2018年度改定では、15対1療養の新設や、早期にリハ開始する急性期病棟の評価充実を―日慢協・武久会長
2016.9.9.(金)
2018年度の次期診療報酬改定に向けて、「看護配置15対1の療養病棟の評価」や、「早期にリハビリテーションを行う急性期病棟の評価」などを、エビデンスを示した上で提言していく―。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、8日に開いた記者会見でこういった方針を明らかにしました。
障害者施設等入院基本料など、療養病棟でも届け出を認めるべき
いわゆる団塊の世代(1947-51年の第1次ベビーブームに生まれた方)がすべて75歳以上になる2025年に向けて、医療(とくに慢性期医療)・介護のニーズが急速に高まるため、病床機能の分化・連携の推進や地域包括ケアシステムの構築が急がれます。こうした動きを促進するためには、やはり診療報酬や介護報酬による経済的誘導が重要となり、2018・2024年度に予定される診療報酬と介護報酬の同時改定の中身が注目されます。とくに医療・介護現場の準備期間を考えると、2018年度の同時改定がとりわけ重要になると考えられます。
この注目を集める2018年度改定、うち診療報酬改定に向けて、武久会長は次のような項目を提言していく考えを明らかにしました。介護報酬改定の提言項目は別途発表されます。
(1)15対1療養病棟の評価
(2)療養病棟による障害者施設等入院基本料などの届け出
(3)リハビリテーション改革
(4)認知症対策の推進
(5)病院における「喀痰吸引の研修を受けた介護職員」の活動
(1)は、現在の20対1・25対1療養病棟よりも手厚い看護配置を行っている病院の診療報酬上の評価を求めるものです。武久会長は「20対1療養病棟には、13対1や15対1の一般病棟よりも多く重症患者を受け入れている。しかし重症患者に適切に対応するためには20対1の看護配置では足りず、日慢協の会員病院では平均16.5対1に看護職員を加配している。25対1療養病棟が新たな施設類型に移行することも考慮し、15対1療養病棟の診療報酬上の評価を行って欲しい」旨を述べています。
(2)の障害者施設等入院基本料などは、現在、一般病棟しか届け出ることはできません。しかし、武久会長は「障害者施設等は超慢性期でありケアが重要となるが、一般病棟の障害者施設等の中には4.3平米・10人部屋という狭い環境もある。これに比べて療養病棟は6.4平米・4人部屋であり、障害者施設等の届け出が療養病棟に認められないのはおかしい」と述べ、次期改定での是正を求めているのです(関連記事はこちらとこちら)。
(3)のリハビリは、医療・介護の双方にまたがる分野の1つで、同時改定での診療報酬上の手当てが極めて重要です。武久会長はこの点について、「例えば脳血管疾患患者では、発症から1か月も経てば拘縮が始まり、リハビリの効果が出にくくなる。急性期で長期間入院し、拘縮が始まってから回復期や慢性期の病棟に転院したのでは、リハビリが困難である。手術後、早期にハビリテを開始するような急性期病院の評価を充実するべきである。そうした病院では、回復期や慢性期への転院も早期に行っている」と述べています。さらに「リハビリの包括評価」についても求めていく方針を明確にしています(関連記事はこちら)。
また(4)では、高齢の認知症患者の多くが低栄養や脱水という身体合併症を併発している現状を説明し、「低栄養などが改善すると、認知症の症状も改善する。認知症疾患医療センターだけでなく、慢性期病院が認知症患者の身体合併症に対応した場合の評価も行うべきである」と主張しています(関連記事はこちら)。
さらに(5)については、「特定研修を終えた看護師については、医師の包括的指示の下で、プロトコルに沿って一定の医療行為を行うことが認められた。しかし、介護職員が必要な研修を終えても、医療現場では看護職員に代わって喀痰吸引を行うことは認められていない。医療・介護の連携を進めるためにも、この点について改善が必要である」と述べました。
武久会長はこうした提言を行うに当たり、エビデンスを示すことが重要と以前から主張しています。「2017年夏頃には改定の骨格が固まってしまう。年内に必要なエビデンスを揃え、厚生労働省に提言していく」との考えも強調しています。
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