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ケアマネ人材確保のため「ケアマネの処遇改善」が必須、ケアマネの「本来業務以外の業務」をどう他機関につなぐか—ケアマネ課題検討会

2024.9.26.(木)

ケアマネジャーの人材確保・定着を図る「処遇改善」が、何よりもまず求められる—。

ケアマネジャーの業務について「本来業務」と「それ以外業務」との切り分けが求められ、「それ以外の業務」は行政や他サービスなどに適切につないでいくことが重要となる。ただし、「他への適切なつなぎ」そのものに知識・技術が必要であり、また「つなぐ」ことそのものにも負担が生じること、「つないで終わり」ではない点などを十分に勘案していく必要がある—。

9月20日に開催された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。議論は徐々に煮詰まってきており、田中滋座長(埼玉県立大学理事長)は「次回会合に中間整理案を提示する」よう厚労省に指示しています。

ケアマネの「本来業務以外の業務」を他機関につなぐことにも知識・技術が必要

検討会では、社会保障審議会・介護保険部会の意見を踏まえて、(1)ケアマネジャーの業務の在り方(2)人材確保・定着に向けた方策(3)法定研修の在り方(4)ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み促進—の4テーマについて議論を深めてきています(関連記事はこちらこちら)。

9月20日の検討会では、厚労省から(1)—(4)の各テーマについてより具体的な論点が示され、それに沿った議論が行われました。

まず(1)の「ケアマネの業務の在り方」と、(4)の「ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み促進」に関しては、次のような論点が提示されています。

▽居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)と地域包括支援センターにおける(主任)ケアマネジャーの現在の業務や配置の状況、今後あるべき役割分担・連携の在り方をどう考えるか

▽ケアマネの「本来業務」(要介護者等の相談援助やケアプラン作成、関係者との連絡調整など)と、それ以外の業務とをどう考えるか

▽ケアマネの「本来業務」について、ICT化による業務効率化を更に進めるための方策や事業所内での事務職員との役割分担等をどう考えるか

▽ケアマネの「本来業務以外の業務」について、新たな地域資源の創出等方策や地域ケア会議等での積極的な議論を促す方策をどう考えるか



ケアマネの「本来業務」と「本来業務以外の業務」との切り分け等は、検討会での最重要論点の1つとなっており、厚労省は、地域の実情を踏まえた、現時点での切り分け案を提示しました(下表)。

ケアマネ業務の分類案(ケアマネ課題検討会1 240920)



この中で、とくに「ケアマネ負担が大きい」と問題視されているのが3つめの「他機関につないでいる業務」(▼部屋の片付け・ゴミ出し、買い物などの家事支援→自費サービスやボランティア団体等へつなぐ▼福祉サービスの利用や利用料支払いの手続き、財産管理など→市町村、地域包括支援センター、社会福祉協議会等へつなぐ▼入院中・入所中の着替えや必需品の調達 ・病院や施設等と打合せなどや→自費サービスやサポート事業者へつなぐ▼徘徊時の捜索など→行政、地域包括支援センター、民生委員等へつなぐ▼死後事務→高齢者等終身サポート事業者等へつなぐ―)です。

タイムスタディ調査によれば、「本来業務以外の業務」を行っている頻度そのものは、それほど多くありませんが、実施する場合には相当程度に負担になっていることが伺えます。

ケアマネの労働時間内訳(ケアマネ課題検討会2 240920)

ケアマネが「本来業務以外の業務」を行うケースは必ずしもそれほど多くはないが、実施した場合には多くの時間が必要となる(ケアマネ課題検討会3 240920)



この点について検討会では、▼「本来業務以外の業務」について、専門性が必要とされるものは「保険外サービスでの実施」を、そうでないものは他機関へつなぐという切り分けを考えるべきである(柴口里則構成員:日本介護支援専門員協会会長)▼「本来業務以外の業務」は他機関へつないで終わりとはならない点に留意すべきである。また「家族支援」も重要となるが、そこでもケアマネがどこまでを担うのかなどを学問的に研究する必要があろう。どの業務が「本来業務」で、どの業務が「本来業務以外の業務」であるのかは、個人で判断せず、チームで考える仕組みが必要となる。また「切り分けた結果」を行政が国民・利用者・家族にしっかりと説明・羞恥していくことも必要である(石山麗子構成員:国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻教授)▼「本来業務以外の業務」は他機関へつなぐことになるが、地域で他機関の状況が異なり、つなぎたくともつなげない地域も出てくる。都市と都会では状況が大きく異なる点を踏まえる必要がある(内藤佳津雄構成員:日本大学文理学部心理学科教授)▼「本来業務以外の業務」は他機関へつなぐことになるが、それ自体に知識・技術(「どこへつなげばよいのか」という知識、担当者との連携技術など)が必要となる。業務の切り分けにとどまらず、他機関へつなぐ知識・技術をどう身につけるのか(研修等)も検討しなければならない(常森裕介構成員:東京経済大学現代法学部准教授)—などの見解が示されました。

