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外来分析 看護必要度シミュレーションリリース

2024年度介護報酬改定では「介護人材確保」が最重要ポイント、介護経営安定と制度安定のバランスも鍵—社保審・介護給付費分科会(2)

2023.10.12.(木)

2024年度の介護報酬改定に向けて、これまで第1ラウンドの総論的議論を重ねてきている。その議論を振り返ると、2024年度改定では(1)地域包括ケアシステムの深化・推進(認知症対応の強化、医療・介護連携の強化など)(2)自立支援・重度化防止(データ利活用、リハビリ・口腔・栄養の一体的取り組みなど)(3)良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり(介護人材確保、業務負担軽減など)(4)制度の安定性・持続可能性の確保—の4つが「基本的な視点」となる—。

10月11日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われています。年末には2024年度介護報酬改定に向けて、介護給付費分科会の意見を総括した「審議報告」を取りまとめますが、「基本的な視点」はその中に盛り込まれます(同日の「介護報酬改定の施行時期」に関する議論の記事はこちら)。

個別具体的な第2ラウンド論議に向け、総論的な第1ラウンド論議を総括

2024年度の介護報酬改定に向けた議論が介護給付費分科会を中心に進み、これまで総論的な議論(第1ラウンド)が行われました。今後、個別具体的な第2ラウンド論議に入りますが、厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長は、それに先立って第1ラウンド論議全体を振り返り「2024年度改定に向けた基本的な視点」を整理しました。第1ラウンド論議全体を確認することで、第2ラウンドの個別具体的な議論が効率的・円滑に進むことが期待されます(議論が明後日の方向に進まないようにする)。

委員間で細部について考えの相違はあるものの、「次の4つの方向が重要である」点が確認されています。

(1)地域包括ケアシステムの深化・推進
▽認知症の方や単身高齢者、医療ニーズが高い中重度の高齢者を含め、住み慣れた地域で「利用者の尊厳を保持」しつつ、質の高いケアマネジメントや必要なサービスが切れ目なく提供されるよう、地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取り組みを推進する
→具体的には▼医療・介護連携による「医療ニーズの高い方」「看取り」への対応▼感染症や災害への対応▼高齢者虐待防止等の取組▼認知症への対応—などを進める

(2)自立支援・重度化防止に向けた対応
▽高齢者の自立支援・重度化防止という介護保険制度の趣旨に沿い、多職種連携やデータの活用を推進する
→具体的には▼リハビリ・口腔管理・栄養管理の一体的取り組み▼LIFEを活用した質の高い介護提供—などを進める

(3)良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり
▽介護人材不足の中で、更なる介護サービスの質の向上を図るため、処遇改善や生産性向上による職場環境の改善に向けた先進的な取り組みを推進する
→具体的には▼介護ロボット・ICT等、介護助手の活用によるサービスの質向上と業務負担の軽減▼経営の協働化等やテレワークなどの柔軟な働き方・サービス提供に関する取り組み—などを進める

(4)制度の安定性・持続可能性の確保
▽介護保険制度の安定性・持続可能性を高め、全ての世代にとって安心できる制度を構築する
→具体的には▼評価の適正化・重点化▼報酬体系の整理・簡素化—などを進める

2024年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)



こうした方向に異論は出ていませんが、委員間で「この部分をより重視すべき」「こうした点も重視すべき」との細部の考え方には一定の差があり、様々な意見が出されました。

例えば(3)の「良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり」に関しては、「処遇改善をさらに進めるべきことを強調すべき」(小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、「介護分野からの人材流出が止まらず、このままでは介護提供体制が崩壊してしまう。2024年度改定では大幅な処遇改善が必要な旨を強調すべき」(及川ゆりこ委員:日本介護福祉士会会長)、「職場づくりで終わらず、実際に介護人材が十分に確保されることを目指す必要がある」(石田路子委員:高齢社会をよくする女性の会理事、名古屋学芸大学客員教授)、「介護人材不足は崖っぷちに状況と言える。医療・介護は患者・国民の生活にとっても、産業としても重要であることを国民に理解してもらう必要がある」(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)、「介護人材不足は極めて深刻である。人材確保に向けて『少しでも効果のありそうなことはとりあえず試行してみる』姿勢で施策を進めるべき」(稲葉雅之委員:民間介護事業推進委員会代表委員)などの声が出ています。介護人材の確保・定着が喫緊の課題(この表現でも「のんびりしている」との指摘あり)であり、2024年度改定でも最重要ポイントの1つであることが伺えます。



一方、(4)の「制度の安定性・持続可能性の確保」などに関連して、「介護報酬を手厚くすれば介護保険財政へ大きな影響出ることを明確にすべき」(酒向里枝委員:日本経済団体連合会経済政策本部長)、「現役世代はこれ以上の負担増に耐えられない点を強調し、また全体として『効率的なサービス提供』『生産性向上』を進めるべきことを指摘すべき」(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事、鳥潟美夏子委員:全国健康保険協会理事)との声が出ています。2025年度には、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、今後「介護ニーズが急速に増大」していきます。その一方で、支え手となる現役世代は2025年度から「急速に減少」していくことから、介護保険財政が極めて不安定になっていきます。介護保険制度の持続・安定は、今後の介護報酬改定においてますます重要なテーマになっていきます。

もっとも、「2000年度の介護保険制度創設以来、今が一番の経営危機にある。『保険あってサービスなし』では介護保険制度が立ち行かなくなる点を十分に認識すべき」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)、「介護施設・事業所の経営が非常に悪化している。介護提供体制が崩壊しないようなプラス改定を期待する旨を示すべき」(古谷忠之委員:公益社団法人全国老人福祉施設協議会参与)との声も出ています。



「制度の持続可能性」を重視すれば「介護給付費を抑えるために、介護報酬引き上げも抑制するべき」と考えることになります。一方、「介護施設・事業所の経営安定」を重視すれば「事業所の収益を上げるために、介護報酬も大きく引き上げていくべき」と考えることになります。つまり「両立は難し」く、同じ主張を続けていても議論は深まりません。「制度の持続可能性」を重視する委員は「介護施設・事業所の経営をどう考えるのか、『保険あってサービスなし』という事態をどう避けるべきか」を、逆に「介護経営の安定性」を重視する委員は「保険料が上昇し、国民生活が厳しくなる点をどう考える考えるのか」を、相手方の立場も踏まえて検討し、最適解を皆で探っていく必要があるでしょう。

介護給付費分科会にとどまらず、社会保障審議会の委員には「高所・大所から社会保障制度の在り方を考える」ことが求められている点を忘れてはいけません。



なお、10月11日の介護給付費分科会には、、「2021年度前回改定の効果検証結果(2023年度調査)の速報値報告」も行われました。すでにGem Medで概要を報じていますが、委員からは「リハビリ・口腔管理・栄養管理の一体的推進に向け、多職種連携に関する指標を設けてはどうか」(野村圭介委員:日本歯科医師会常務理事)、「認知症グループホームの夜勤特例について否定的な意見もあるが、介護人材不足の中で効率化推進は待ったなしであり『可能性のあることは研究・試行を継続する』スタンスで臨むべき」(稲葉委員)、「介護人材不足の中で『新たな個室ユニットの人員配置基準』などを早急に検討する必要がある」(江澤委員)等の意見が出ています。

今後、個別サービスの報酬体系・基準見直し論議を行う際に改めて提案されると考えられます。



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