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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

効能効果が同一の薬剤が複数ある場合、低薬価の製品をまず選択すべきでは―中医協総会2

2016.8.25.(木)

 新薬の薬価算定において外国価格調整を行うと、効能・効果が同一の他薬剤と比べて著しく高額な薬価が設定されてしまうケースがある。外国価格調整などを含めて、薬価算定ルールを見直す必要があるのではないか―。

 こういった議論が24日に開かれた中央社会保険医療・協議会で行われました(関連記事はこちらこちら)。

 厚生労働省は当面の対応として、留意事項通知の中で「まず効能・効果が同一の他の薬剤の使用を検討する」よう求める考えです。

外国価格調整により、効能効果が同一の製品間で大きな価格差が発生

 24日の中医協総会では、9成分15品目の新薬について薬価基準への収載(保険収載)が認められました(8月31日収載予定)。

 ところで、これらの中には『イキセキズマブ(遺伝子組換え)』(販売名:トルツ皮下注80mgシリンジ、同80mgオートインジェクター)と、『ブロダルマブ(遺伝子組換え)』(販売名:ルミセフ皮下注210mgシリンジ)が含まれています。両者の効能・効果はいずれも「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症」ですが、前者(トルツ皮下注)の薬価は24万5873円(1日薬価は8781円)、後者(ルミセフ皮下注)は7万3158円(1日薬価は5266円)と大きな開きがあります。

向かって右(ルミセフ皮下注)と左(トルツ皮下注)の効能・効果は同じ(青の点線部分)だが、左(トルツ皮下注)では外国価格調整(緑の点線部分)が行われたため、右の薬価(オレンジの点線部分)と左の薬価(同)には大きな差が出てしまった

向かって右(ルミセフ皮下注)と左(トルツ皮下注)の効能・効果は同じ(青の点線部分)だが、左(トルツ皮下注)では外国価格調整(緑の点線部分)が行われたため、右の薬価(オレンジの点線部分)と左の薬価(同)には大きな差が出てしまった

 この背景には「外国価格調整」という薬価算定ルールがあります。同じ医薬品について日本国内と外国で価格が大きく異なることを是正する(内外価格差の是正)ためのルールで、「類似薬効比較方式・原価計算方式で算定された薬価が、外国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)の平均価格を大幅に上回る、あるいは下回る場合には調整(前者では引き下げ、後者では引き上げ)を行う」というものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

外国平均価格調整の計算方法

外国平均価格調整の計算方法

 この点、前述の2新薬については、効能・効果が同じ類似薬(コセンティクス皮下注150mgシリンジ、薬価7万3132円、1日薬価5224円)と同水準の価格になるように薬価が算定されました。

 後者のルミセフ皮下注については外国での販売がないため、外国価格調整は行われず、キット部分の原材料費を加味した7万315円(1日薬価5226円)となりました。

 一方、前者のトルツ皮下注については、米国で58万6001円、英国で20万2500円で販売されていることから、前述の調整が行われ、24万5873円(1日薬価8781円)となっています。

 両者は効能・効果が同一であるにも関わらず、およそ3倍の価格差があることから、薬価の算定を行う薬価算定組織でも問題となったことが清野精彦委員長から報告されました。清野委員長は「ルールに沿っているとは言え、この価格差はいかがなものか。外国価格調整ルールを見直す必要があるのではないか」と、薬価算定組織委員長としては極めて踏み込んだ発言も行っています。

 この点、中医協総会でも委員間で問題意識が共有され、厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は「次回(2018年度)の薬価制度改革に向けて議論してもらう」旨を明言しています。

 また支払側の中川俊男委員(日本医師会副会長)と松原謙二委員(同)は、参照対象となる外国価格が「市場実勢価格」ではなく「公的価格」(我が国で言えば薬価)である点を問題視。この点も見直すよう要望しています。

 ただし「外国における市場実勢価格をどのように把握するのか、そもそも把握できるのか」といった極めて大きなハードルもあり、どのような議論が行われるのか、今後の中医協論議(主に薬価専門部会)が注目されます。

乾癬治療薬のトルツ皮下注、まず効能効果が同じ他の低薬価製品の使用を検討すべき

 ところで、前述の2製剤(トルツ皮下注、ルミセフ皮下注)と、既存薬であるコセンティクス皮下注は、効能効果は同じですからが、医療現場ではどれを選択してもよいのでしょうか。

 この点について中川委員は「薬価の低いコセンティクス皮下注やルミセフ皮下注を第1選択とし、それで効果が不十分な場合に初めてトルツ皮下注を選択できる」という具合に留意事項通知へ記載することを求めました。中山薬剤管理官はこれを受け入れ、「第1選択でトルツ皮下注を使用する場合には、その臨床的必要性をレセプトなどに記載してもらう」という運用を検討することを約束しています。

 特段の理由なく尋常性乾癬などの治療にトルツ皮下注を第1選択薬剤として用いることは、医療経済的な観点から見て控えるべきでしょう。

 
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