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処遇改善に向けた【新たな加算】、事業所等の状況に応じた「異なる加算率」を設けるべきか―介護給付費分科会

2018.11.22.(木)

 介護職員等の処遇改善に向けた【新たな加算】について、同じサービス種類の中では「一律の加算率」とすべきか、あるいは、例えば「経験・技能のある介護職員」の配置状況などに応じた「異なる加算率」を設定すべきか―。

 11月22日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました。議論はまだ「煮詰まった」とは言えず、年内の審議報告に向けてさらに議論が深められます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

11月22日に開催された、「第165回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月22日に開催された、「第165回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

 

介護サービスの種類ごとに「経験・技能ある介護職員」の状況を見て「加算率」を設定

 来年(2019年)10月の消費税率引き上げ(8% → 10%)に伴い、介護事業所・施設の控除対象外消費税負担を補填するため「特別の介護報酬プラス改定」(以下、消費税対応改定)が行われます。

あわせて安倍晋三内閣では、▼介護人材の確保▼介護人材の定着—の重要性に鑑み、「消費税対応改定において、介護職員の更なる処遇改善を行う」方針を決めています。「勤続10年以上の介護福祉士(およそ20万人)の賃金水準を全産業平均程度にまで引き上げる(月額8万円程度の引き上げ)」ことを算定根拠に、1000億円の公費を確保(20万人×月額8万円→2000億円、これを保険料と公費で2分の1ずつ負担するため、公費が1000億円確保されている)しており(新しい経済政策パッケージ)、介護給付費分科会で具体的な制度設計に向けた検討が進められています。

 大枠としては、この「2000億円」の財源を、次の3段階で配分していくことで「介護職員等の更なる処遇改善」を実現することになります。

▼2000億円(財源)を各サービス種類(訪問介護、介護老健施設など)に配分する[サービス種類ごとの配分]

▼各サービス種類の中で、財源を事業所・施設に配分する(A訪問介護事業所、B訪問介護事業所、C訪問介護事業所が、それぞれ【新たな加算】を取得するイメージ)[事業所等ごとの配分]

▼各事業所の中で、財源を従業者に配分する(介護福祉士aさん、介護職員bさん、介護職員cさんの、それぞれに給与引き上げ等を行うイメージ)[事業所内での配分]

 
 厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長はこれまでに、新しい経済政策パッケージの趣旨や、介護福祉士の養成状況、介護現場の意向などを総合的に勘案し、【新たな加算】について次のような骨格案を提示しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

(1)介護職員、とくに「技能・経験のある介護職員」に重点化した更なる処遇改善を主眼とし、この趣旨を損なわない範囲で「柔軟な運用(他職種への拡大)」を可能とする【新たな加算】を設ける

(2)各サービスに対し、「経験・技能のある介護職員」が多い介護サービスが高く評価される」ように財源を配分する(サービスごとに「経験・技能のある介護職員」の割合に応じた加算率を設定するイメージ)
→上記[サービス種類ごとの配分]に関する仕組み

(3)【新たな加算】の要件として、▼キャリアパスや研修体制の構築▼具体的な取り組みの見える化―などを検討する
→上記[事業所等ごとの配分]の仕組み

(4)事業所・施設において【新たな加算】を原資にした処遇改善(給与引き上げ等)を行うことが要件となるが、その際には(i)技能・経験のある介護職員(ii)他の介護職員(iii)その他職種―という傾斜を付ける
→上記[事業所内での配分]の仕組み
介護給付費分科会1 181031

 
 このうち(1)と(2)については、すでに介護給付費分科会で大きな方向について合意が得られていますが、「介護職員がいない訪問看護、居宅介護支援(ケアマネジメント)、福祉用具貸与を【新たな加算】の算定対象に含めるべきか」という論点が残されています。
介護給付費分科会2 181031
 
 眞鍋老人保健課長は、後述するように【新たな加算】の取得要件として「介護職員処遇改善加算(I)-(III)の取得」を提案し、さらに「訪問看護などは【新たな加算】の取得対象には含めないこととしてはどうか」との考えも示しています。

しかし、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は「日本介護クラフトユニオン(NCCU)の緊急調査では、訪問看護、居宅介護支援、福祉用具貸与を【新たな加算】の対象から除外することに反対との声が、全事業所で6割を超えていると分かった」ことなどを紹介した上で、「介護職員以外の人材確保、定着も重要な課題である」とし再考を求めています。

