8つの特定機能病院に立入検査、うち6病院で「医療安全管理」などに軽微な問題点発覚―厚労省
2021.7.12.(月)
8つの特定機能病院に対して、2020年度の立入検査を行ったところ、6病院で「医療安全管理」体制などに軽微な問題が発覚した―。
こうした状況が、厚生労働省が7月5日に公表した2020年度の「特定機能病院に対する立入検査結果」から明らかになりました。すでに指摘事項は病院サイドに伝えられ、次年度(2021年度)の調査で「改善状況」が確認されます(厚労省のサイトはこちら)。
コロナ禍であること踏まえ、検査は「8病院」に限定
特定機能病院は、我が国で最高水準の医療提供を行う病院として厚生労働大臣から指定されます。主に(改正医療法の概要は大学病院本院や、国立高度専門医療センター(国立がん研究センターなど)など87病院)が、▼高度の医療を提供する能力を有する▼高度の医療技術の開発・評価を行う能力を有する▼高度の医療に関する研修を行わせる能力を有する―などの要件を満たすと判断され、指定を受けています。
この点、特定機能病院においても重大な医療事故(患者取り違え等)が相次いだことなどを踏まえ、例えば、▼「第三者評価の受審」を承認要件に盛り込む▼ガバナンスを強化する(外部監査委員会の設置など)▼医療安全体制を強化する(副院長をトップとする医療安全管理部門の設置など)―などの体制強化が順次なされてきています。
そうした中で、医療法第25条第3項では厚生労働大臣に対して「特定機能病院の開設者・管理者に必要な報告を命じ、特定機能病院に立ち入り人員・清潔保持の状況・構造設備・診療録・助産録・帳簿書類その他の物件を検査する」権限を付与。さらに同条第4号では、やはり厚生労働大臣に「特定機能病院の業務が法令等に違反している疑いがあり、運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、開設者・管理者に対し診療録・助産録・帳簿書類その他の物件の提出を命じる」権限も与えています。
今般、前者(第3項)の規定に基づいた立入検査が行われ(病院全体に対する立入検査と合同実施)、その結果が公表されたものです。なお、現下の新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に鑑み、2020年度の立入検査は「8病院」にのみ行われ、その他の病院については「2021年度に行う立入検査によって、2020年度の立入検査を実施したものと見做す」と扱われます。
検査結果によれば、8病院のうち6病院に対して口頭指摘事項(後述)がありました(▼「不適切な事項」を通知した▼「検討を要する事項」を通知した―病院はゼロ件で、「指摘事項等がなかった病院」(何等の問題もなかった病院)が2件)。
口頭指摘事項の内容を見ると、▼医療の安全管理のための体制の確保:5件▼監査委員会の設置:3件▼情報提供受付窓口の設置:1件▼職員研修の実施:2件▼管理者の選任に係る基準等の整備:2件▼管理者が有する権限に係る措置:1件—の合計14件です。
上述のような「重大な医療事故」の反省を踏まえ、2017年の改正医療法では、特定機能病院において、▼「医療安全管理責任者」を配置する▼過半数を外部委員とする「監査委員会」を設置する▼管理者(例えば院長)の選考を行にあたって合議体(選考会議など)を設け、その審査結果を踏まえることを求める―などの見直しが行われました(改正医療法の概要はこちら(厚労省医政局長通知))。重大な医療事故の背景には、「不適切な医療行為を抑制するためのガバナンス体制が十分でない」部分があると判断されたためです。公正に選任された「管理者」(院長)の権限を強化し、直轄の「医療安全管理者」が目を光らせることで、「不適切な医療」実施を踏みとどまらせようと狙ったものと言えます。
この点について、一部の特定機能病院では「若干の問題点」があることが判明した格好です。(口頭指摘ゆえ「軽微」であることが伺える)。指摘のあった病院には、検査時に改善計画の提出を求め、翌年度の立入検査で「改善状況を確認する」ことになります。
【関連記事】
特定機能病院、「第三者評価の受審」「改善状況の公表」を承認要件に―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会
特定機能病院に「第三者評価受審と指摘事項の公表」求めてはどうか、特定機能病院側は「厳しい」と反論―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(2)
地域医療支援病院、「医師の少ない地域」支援をプラスアルファ要件として設定可能に―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)
特定機能病院、国と異なる「プロフェッショナルの第三者」視点での評価受審を義務化してはどうか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(2)
医師派遣機能、地域医療支援病院の「すべて」には求めるべきではない―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)
特定機能病院に第三者評価を義務付けるべきか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(2)
すべての地域医療支援病院が医師派遣等の医師少数区域支援機能を持つべき―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)
地域医療支援病院、「在宅医療支援」「医師派遣」等の機能をどう要件化すべきか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会
地域医療支援病院の承認要件見直しへ議論開始―厚労省・検討会
大学病院の院長、「選考会議」の議を経るなど選考過程を透明化―大学病院ガバナンス検討会
病院長の資質・能力の明確化を特定機能病院の承認要件に、選考プロセスの透明化も―大学病院ガバナンス検討会
特定機能病院の承認要件に「病院長の選任」に関する規定が盛り込まれる可能性も―大学病院ガバナンス検討会
特定機能病院や臨床研究中核病院、「医療安全管理部門の設置」などを承認要件に追加―厚労省
一般病院にも「高度な医療技術実施の際の安全管理体制」整備の努力義務を課す―社保審・医療部会
特定機能病院に医療安全管理体制強化や外部監査委設置などの要件追加―厚労省
特定機能病院に、「監査委員会」設置や「医療安全担当の副院長」配置を義務付け―厚労省
特定機能病院への集中立入検査を6月から実施、目的は「実態把握」―厚生労働省
女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院の承認取り消し決定、特定機能病院の承認要件見直しも検討―塩崎厚労相