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2024年度厚労省予算概算要求は33兆7275億円、医療DX推進、医療機能の分化・連携の強化など目指す

2023.9.5.(火)

厚生労働省はこのほど、財務省に対して来年度(2023年度)予算の概算要求を行いました。労働保険などの特別会計を含まない一般会計は33兆7275億円を要求しており、これは今年度(2023年度)当初予算に比べて5866億円・1.8%の増額要求となっています。

また年金・医療など社会保障に係る経費については、このうち31兆8653億円を要求。こちらは今年度(2023年度)当初予算に比べて4820億円・1.5%の増額要求となりました(厚労省のサイトはこちら)。

厚労省と財務省で内容・金額の精査を進め、年末の予算編成過程で最終調整を行い、年内に来年度(2024年度)予算案が確定します(今年度(2023年度)予算案編成における大臣折衝に関する記事はこちら)。

医療DX推進、医療機関のサイバーセキュリティ対策強化を

厚労省の2024年度予算概算要求では、重点事項として次の3本の柱を打ち立てました。
(1)今後の⼈口動態・経済社会の変化を⾒据えた保健・医療・介護の構築
(2)構造的⼈⼿不⾜に対応した労働市場改⾰の推進と多様な⼈材の活躍促進
(3)包摂社会の実現

2025年度には、いわゆる団塊の世代全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて傷病の罹患率が高く、1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招き、また年金・介護費用の増加にも直結することは述べるまでもないでしょう。

このように社会保障費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は減少していきます(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)。

「減少する一方の支え手」で「増加する一方の高齢者」を支えなければならず、医療・介護・年金といった社会保障制度の基盤が極めて脆弱になり、今後もますます厳しさを増していきます。こうした状況を踏まえた3つの柱と言えるでしょう。

2024年度予算案概算要求の重点事項(2024概算要求1)



本稿では主に(1)の中から、保健・医療・介護を中心に主要事項を眺めてみます。

まず「医療DXの推進」に向け、保健医療介護情報の活用促進のための情報標準化、全国医療情報プラットフォーム・介護関連データ利活用のための基盤等整備、電子処方箋の普及、診療報酬改定DX、医療機関のサイバーセキュリティ強化などが行われます。具体的には次のような項目が要求されています。

▽高度医療情報普及推進事業(標準病名マスター、手術・処置マスターなどの充実、電子カルテ情報標準化に伴う医療機関等からの標準コード実装にあたっての相談対応):8300万円(関連記事はこちら

高度医療情報の普及推進(2024概算要求2)



▽保健医療情報拡充システム開発事業(オンライン資格確認等システムを活用した患者の過去の診療情報共有は本人確認・同意取得が前提となり、救急搬送患者が意識障害などに陥っている場合には、過去の診療情報を供給できる仕組みが活用できない。しかし、救急現場の医師等が患者の診療情報を確認することは、患者の生命・身体保護の観点からも極めて重要であり、「医療機関に救急搬送された意識障害等の患者の医療情報を、医師等が閲覧可能とする仕組み」を構築する):4億6000万円(関連記事はこちら

保健医療情報拡充システムの開発(2024概算要求3)



▽介護関連データ利活用に係る基盤構築事業(介護情報基盤構築のための拠点整備・運用、2025年度実施の介護情報基盤構築のための複数システムにかかるシステム要件定義、資格情報確認のための仕組み構築、介護事業者からのより安全・簡易なLIFEデータ提出を実施するシステム運用、ケアプランの顕名データ蓄積、市町村等が提出する医療被保険者番号等の送受信に係る自治体システム整備支援):25億円(関連記事はこちら

▽電子処方箋の有効活用のための環境整備事業(電子処方箋管理サービスに院内処方・退院時処方に係るデータを登録・管理・医療機関や薬局での閲覧を可能にする改修など):2億2000万円(関連記事はこちら

▽診療報酬改定DX(共通算定モジュール導入・共通算定マスター整備などの電子システム運用にあわせて、「施設基準等の届け出」の電子化を推進する):5億1000万円(関連記事はこちらこちら

診療報酬改定DX(2024概算要求4)



▽医療分野におけるサイバーセキュリティ対策調査事業(医療機関等がサイバー攻撃を受けた際の被害を最小限に抑えるため、「初動対応支援」の体制強化を図る):1億1000万円(関連記事はこちら

医療分野のサイバーセキュリティ対策調査築(2024概算要求5)



▽医療機関におけるサイバーセキュリティ確保事業(医療機関等におけるサイバーセキュリティの更なる確保のため、外部ネットワークとの接続の安全性の検証・検査や、オフライン・バックアップ体制の整備を支援する):3億5000万円(関連記事はこちら

医療機関でのサイバーセキュリティ対策(2024概算要求6)

医療機能の分化・連携の強化、ポスト地域医療構想も見据える

また、地域医療・介護の基盤強化の推進に向けて、次のような事業・予算が要求されました。2025年度には地域医療構想の実現が目指されていますが、その先(いわゆるポスト地域医療構想)も見据えた要求がなされています。