【新たな加算】、「処遇改善加算(I)-(III)取得」を最低限の要件とする考え

また(3)は「事業所等ごとへの配分」に関する仕組みであり、【新たな加算】の取得要件をどう考えるかが重要論点として残っています。眞鍋老人保健課長は、職場環境の改善・事務負担等を総合的に考慮し、一定のキャリアパスや研修体制の構築、職場環境等の改善が行われていることを担保する必要があるとし、「介護職員処遇改善加算(I)-(III)の取得を最低限の要件としてはどうか」と提案しました。処遇改善加算(IV)(V)については「廃止する」ことが決まっているため、これらの取得のみでは【新たな加算】の取得は叶わないことになるでしょう。

メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、その1に比べて柔軟な運用が可能と思われる

メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、その1に比べて柔軟な運用が可能と思われる

 
この提案を支持する声が多数出ていますが、井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)や河本滋史委員(健康保険組合連合会常務理事)は、加算のバラまきになってはいけないとして「介護職員処遇改善加算(I)の取得を最低限の要件にすべき」と、より厳格な要件案を提示しました。

介護職員処遇改善加算の取得状況をみると、対象事業所等(訪問看護ステーションやケアマネ事業所などは「介護職員」が在籍していないため、算定対象から除外されている)のうち(I)が65%程度、(II)が13%程度、(III)が9%程度となっており、厚労省提案では最大で9割近い介護事業所・施設が【新たな加算】を取得できることになります。井上委員らの「バラまき」という指摘にも一部頷けるものがあるかもしれません。
介護給付費分科会3 181122
 
しかし、介護職員処遇改善加算(I)の取得状況をサービス種類ごとにみると、定期巡回・随時対応型訪問介護看護では85.3%、夜間対応型訪問介護では84.7%などと高いサービスがある一方で、介護療養型医療施設ではわずか35.9%にとどまっています。井上委員らの提案によれば、介護療養では「6割超の事業所等が対象にすらならない」事態となり、これが「介護人材の確保・定着」という【新たな加算】創設の趣旨に合致するのか、という問題も出てきそうです。
介護給付費分科会4 181122
 
両案を軸に、さらに【新たな加算】の取得要件を検討していくことになりますが、【新たな加算】の趣旨に遡り、「職場環境改善」の推進を追加的な要件とすべきとの指摘や、これまでの介護職員処遇改善加算によって「人材の定着」等の成果が出ていることを要件とすべきとの指摘なども出ています。具体的な「取得要件」に注目が集まります。

同じサービス種類の中でも、「事業所等によって加算率が異なる」仕組みとすべきか

 また「事業所等ごとへの配分」に関しては、「経験・技能のある介護職員」の配置状況などを勘案すべき、との指摘が多数出ています。同じ訪問介護であっても、「経験・技能のある介護職員」が多くいるA事業所では加算率を高くし、少ないB事業所では加算率を低くすべきという提案です。

同じサービス種類でも、事業所や施設によって「経験・技能のある介護職員」の配置割合は異なり、【新たな加算】の創設趣旨に遡って考えれば、「経験・技能のある介護職員」をより多く配置している事業所には、そうでない事業所に比べて加算率を高く設定すべきと考えられます。それだけ処遇改善に向けた原資が多く必要となるためです。

しかし、現在、事業所・施設ごとの「経験・技能のある介護職員」の配置割合は正確に把握されていません。また仮に把握するとなれば、「新たな調査の実施」や「事業所等による申告」などが必要となり、その負担も無視できないでしょう。

この点、眞鍋老人保健課長は、次の3つの考え方があると説明しています。

(i)サービスの中では加算率に差を設けない(下図の向かって左)
【メリット】事業所等に新たな負担は発生しない
【デメリット】「経験・技能ある介護職員」を多く配置する事業所等ほど、相対的に不利な扱いを受けることになる

(ii)事業所等ごとに加算率を設定する(下図の向かって右)
【メリット】事業所における「経験・技能ある介護職員」配置状況を加算に精密に反映できる
【デメリット】事業所等に新たな負担が発生し、行政による確認の負担も大きくなる

(iii)加算率に一定の差を設ける(例えば加算1・加算2・加算3などとし、加算率を加算1>加算2>加算3という具合に変えるイメージ)((i)と(iii)の中間に位置する、下図中央)
介護給付費分科会1 181122
 
 11月22日の介護給付費分科会では、(iii)の考え方(上図の中央)を支持する意見が多数出されました。各事業所における「経験・技能ある介護職員」配置状況を一定程度勘案すべきとの考えに基づくものです。

