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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

小児の「慢性特発性血小板減少性紫斑病」治療に、保険診療の中でレボレード錠、ロミプレート皮下注、リツキサン点滴静注を使用可―厚労省

2024.5.9.(木)

「慢性特発性血小板減少性紫斑病」治療に、レボレード錠、ロミプレート皮下注、リツキサン点滴静注について、小児にも成人と同様の用法・用量で投与することを保険診療の中で認める―。

厚生労働省は4月26日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2024年4月26日)から保険適用範囲が拡大されています。

保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に強力に対応する特別ルール

従前、我が国において医薬品の承認・保険適用手続きが複雑で時間がかかることを原因といた「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が問題視されました(現在、新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されており、2024年度薬価制度改革での対応が図られる、関連記事はこちら)。

日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況は解消しなければならず、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みが進められています。

また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。

さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

もっとも、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了する(=効能・効果追加が認められる)までには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。

これでは「傷病と闘う患者にあまりに酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。



今般、この特別ルールにより次の3医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。

●エルトロンボパグ オラミン(販売名:レボレード錠12.5mg、同錠25mg)

【効能・効果】
▽慢性特発性血小板減少性紫斑病
▽再生不良性貧血

●現在の【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、成人には、エルトロンボパグとして初回投与量12.5mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する
▽血小板数、症状に応じて適宜増減する
▽1日最大投与量は50mgとする

新たに認められる【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽「1歳以上の小児」にも上記の成人と同様の用法・用量での使用を認める

新たな【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、成人、および1歳以上の小児には、エルトロンボパグとして初回投与量12.5mgを1日1回、食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する
▽血小板数、症状に応じて適宜増減する
▽1日最大投与量は50mgとする



●ロミプロスチム(遺伝子組換え)(販売名:ロミプレート皮下注250µg調製用)

【効能・効果】
▽慢性特発性血小板減少性紫斑病
▽再生不良性貧血

●現在の【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、成人小児には、ロミプロスチム(遺伝子組換え)として初回投与量1µg/kgを皮下投与する
▽投与開始後、血小板数、症状に応じて投与量を適宜増減し、週1回皮下投与する
▽最高投与量は週1回10µg/kgとする

新たに認められる【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽「1歳以上の小児」にも上記の成人と同様の用法・用量での使用を認める

新たな【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、成人、および1歳以上の小児には、ロミプロスチム(遺伝子組換え)として初回投与量1µg/kgを皮下投与する
▽投与開始後、血小板数、症状に応じて投与量を適宜増減し、週1回皮下投与する
▽最高投与量は週1回10µg/kgとする
▽1日最大投与量は50mgとする



リツキシマブ(遺伝子組換え)(販売名:リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg)

【効能・効果】
▽CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
▽CD20陽性の慢性リンパ性白血病
▽免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
▽多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎
▽既存治療で効果不十分なループス腎炎
▽難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)
▽慢性特発性血小板減少性紫斑病
▽後天性血栓性血小板減少性紫斑病
▽全身性強皮症
▽難治性の尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡
▽視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
▽腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
▽腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植における抗体関連型拒絶反応の治療
▽「インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液」および「イットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液」投与の前投与

●現在の【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、成人には、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で4回点滴静注する

新たな【慢性特発性血小板減少性紫斑病】の用法・用量
▽通常、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量375mg/m2を1週間間隔で4回点滴静注する



小児の「慢性特発性血小板減少性紫斑病」治療の選択肢が大きく広がると期待されます。



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