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一部ケアマネ事業所で「主任ケアマネ要件」を2027年3月まで猶予、中山間地域では免除も可能―介護給付費分科会

2019.12.12.(木)

2021年3月末時点で「主任ケアマネジャーでない者が管理者となっているケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)」については、「管理者は主任ケアマネでなければならない」とする要件(主任ケアマネ要件)の適用を2027年3月31日まで猶予する―。

また中山間地等においては、ケアマネ事業所を確保するために主任ケアマネ要件を適用しない―。

さらに不測の事態で主任ケアマネ不在となった事業所については、主任ケアマネ要件の適用を1年間猶予するとともに、保険者の判断で猶予期間の延長を認める―。

12月12日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった点が了承されました。厚生労働省は年明けにも、こうした点について介護給付費分科会に諮問し、答申を得たうえで厚労省令(介護保険法施行規則)改正作業に入ります。

また介護報酬単価のベースとなる「地域区分」について、新たなルールを導入して公平性を担保することも正式に固められており、自治体との協議を経て、2021年度の次期介護報酬改定で対応されます。

12月12日に開催された、「第173回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

主任ケアマネ研修の受講促進に向け、基金の積極的な活用などが求められる

介護保険制度では、利用者の心身状況や希望を踏まえて「どういった介護サービスを提供するか」をケアマネジャーが選定します。このためケアマネジャーの資質向上が極めて重要であり、2018年度の介護報酬改定時に、「ケアマネ事業所の管理者は主任ケアマネであること」との要件が設けられました。主任ケアマネが管理者である事業所では、そうでない事業所に比べて、▼事業所内検討会の定期的な開催▼事業所ケアマネへの同行訪問による支援(OJT)▼ケアマネ業務に関する相談―などをより積極的に実施していることなどが明らかになったことを受けたものです(2015年度の「居宅介護支援事業所および介護支援専門員の業務等の実態に関する調査研究」から)。

主任ケアマネ資格取得でケアマネジメントの質が高まると期待される(介護給付費分科会1 191115)



2018年の省令改正時には「2021年3月末までは主任ケアマネ配置要件の適用を猶予する」との3年間の経過措置が設けられました。3年の間に、自事業所のケアマネに必要な研修を受けさせるなどし、主任ケアマネ配置に努めることが求められたのです。

さらに今般、2018年度介護報酬改定の影響調査を行ったところ、次のように「一定数のケアマネ事業所で主任ケアマネ配置に苦労している」状況が分かりました。

▽2021年3月までに10.1%・3197か所のケアマネ事業所で主任ケアマネ配置が行えず、2024年3月までに1.6%・505か所で主任ケアマネ配置が行えない

主任ケアマネ研修を修了できない人が一定数いる(介護給付費分科会2 191115)



▽主任ケアマネ資格を持たないケアマネ事業所管理者の13.4%が「経過措置期間(2021年3月まで)に主任ケアマネ研修を修了できない」と、7.7%が「修了できるかわからない」と答えている

主任ケアマネ研修を修了できないとの声が一定数ある(介護給付費分科会3 191115)



主任ケアマネ資格を取得するためには、所定の研修(70時間)を受講することが必要ですが、研修を受講するにあたり「専任のケアマネ従事期間が通算5年(60か⽉)以上」などの要件を満たす必要があります。つまり、今年(2019年)7月時点で「最低3年4か月以上のケアマネ従事経験」がない者は2021年3月までに主任ケアマネ研修を受講できず、結果として「ケアマネ事業所の指定要件」を満たせない(つまり介護保険のケアマネ業務を行えない)事業所が一定程度生じることになってしまいます。

こうした状況を踏まえて厚労省老健局振興課の尾崎守正課長は、11月15日の前回会合で「経過措置を一部延長するとともに、新たな特例を設ける」考えを提示。この方向そのものに異論は出ませんでしたが、委員から「新たな特例(主任ケアマネ不在となった場合に、1年間の猶予を設ける)が短すぎる」などの注文が付いたため、尾崎振興課長は今般、以下のような修正提案を行いました。

(1)2021年3月31日時点で主任ケアマネでない者が管理者の事業所は、当該者が管理者である限り、主任ケアマネ要件の適用を2027年3月31日まで猶予する(2021年4月1日以降に新たに管理者となる者は、いずれの事業所でも主任ケアマネでなければならない)

(2)特別地域居宅介護支援加算または中山間地域等における小規模事業所加算を取得している事業所では、「管理者を主任ケアマネとしない」取扱いも可能とする

(3)2021年4月1日以降、不測の事態(主任ケアマネのヘッドハンティング等による退職や、主任ケアマネの死亡など、今後Q&A等で明確化)により、主任ケアマネを管理者とできなくなってしまった事業所について、「その理由」と「改善計画書」を保険者に届け出た場合は主任ケアマネ要件の適用を1年間猶予するとともに、保険者の判断で猶予期間の延長も認める