 しかし、この仕組みには▼実務的に「経験・技能のある介護職員」の配置割合を把握できるのか((iii)の仕組みでも配置割合の把握は必須となる)▼サービスの種類によって「経験・技能のある介護職員」の配置状況は異なることから、「差」の設定を合理的に行えるのか(あるサービスでは加算率の高い加算1を取得できる事業所等がごくわずかだが、別のサービスではほとんどの事業所等が高い加算1となる、などの制度設計が可能か)▼設立から日の浅い事業所等では、必然的に職員の勤続期間は短く、高い加算率設定が難しくなるが、これは公平と言えるのか―などといった課題もあり、より詳細に検討していく必要があります。

ただし(iii)の仕組みについては、「経験・技能のある介護職員」の割合だけでなく、例えば、同じサービス種類内で▼「サービス提供体制強化加算」を取得する事業所等は、介護福祉士の配置割合が高いことに着目し、高い加算率とする▼「介護職員処遇改善加算(I)」を取得する事業所等は、職員の経験等に応じた給与体系を構築していることに着目し、高い加算率とする―など、さまざまなパターンが考えられます。後者の「介護職員処遇改善加算(I)の取得事業所等で高い加算率を設定する」仕組みを導入すると、上記の河本委員や井上委員の提案に一定程度応えることも可能でしょう。

同じサービス種類の中で「加算率に一定の差を設けるべきか」、さまざまな角度からメリット・デメリット等を勘案し、更なる検討が行われます。【新たな加算】の制度設計における「最大のポイント」と言えそうです。

事業所内での配分、一定のルール下で事業所ごとに「柔軟」な対応が可能に

また(4)の「事業所内での配分」については、傾斜を設ける方針は概ね固まり、「各事業所に、どこまでの自由度を認めるべきか」が残された大きな論点と言えます。

東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や石本淳也委員(日本介護福祉士会会長)らは、「経験・技能のある介護職員において、一定程度の処遇改善がなされなければ、実感がわかず、現場の混乱も招いてしまう」とし、一定のルール設定が必要と指摘しました。例えば、「全職員に一律●●円の給与アップを行う」ことなどは、「傾斜」とは言えず、認められないことになるでしょう。

なお、「経験・技能のある介護職員」の例として「勤続10年以上の介護福祉士」があげられていますが、この「10年以上」という期間について、▼同一事業所等での勤続期間に限定するのか▼同一法人等での勤続期間まで認めるのか▼介護業界での勤続期間まで広げるべきか▼医療保険適用病床(地域包括ケア病棟や医療療養など)での勤続期間も含めてよいか―という点が気になりますが、眞鍋老人保健課長は「各事業所等における一定の柔軟性を認める」考えを示しています。

区分支給限度基準額も、消費税対応改定に合わせて引き上げへ

 なお、11月22日の介護給付費分科会では、冒頭に述べた「消費税率引き上げ(8%→10%)に伴う、介護事業所等の控除対象外消費税負担の増大に対応するための特別の介護報酬プラス改定」(以下、消費税対応改定)についても議論を行いました。

 各介護サービスの基本単位数を中心に引き上げを行う方向が固まっていますが(関連記事はこちら)、その際、区分支給限度基準額(要介護度別に定められた保険給付されるサービス量の上限)を引き上げなければ「保険給付されるサービス量の減少」が生じる可能性があります。

最新のデータ(2018年4月審査分)に基づけば、区分支給限度基準額を超えたサービスを受給している人の割合は、全体で2.5%・8万4901人(▼要支援1:0.1%・950人▼要支援2:0.1%・547人▼要介護1:1.7%・1万6437人▼要介護2:3.6%・3万454人▼要介護3:2.9%・1万4205人▼要介護4:3.8%・1万2465人▼要介護5:4.9%・9843人—)となっていることが眞鍋老人保健課長から紹介されました。
介護給付費分科会2 181122
 
すでに「限度額をオーバーする介護サービス利用者」が一定程度おり、かつ重度者で多い傾向が伺えることから、区分支給限度基準額を維持すれば、さらに限度額をオーバーする利用者が増加し(特に重度者で)、自費負担も増加すると考えられます。小原秀和委員(日本介護支援専門員協会副会長)は、こうしたデータを踏まえ「適切な区分支給限度基準額の見直し(引き上げ)が必要」と訴えています。

なお、争点の1つとして残っている「食費等における基準費用額」について、瀬戸正嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)は改めて「引き上げ」を求めましたが、結論には至っていません。

 
 
このように、▼消費税対応改定▼新たな加算―について、議論すべき課題が残されています。介護給付費分科会では、12月中の方針決定に向け、限られた期間で濃密な議論を続けることになります。

 
 

 

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