般監査」については、これまで「2年に1回」(外部監査を活用しており、財務状況の透明性・適正性が確保されている場合には4年に1回)とされていましたが、新要綱では「3年に1回」と頻度を減らし、さらに次のように財務状況などの適正性が一定程度確保されている場合には、さらに頻度を下げています。

▼会計監査人を設置し、会計監査報告に 「無限定適正意見」または「除外事項を付した限定付適正意見」が記載された場合には、5年に1回

▼会計監査人を設置しなぎが、これに準ずる監査が実施され、その会計監査報告に「無限定適正意見」または「除外事項を付した限定付適正意見」が記載された場合には、5年に1回

▼公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人による財務会計に関する内部統制の向上支援などを受け、一定の書類が提出された場合には、4年に1回

▼苦情解決への取り組みが適切に行われ、「福祉サービス第三者評価事業の受審や、ISO9001の取得」「地域社会に開かれた事業運営」「先駆的な社会貢献活動」のいずれに該当し、良質かつ適切な福祉サービス提供に努めている判断された場合には、4年に1回

 

 さらに会計監査報告に「無限定適正意見」が記載されている場合や、公認会計士などによる内部統制の向上支援を受けている法人では、「会計管理」に関する監査事項は省略することができます。また「除外事項を付した限定付適正意見」が記載されている場合にも、「会計管理」に関する監査事項を省略することができますが、除外事項に関して「理事会などで協議し、改善のための必要な取り組みを行っているか」の確認が必要となります。

 

 もっとも、法人運営などに問題が発生した場合や、報告書類から当問題ありと認められる場合には、必要に応じて指導監査が実施されます。

特別監査の対象を明確化、指導内容や方法も適切なものに

 

 一方、特別監査については、従前は「運営などに重大な問題を有する法人を『主な』対象として随時実施する」こととされていましたが、新要綱では「運営などに重大な問題を有する法人を対象として、随時実施する」と、対象が明確にされました。

 また従前は「指導監査によって重大な問題が認められた法人、不祥事の発生した法人に対しては、改善が図られるまで重点的かつ継続的に指導監査を実施する」こととされていましたが、新要綱では次のように改められています。

▼法令・通知などの違反がある場合、違反事項については、原則として、改善措置をとるべき旨を文書により指導し、具体的な改善内容について期限付きの報告を求め、必要があれば実地調査を行う

▼違反の程度が軽微であう場合や、指導せずとも改善が見込まれる場合は、口頭指導ができる

▼法令・通知などの違反がなく、法人運営に資するものと考えられる事項についての助言を行うことができる

 さらに、指導に際しても「常に公正不偏かつ懇切丁寧であること」「単に改善を要する事項の指導にとどまることなく、具体的な根拠を示して行う」「対話・議論を通じて、指導の内容に関する真の理解を得るよう努め、自律的な運営を促す」よう求めています。

健全な経営を行う社会福祉法人、理事長の個人保証なき融資も可能に

 また厚労省は4月28日付で、(1)社会福祉法人に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例の承認特例について(2)社会福祉法人が民間金融機関から融資を受ける際の理事長等の個人保証について—という2本の事務連絡も行っています。

 このうち(2)では、日本商工会議所と全国銀行協会による「経営者保証に関するガイドライン」で、中小企業金融における経営者保証について、主たる債務者が▼法人と経営者の資産・経理が明確に区分されている▼法人のみの資産・収益力で借金返済が可能と判断し得る▼法人から適時適切に財務情報などが提供されている—といった経営状況であれば、「債権者である金融機関は、経営者保証を求めない」ことや、「既存の保証契約の解除などを検討する」ことが説明され、社会福祉法人でも、こうした条件を満たせば、金融機関に対して「理事長などの個人保証を提供することのない融資」や「既存の保証契約の見直し」を申し入れられることが考えられるとアドバイスしています。

 
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