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2019年度予算編成、社会保障費圧縮の数値目標はおかず―財政審建議

2018.11.21.(水)

 財務省の財政制度等審議会(以下、財政審)が11月20日、来年度(2019年度)予算編成等に関する建議をまとめ麻生太郎財務大臣に提出しました(財務省のサイトはこちら)。

 注目された「社会保障費圧縮の数値目標」については明記を避け、また医療・介護制度に関する改革内容については、新味のない内容にとどまりました。

社会保障費の増大が財政悪化の最大要因

 財政審建議は、次年度予算編成に向けた重要な提言です。高齢化の進行や医療技術の高度などで医療・介護を初めとする社会保障費が財政を圧迫すると指摘される中、従前は財政健全化に向けて、社会保障費の伸びについて「前年度から●●億円増にとどめるべき」といった数値目標が定められていました。

 しかし、今般の建議では、社会保障費について「受益と負担の対応関係が断ち切られ、『負担水準の変化をシグナルと捉え、受益の水準をチェックする』牽制作用を期待できないまま、給付増が続き、我が国財政の悪化の『最大の要因』となっている」と指摘したものの、来年度(2019年度)予算に向けては「「経済・物価動向等を踏まえ、実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収める」と述べるにとどめ、数値目標については明言を避けています。

もっとも、青天井に社会保障費増が認められるものではなく、今後の予算編成過程で「厳しい折衝」が行われる状況には変わりない、という点には留意が必要です。

 
また、来年(2019年)10月には消費税率の引き上げ(8%→10%)が予定されていますが、過去に2度「引き上げの見送り」が行われた点を牽制した上で、「不可欠な取組であり、確実な実施を求める」と訴えています。

 ところで消費増税に伴い、医療機関や介護施設等の「控除対象外消費税」負担が増えますが、それへの対応については、▼医療保険制度内で対応する▼総額において医療機関等が負担する仕入税額相当額の範囲内で対応する▼診療科間、診療所・病院間、病院の種類間などで、「各々の仕入税額相当額の総額」に基づき財源配分を行った上で、看護配置別のデータも用いるなど、できる限り精緻に対応する―よう求めています。過不足なく、かつ公平な消費税対応改定を目指せとの要請と言えます。

 
さらに財政審建議では、これまでにも社会保障改革について具体的な提言が行われています。今般も次のような提言がなされましたが、過去の提言から大きな変わりはなく、しかも、関係審議会等での専門家による長時間の討議で実施が否定されたものも含まれるなど、新味のない内容にとどまっています。

もっとも、社会保障費が増加を続ければ、いずれ我々国民が賄いきれない水準に達すれば、国民皆保険制度等が崩壊し、健康水準や大きく低下してしまうことを忘れてはいけません。審議会等では、制度の合理性・適切性よりも、「負担増(つまり国民の痛み)」を嫌い、改革を否定された項目も少なからずあり、それらは今後「軌道修正」を求められていくことになるでしょう。

【医療】
▼新規医療技術の保険収載における「費用対効果評価」の勘案▼薬剤自己負担の引き上げ(薬剤の種類に応じた給付率設定など)▼軽微受診における追加的な「定額負担」の導入▼地域医療構想の推進(都道府県知事による「民間医療機関に対する機能転換」命令権付与など)▼急性期入院医療における施設基準厳格化▼地域別診療報酬の実現▼高額医療機器の適正配置▼薬価制度の更なる改革▼後期高齢者の自己負担2割への引き上げ▼受益と負担の見える化(医療版マクロ経済スライドの検討)—など

【介護】
▼軽度者におけるサービスの地域支援事業への移行▼1人当たり介護費の地域差縮減▼保険者機能の強化(インセンティブ交付金の拡充、在宅サービスにおける「総量規制」の導入など)▼介護療養等から「介護医療院」への転換推進▼介護事業所・施設の大規模化による経営の効率化▼介護従事者の生産性向上▼ケアマネジメントにおける自己負担の導入▼介護サービスの自己負担2割への引き上げ▼補足給付の見直し―など

 
 
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