主任ケアマネ要件見直し概要(介護給付費分科会1 191212)



介護給付費分科会は、この3案を了承。年明けに厚労省令(介護保険法施行規則)改正案として厚生労働大臣からの諮問が行われ、答申を経たのちに省令改正が行われます。

ただし、上記(2)や(3)の特例について、一部注文も付いています。(2)の中間産地等の特例に対しては、「ケアマネの資質向上に向けて研修受講を支援する体制を整え、中山間地域のケアマネでも主任ケアマネ資格を得られるようにすべき」との指摘が伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)や岡島さおり委員(日本看護協会常任理事)から出されました。この点、尾崎振興課長は「中山間地域等でケアマネジメントの質が低くても良いとは考えていない。ただし、こうした地域で主任ケアマネ要件を厳格に適用すれば、ケアマネ事業所の確保が難しくなってしまう恐れもあり、現実的な配慮を行うものである」と理解を求めました。

また研修受講支援については、「地域医療介護総合確保基金の活用」や「主任ケアマネ研修の受講要件の柔軟化」を都道府県にこれまで以上に周知していく考えを示しています。受講要件については、上述のように「5年以上のケアマネ経験」などが求められますが、「介護⽀援専⾨員の業務に関し⼗分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者」についても受講を認めて良いことが厚労省老健局長から通達されており、この規定に基づく「受講資格付与の柔軟化」などが考えられるでしょう。伊藤委員や岡島委員からは「研修受講中の代替職員派遣」や「旅費への支援」なども提案されており、今後、国や都道府県での検討に期待が集まります。

主任ケアマネ研修の概要(介護給付費分科会2 191212)



また(3)の不測の事態における特例については、「保険者の判断により、永続的な主任ケアマネ不在が容認されてはいけない」(伊藤委員)、「保険者によって判断基準が大幅に異なり、公平性が確保できないような事態が生じてはいけない」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)などの意見が出ています。尾崎振興課長は、こうした事態が生じないよう「通知などで考え方を示す」考えを明確にしています。

なお、江澤委員は「主任ケアマネ配置がケアマネジメントの質向上につながっているのか、継続して確認していく必要がある」ことを強調したうえで、「医療機関等と総合的に連携するケアマネ事業所を評価する【特定事業所加算】が2018年度介護報酬改定で創設された。この加算を取得する事業所は『質の高いケアマネジメントを実施している』と言えるが、利用者からは『どの事業所が【特定事業所加算】を取得しているのか』が見えない。加算取得状況の見える化なども進めるべき」と提案しています。

地域区分に新ルール創設し、自治体間の公平性確保

診療報酬と異なり、介護報酬については「地域における人件費水準を考慮した単価の設定」(地域区分)が行われます。

例えば東京23区などでは一般に人件費が高いため、それに見合った介護報酬を認めなければ、人材確保(他産業との競争に負けてしまう)や事業所経営(高い人件費を賄えなくなってしまう)が困難になります。このため厚労省は人件費水準に応じて全国の自治体を8つに区分し、介護報酬の単価(1単位=10円)に上乗せを行っています。

さらに、「訪問看護や訪問介護ではコストに占める人件費の割合が高いが、施設サービスでは低い」というサービスごとの人件費割合にも着目しており、介護報酬の単価は現在24種類に区分され、最大で14%の上乗せが行われています。

介護報酬の地域区分概要(介護給付費分科会4 191212)



ただし、地域によっては「隣接する自治体よりも高い(低い)単価」が設定され、事業所確保等が難しいという不合理も生じています。このために厚労省は地域区分を補正する特例ルールを設けており、2021年度の次期介護報酬改定においては、現行の「完全囲まれルール」を維持するとともに、新たなルールを設ける考えを示しました。

【完全囲まれルール】(2018年度改定時に創設)
→高い地域区分の地域に全て囲まれている場合、「隣接地域の区分のうち一番低い区分までの範囲」で区分選択を可能とする(下図表の左側)

【新ルール】(2021年度改定時に創設する見込み)
→公務員の地域手当の設定がない(ゼロ%)地域で、当該地域よりも高い地域区分の地域が複数隣接し、かつ、その中に4級地以上の級地差がある地域が含まれている場合、「隣接地域の区分のうち一番低い区分までの範囲」で区分選択を可能とする(下図表の右側)

地域区分の見直し概要(介護給付費分科会3 191212)



地域区分の正式設定は2021年度の介護報酬に合わせて行われますが、「どの地域区分に該当するか」は介護保険料に影響するため、自治体の第8期介護保険事業(支援)計画(2021-23年度)策定に間に合うよう、早めに方針を固める必要があり、今般の方針決定となったものです。今後、国と自治体とでこのルールに基づいて「どの区分とするか」を協議していきます。
 
 
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