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虚偽の医療広告等、改善指導→是正命令→指定取り消し等の手順で対応し、遅くとも1年以内に是正を—医療機能情報提供制度等分科会(1)

2024.8.22.(木)

不適切な医療広告、医療広告ガイドラインに違反する広告などが後を絶たないが、都道府県による指導が難しいケースも見受けられる。そこで、国が「指導」等に関する手順書のひな型を示し、各都道府県でこのひな型に基づいて手順書を作成し、統一的な手順で指導等を行いやすくする環境を整える—。

具体的には、不適切広告・違反広告を(1)虚偽広告など「直接罰が適用される広告」(2)誇大広告など「(1)以外でも禁止されている広告」(3)品位に欠ける広告など「その他の不適切な広告」—に区分し、(1)(2)の不適切広告には「覚知してから2-3か月以内に指導改善を求める」→「改善されない場合には覚知から6か月以内に是正命令などの行政指導を行う」→「なお指導等に従わない場合には、覚知から1年以内に医療機関の指定取り消しや刑事告発など行う」こととする—。

8月22日に開催された「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」(以下、分科会)で、こうした内容を盛り込んだ「医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」が取りまとめられました。この「ひな型」を参考に各都道府県で「指導・措置等の実施手順書」を定め、それをもとに不適切広告に対する指導や、改善がなされない場合の行政処分等を行っていくことに期待が集まります。

なお、同日の分科会では「医療機能情報提供制度の報告項目の見直し」なども議論されており、別稿で報じます。

8月22日に開催された「第4回 医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」(

不適切な医療広告が長期間放置されている実態もあり、厳正対処しやすい環境整備へ

医療に関しては「不適切な広告が巷に溢れれば、国民・患者の健康・生命に取り返しのつかない被害が出かねない」ことから、医療機関が広告可能な事項は「限定」列挙されています。具体的には、広告可能告示(「医療法第六条の五第一項及び第六条の七第一項の規定に基づく医業、歯科医業若しくは 助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項」)で「広告して良い」と明示された事項以外を広告することは許されません。

ただし、医療機関のホームページやSNSについては、「医療機関選択の際に能動的に(自分から)情報にアクセスする」という特性があること、「患者・国民の医療機関選択を補助する重要なツールである」ことなどから、一定の要件(医療機関連絡先を掲載する、治療内容・費用などを分かりやすく提示するなど)を満たした場合には「限定事項」以外の内容を広告することが認められています【限定解除】。

もちろん、無制限に情報を掲載できるわけではなく、厚労省は併せて、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」(医療広告ガイドライン、以下ガイドライン)を示しています。

しかし、この指針に反する不適切な広告やホームページなども後を絶ちません。そこで、例えば▼厚労省の委託事業者がネットパトロールを行ったり、一般国民からの通報を受け付けて、不適切な広告を覚知する→▼対象医療機関等に是正の指導を行う→▼是正が行われない場合には都道府県に通報し、行政処分を待つ—などの対応も行われていますが、一部に「長期間改善が認められない」事例もあります。8月22日の分科会では「2018年度に不適切と覚知されたが、本年(2024年)3月末時点でも改善が行われていない」事例などが存在することが報告されています(厚労省サイトはこちら)。

2018年に「不適切広告である」として改善指導がなされたが、2024年3月末になっても改善・是正が認められないケースもある



こうした「長期間改善が認められない」事例が存在する背景には、「都道府県が指導等を行おうとしても、他県や他の医療機関との対応の差を引き合いに出されると強い指導が難しい」「法に基づく措置(罰則適用)に進む判断が難しい」などの事情があります。そこで分科会では「全国統一の改善指導ルールなどを国が示し、都道府県がより厳正な対処を行いやすくする環境を整備する」方針を決定。今般、この方針に則り、厚生労働省から「医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」案(以下、ひな型案)が提示されました。なお、医療機関等を指導等する権限は都道府県にあるため、国(厚労省)が都道府県に対し「こうした指導を行え」と指示・命令することはできません。このため、▼ひな型を作成し、これを参考に都道府県で指導等の手順書を作成してもらう▼ひな型の内容も「●●せよ」などではなく、「●●することが考えられる」(あくまで参考にしてもらう)というソフトな表現になっている—点に留意が必要です。

「医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」案
ひな型案の概要等



▽「不適切な広告」(ガイドライン違反広告)を次の3つに区分けする
(1)直接罰が適用される広告(医療法第6条の5第1項、同法第6条の6第4項、同法第87条第1号、ガイドライン第3の1(1))
→具体的には「虚偽広告」、「麻酔科を診療科名として広告するときの、麻酔科医の氏名併記不足」など

