2016年12月までに487件の医療事故が報告され、46%超で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017.1.12.(木)
昨年(2016年)12月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は34件。一昨年(2015年)10月の制度発足からの累計で487件の医療事故が報告され、このうち46.4%(226件)では院内調査が完了。また遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で19件となった―。
こうした状況を、日本で唯一のセンターである医療安全調査機構が10日に公表しました(前月の状況はこちら)(機構のサイトはこちら)。
院内調査のスピードはさらに向上
一昨年(2015年)10月に始まった医療事故調査制度は、医療事故の再発防止を目指すもの。「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち「管理者が予期しなかったもの」すべてをセンターに報告。まず事故が発生した医療機関で原因を調査し、その結果をセンターや遺族に報告し、センターでは事例を集積して再発防止策などを練っていきます。
センターである機構では、毎月の報告状況を公表しており、昨年(2016年)12月には、医療事故が新たに34件報告され、制度発足からの累計報告件数は487件となったことが分かりました。
12月の報告は、病院からが33件、診療所からが1件で、診療科別に見ると▽脳神経外科7件▽外科6件▽内科3件▽心臓血管外科3件―などとなっています。
ところで医療事故が発生した場合、医療現場には「死亡事例が発生してしまったが、これは報告すべき医療事故なのか?」「医療事故が生じたが、どのようにセンターに報告を行うのか?」といった疑問、また遺族には「家族が病院で死亡したが、医療事故として報告されない。なぜなのか?」といった疑問が絶えることはないでしょう。そこでセンターには、医療機関や遺族からの相談にも対応することが求められますが、昨年12月に新たにセンターに寄せられた相談は175件で、制度発足からの累計は2328件となりました。内訳を見ると、医療機関からが98件、遺族などからが55件、その他22件となっています。
医療機関からの相談内容としては、「医療事故報告の手続き」が51件と最も多く、次いで「院内調査について」29件、「医療事故に該当するか否かの判断」26件などとなっています。制度発足から1年半近くが経過し、医療現場に制度の内容が浸透してきていると考えられ、報告すべき事故か否かの判断に関する相談は減ってきています(関連記事はこちらとこちら)。
また遺族などからの相談の中身を見ると、「医療事故に該当するか否かの判断」が36件と多くなっていますが、この中には「制度開始前の事例」「生存事例」など報告対象外のものも少なくありません。国民に向けた制度の周知がこれまで以上に必要でしょう。
医療事故が発生した医療機関では、まず院内で原因究明に向けた調査を行います。昨年12月に新たに院内調査が済んだ事例は22件で、制度発足からの累計で226件となりました。報告された全487件のうち46.4%で院内調査が済んでおり、調査のスピードはさらに向上しています。
なお、遺族の中には院内調査結果に満足がいかない、あるいは院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)と考える人も出てくると考えられます。また診療所など小規模の医療機関では、院内調査にスタッフを避けないところもあるでしょう(医師会や病院団体などの支援団体がサポートを行う仕組みもある)。こうしたケースに備え、遺族や医療機関がセンターに調査を依頼できる仕組みもあり、昨年12月にセンターへなされた調査依頼は1件で、これは医療機関からの依頼でした。制度発足からの累計では19件(遺族から13件、医療機関から6件)で、このうち17件では「院内調査結果報告書の検証中」(適切に院内調査が行われたかのチェック)、2件では「院内調査の結果待ち」という状況です。
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