多くの構成員の指摘とも関連しますが、「『本来業務以外の業務』を他機関へつなぐ」ことそのものが、ケアマネにとって相当程度の負担になっていると考えられます。今後、介護報酬の在り方とも絡めた議論が進むことに期待が集まります。



このほか、構成員からは▼事務スタッフを配置し、ケアマネが本来業務に注力できる環境を整える必要があるが、そのためには「ケアマネ事業所の大規模化、集約化」が必要となる(江澤和彦構成員:日本医師会常任理事)▼ケアマネ事業所では「管理者を別に配置」し、ケアマネが本来業務に尽力できる環境を整えるべき(田中明美構成員:生駒市特命監)—などの提案もなされています。

ケアマネ人材確保のため、「ケアマネの処遇改善」が必須と多くの構成員が強調

また、(2)の「人材確保・定着に向けた方策」、(3)の「法定研修の在り方」に関しては、次のようなさらに具体的な論点が示されました。ケアマネ不足が指摘される中で、「質を維持・確保」しながら、「人員の拡大」を図ることが急務となっています。

▽ケアマネの多くが、近く定年年齢に達することが見込まれる中、若年層やミドル層の担い手の確保方策をどう考えるか

▽資格を有しているがケアマネジャーとして就業していない「潜在ケアマネ」の復職について、再研修の在り方も含めどのような方策が考えられるか

▽シニア層にあるケアマネの働きやすい環境の整備方策をどう考えるか

ケアマネの高齢化が進んでいる(ケアマネ課題検討会4 240920)



検討会では、多くの構成員から「ケアマネの処遇改善」が最重要であるとの声が相次ぎました。介護報酬改定では「介護職員の処遇改善加算」が導入・拡充されてきているものの、ケアマネ事業所は加算対象外であることから、「ケアマネの給与水準<介護職員の給与水準」という逆転現象が生じ、「介護職員からケアマネへの移行を希望しない」「ケアマネから介護職員への復帰を希望する」者が増えていると指摘されます。これが「潜在ケアマネ」がケアマネとしての復職を妨げることにもつながっていると考えられます。今後、社会保障審議会・介護給付費分科会においても、この点(ケアマネの処遇改善)の議論が行われると見込まれます。

もっとも、ケアマネの給与水準が上がり、「介護職員→ケアマネ」移行が進むと、介護職員不足に拍車がかかる可能性もあります。このため染川朗構成員(日本介護クラフトユニオン会長)は「介護職員確保策と、ケアマネ確保策とをセットで実施しなければならない」と強調しています。

また、給与が上がり、潜在ケアマネがケアマネとしての復職を機能したとしても、介護保険制度や介護サービス等に関する知識が「時代遅れ」のものとなっていたのでは、適切なケアマネジメントが行えません。このため復職にあたっての再研修が行われていますが、構成員からは▼再研修を受ける機会が少なすぎ、工夫が必要である(工藤英明構成員:青森県立保健大学健康科学部社会福祉学科教授)▼就業しながらの再研修実施なども検討すべき(柴口構成員)—など「再研修を受けやすい環境の整備→潜在ケアマネの復職促進」を狙う声が出ています。もっとも、なお、「潜在ケアマネの復職は重要であるが、現実的に非常にハードルが高い。今、職についているケアマネが辞めない方策に軸足を置くべき」(染川構成員)との声も出ている点に留意が必要です。



このほか、▼短時間労働などの柔軟な働き方をより広めていくべき(工藤構成員)▼ケアマネ資格取得要件の緩和を考えるべき(常森構成員)▼ケアマネが悩みを相談できるような組織をシニア層ケアマネ中心に設けてはどうか(相田構成員)▼法定研修の柔軟化、受講者の負担軽減が必須である(江澤構成員)—といった声も出ています。



議論は徐々に煮詰まってきており、田中座長は「次回会合に中間整理案を提示する」よう厚労省に指示しています。



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