【地域医療構想等の推進】:922億円
▽地域医療介護総合確保基⾦等:751億円

▽医療機能分化・連携支援事業(再編等を検討している医療機関等からの相談窓口設置、重点支援区域への申請の前段階の再編を企画・検討する区域への支援(重点支援区域の設定の要否を判断するまで支援)、重点支援区域への再編の支援(事例紹介、データ分析等)):1億9000万円(関連記事はこちらこちら

▽入院・外来機能の分化・連携推進等に向けたデータ収集・分析事業(2026年度以降の新たな地域医療構想の策定に必要となる策定支援ツールを開発し、各都道府県に提供する):7億8000万円(関連記事はこちら

▽地域医療提供体制データ分析チーム構築支援事業(都道府県におけるデータ分析チームの構築を支援し、より一層地域の実情に即した地域医療構想の評価を目指す):4億5000万円(関連記事はこちら

▽専門医認定支援事業(専門医の地域偏在・診療科偏在の解消に向けた取り組みの強化):1億7000万円(関連記事はこちら

▽かかりつけ医機能普及促進事業(「かかりつけ医機能報告制度」の円滑な運用に向けた施策、制度の周知を図る):1億円(関連記事はこちら

▽医師の働き方改革普及啓発事業(医師の働き方改革には「国民の理解」が必要不可欠であるため、国民に対して医師働き方改革に関する周知等を実施する):1億5000万円(関連記事はこちら

▽医療機関における勤務環境改善のための調査・支援事業(勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取り組み支援のための調査・研究、医師の労働時間短縮にかかる伴走支援):1億2000万円(関連記事はこちら

【地域包括ケアシステムの構築】:569億円
▽地域医療介護総合確保基⾦等による地域の事情に応じた介護サービス提供体制整備:352億円

▽地域医療介護総合確保基金等による介護⼈材の確保支援:137億円

【救急・災害医療体制等の充実】:123億円
▽EMIS代替システム調査研究事業など(は災害医療における情報収集を担っているEMSIについて、必要な機能ごとに分解しG-MIS(医療機関等情報支援システム)への一部機能統合などを研究する):9800万円ほか

▽災害派遣医療チーム(DMAT)体制整備事業(DMATへの事務局運営費用、隊員養成研修費用、災害急性期対応研修費用などを拡充):10億円

▽災害時の医療・保健・福祉に関する横断的な支援体制の構築(災害時保健医療福祉活動支援システム(通称:D24H)のシステム運用など):4900万円

▽ドクターヘリ導入促進事業:100億円(関連記事はこちら

ドクターヘリ導入促進(2024概算要求7)



▽救急現場に出動するドクターカー活用促進事業(車両整備費用(初期導入費用・管理維持費用等)、現場携行医療機材等の整備、人件費等(ドライバーの確保等)を支援する):9900万円(関連記事はこちら

ドクターカー活用促進(2024概算要求8)

難病対策、糖尿病性腎症対策、子宮頸がん予防対策などを強力に推進

また各種疾患等対策の強化に向けて次のような事項・予算の要望も行われました。

▽糖尿病性腎症患者重症化予防の取り組みへの支援(糖尿病性腎症患者等で、生活習慣の改善により重症化の予防が期待される者に対する医療保険者と医療機関とが連携した保健指導等の費用の補助):5200万円

▽「女性の健康」ナショナルセンター機能の構築(国立成育医療研究センターで「女性の健康」に関する司令塔機能を担い、女性の体と心のケアなどの支援等に関するモデル的な取り組みの均てん化を行う):25億円

「女性の健康」ナショナルセンター機能の構築(2024概算要求9)



▽認知症施策推進大綱に基づく施策の推進(認知症に係る地域支援事業の充実、認知症疾患医療センターの運営、認知症理解のための普及啓発等、認知症研究の推進など):141億円(関連記事はこちら

▽HPV検査単独法導入に向けた精度管理支援事業(都道府県、市区町村、HPV検査単独法の実施を市区町村から受託する検診実施機関に対し、アルゴリズムに沿ったHPV検査単独法による子宮頸がん検診の精度管理について研修を行う):3300万円(関連記事はこちら

▽難病・小児慢性特定疾病対策の着実な推進(難病患者等への医療費助成の実施、難病の医療提供体制の構築、難病・小児慢性特定疾病に関する調査・研究などの推進など):1644億円(関連記事はこちらこちら

▽移植医療対策の推進:37億円(関連記事はこちら

▽新興感染症対応のための実践的な平時体制の強化(国立感染症研究所と地方衛生研究所の試験・検査等業務における具体的な連携推進、民間等と一体となった検査体制の抜本的強化、各種訓練の実施など):1億8000万円



このほか、▼医療保険制度の安定運営に向けた「拠出金負担の重い被用者保険への財政支援」(820億円、関連記事はこちら)▼出産費用の見える化など「出産・子育ての安心につながる環境整備等の取組に対する財政支援」(9億9000万円、関連記事はこちら)▼医療機関の勤務環境改善に向けた主体的な取組に対する支援 の充実などの「医療従事者の確保・定着に向けた勤務環境改善のための取り組み」(9億1000万円、関連記事はこちら)▼「医薬品・医療機器等の実⽤化促進、安定供給、安全・信頼性の確保」(19億円、関連記事はこちら)▼がん・難病の全ゲノム解析推進などの「イノベーションの基盤構築の推進」(734億円、関連記事はこちら)—などの事項が目を引きます。



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