(2)(1)以外の禁止される広告等((医療法第6条の5第2項、医療法施行規則第1条の9、ガイドライン第3の1(2)-(7))
→具体的には「比較優良広告」、「誇大広告」、「公序良俗に違反する広告」、「広告可能事項以外の広告」(限定解除要件の充足不足も含む)、「体験談」、「治療等の前・後の写真掲載」など

(3)その他(ガイドライン第3の1(8))
→具体的には「品位を損ねる内容の広告」、「他法令または他法令に関する広告ガイドラインで禁止される内容の広告」など



▽このうち(1)(2)については、次のようなステップで是正・改善を求めるが、必ずしも「1→2→3」と各ステップを踏む必要はなく、例えば違反の程度が著しい場合などには、直ちに「ステップ3による厳格な対応」を行うこともありうる
【不適切・違反広告の覚知】(ネットパトロール事業からの情報提供、医療法第25条に基づく立入検査時における医療広告違反の発見、市民等からの通報など)

【ステップ1】(覚知から2-3か月までを目安に実施)
▼任意の調査・照会(広告媒体の確認、広告者への架電によるヒアリング、必要に応じて厚労省へのメール等による照会など)
▼通知、改善指導など(架電や訪問等による口頭での改善依頼、「医療法広告違反改善依頼」による書面での改善依頼など)
▼上記に応じない場合や、改善報告書類等に疑義がある場合には「報告命令」(2週間を目途にガイドラインに基づく報告を命じる)や「立入検査」(を実施

(改善が見られないなど)

【ステップ2】(覚知から6か月までを目安に実施)
▼中止命令、是正命令(医療法第6条の8第2項)

(中止・是正に応じない、虚偽報告を行う、検査等を拒否する、是正が認められない)

【ステップ3】(覚知から1年までを目安に実施)
▼管理者変更(医療法第28条)・医療機関等の指定許可取り消し(医療法第29条第1項第4号)
▼司法警察員に対する告発(刑事訴訟法第239条第2項)



▽また(3)については、次のように「ステップ1」で是正・改善を求める
【不適切・違反広告の覚知】(ネットパトロール事業からの情報提供、医療法第25条に基づく立入検査時における医療広告違反の発見、市民等からの通報など)

【ステップ1】(覚知から2-3か月までを目安に実施)
▼任意の調査・照会(広告媒体の確認、広告者への架電によるヒアリング、必要に応じて厚労省へのメール等による照会など)
▼通知、改善指導など(架電や訪問等による口頭での改善依頼、「医療法広告違反改善依頼」による書面での改善依頼など)
▼上記に応じない場合や、改善報告書類等に疑義がある場合には「報告命令」(2週間を目途にガイドラインに基づく報告を命じる)や「立入検査」を実施

指導・措置等のステップ概要

不適切広告に対し、都道府県が行う改善依頼(指導)

不適切広告に対し、都道府県が行う措置命令のひな型

医療広告ガイドラインで規定される、違反広告に関して医療機関等が提出すべき報告書のひな型



上記の期限のうち、例えばステップ2(覚知から6か月)は、ネットパトロール事業の実績(医療機関通知後、6か月以内で90%程度は改善完了に至る)を踏まえて、無理のない範囲での是正を求めるものと言えます(広告を業者に依頼している場合などには、当然、医療機関-業者間でのやり取りに相応の時間がかかる)。

また、「都道府県等の指導を受けても1年以上にわたり指摘事項に対する改善が認められない」ケースを長期未改善事例と位置づけ、こうした事例が生じないように、ステップ3の期限を「覚知から1年」と区切っています。

不適切広告のおよそ9割は、改善指導から6か月以内には是正・改善が行われている



ひな型案には特段の異論・反論は出ておらず(「表現ぶりがソフトすぎる」との指摘もあるが、上述のように国が指示・命令を行うことは適切ではなく、「参考にしてほしい」との表現にとどめる必要がある)、近く、都道府県等に示されます。

各都道府県は、このひな型を参考に、地域にマッチした「指導・措置等の実施手順書」を作成。これに沿って、不適切広告・違反広告の是正に向けた取り組みを進めることになります。

なお、不適切広告・違反広告が許されない理由は、冒頭に述べたように「不適切な広告が巷に溢れれば、国民・患者の健康・生命に取り返しのつかない被害が出かねない」点にあります。虚偽広告・誇大広告などが許されないことは述べるまでもありませんが、医療提供者と一般国民との間には、医療・医学に関する知識に極めて大きな格差があることから「厳格な広告規制が行われている」点などを踏まえて、適切な広告がなされることに期待が集まります。



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