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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

バルガンシクロビル塩酸塩、保険診療上の特例ルールに基づく取扱いを廃止―厚労省

2018.8.24.(金)

 小児に対する「臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」へバルガンシクロビル塩酸塩を用いる場合の用法・用量追加が薬事・食品衛生審議会で正式に認められたことを受け、これまでの「特例ルールに基づく保険収載の取扱い」を廃止する―。

 厚生労働省は8月21日に通知「公知申請に係る事前評価が終了し、医薬品医療機器等法に基づく承認事項の一部変更承認がなされた医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明確にしました(厚労省のサイトはこちら)。もっとも、特例ルールによる取扱いの廃止によって、保険診療上の取扱いが変わるものではありません。

保険収載の特例ルール、正式に効能・効果追加がなされれば不要に

 我が国において「欧米の先進諸国では使用できる医療用医薬品が、保険診療で使用することができない」という、いわゆるドラッグ・ラグがかねてより指摘されています。

厚労省はラグの解消に向けて積極的に取り組んでおり、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが、医療上の必要性が高いと考えられる医薬品について製薬メーカーに開発要請を行っています。

また保険制度面では、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革では【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設(当初は試行導入であったが、2018年度の薬価制度改革で制度化)。さらに、医療保険サイドからラグ解消に向けてより強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「適応外使用とされている医薬品であっても、薬事・食品衛生審議会(薬食審)の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、翌日から自動的に保険収載する」という特例ルールが創設されました。

 保険診療においては、医薬品は「効能・効果が認められた傷病の治療」に「定められた用法・用量」で使用することが求められます(仮に別の使用法を採用すれば、それは自由診療となり、当該治療全体が全額患者負担となることが原則)。「新たな傷病の治療に効果がある」「別の使用方法も好ましい」と考えられる場合には、治験などを実施してエビデンスを揃え、薬食審で効能・効果追加等の承認を得ることが原則です。安全性・有効性が確保されていない治療を、貴重な公的財源(保険料、税)で賄うことは好ましくないからです。

しかし、エビデンスの確保、審査などには相当の時間がかかるため、この原則を過度に厳格に遵守すれば「今現在、疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスを失わせることにもなりかねません(重篤な疾患であるほど、酷な状況となる)。そこで中医協で、「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮し、上記の特例ルールが創設されたのです。

過去の例に照らせば、海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合、後に効能・効果追加が認められている、という実態に鑑みたものです。

 今年(2018年)2月には、この特例ルールに則って、「▼後天性免疫不全症候群▼臓器移植(造血幹細胞移植も含む)▼悪性腫瘍—におけるサイトメガロウイルス感染症治療」および「臓器移植(造血幹細胞移植を除く)におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」に用いる「バルガンシクロビル塩酸塩」(販売名:バリキサ錠450mg)について、小児への用法・用量追加を行うことが認められました。具体的には次のとおりです。

▼小児にはバルガンシクロビルとして次式により算出した投与量を1日1回、食後に経口投与する。ただし、1日用量として900mgを超えないこと。推定糸球体濾過量が150より高値の場合は150を用いること。

投与量(mg)=7×体表面積(平米)×推定糸球体濾過量(mL/min/1.73平米)

 
 もっとも、「公知申請を行ってもよい」との判断の後に、薬食審で「新たな疾患への効能・効果等を正式に認める」ことになれば、この特例ルールは不要となります。今般、薬食審において「バルガンシクロビル塩酸塩の小児への用法・用量追加」が正式に認められたことを受け、厚労省は特例ルールに基づく取扱いを廃止したものです。もっとも、保険診療上の取扱いは従前と変わりありません。

 
 
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