費用対効果評価、新規収載の医薬品なども対象に2018年度から本格導入へ―費用対効果評価専門部会
2017.2.9.(木)
2018年度の次期診療報酬改定において費用対効果評価を本格導入するために、今夏(2017年)を目途に「費用対効果評価の薬価や材料価格への反映」に関する考え方をまとめ、その後、薬価専門部会などで具体的な価格反映方法を議論する―。
8日に開催された中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会で、こういった方針が了承されました。新規収載品も費用対効果評価を行い、その結果を価格設定に反映する方向で検討が進められます。
夏を目途に価格への反映方法をまとめ、秋から薬価部会などで具体的なルールを詰める
「我が国の医療保険財政が厳しくなる中で、あらゆる新規技術を保険導入することが難しくなると予想される。費用対効果の高い技術を優先的に保険導入していくことも考えるべきではないか」。森田明前中医協会長(国立社会保障・人口問題研究所長)のこういった指摘を踏まえ、中医協では費用対効果評価についての研究を進め、2016年度の診療報酬改定で一部医薬品・医療機器を対象に費用対効果評価を試行的に導入することになりました。具体的には、財政影響や革新性・有用性の大きな7品目の医薬品(C型肝炎治療薬のハーボニー配合錠や抗がん剤オプジーボなど)と6品目の医療機器(外傷性軟骨欠損症治療に用いるジャックなど)を対象に費用対効果を評価し、2018年度改定に合わせて再算定を行うというものです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
しかし、昨年(2016年)末にまとめられた「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(以下、抜本改革基本方針)では、「2018年度改定で費用対効果評価を本格導入する」旨が指示され、厚生労働省は導入・検討スケジュールを見直すことになりました。注目すべきは「新規収載品」も評価対象に加える方向で検討が進められる点です。
費用対効果を評価するにあたっては、当該技術の費用(薬価などに加え、入院費用や検査なども含める)と効果(生活の質を考慮した生存年=QALY:質調整生存年など)を分析し、さらに社会的影響などを加味した総合的評価(アプレイザル)を行います。十分な評価には相当の時間がかかることから「新規収載品については、データ提出は求めるが、試行導入に際して評価結果は価格算定に用いない」とされました(関連記事はこちらとこちら)。この点、抜本改革基本方針で「本格導入」が指示されたことを受け、厚労省は2018年度改定時の「新規収載品も含めた制度化」に向けた検討を行うこととしたものです。
8日の部会では、厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官から次のような検討事項が提案され、これを了承しています。
【検討事項】
▼対象品目・医療技術の選定の在り方:試行導入における選定基準(補正加算が最も高い医薬品や、補正加算が設けられた医薬品のうちピーク時予測売上高がもっとも高いものなど)、これまでの新規収載品目数、諸外国の状況、事務局体制などを踏まえて検討する
▼総合評価(アプレイザル)の在り方:どのような要素を考慮するかを検討する
▼価格への反映方法(抜本改革基本方針では「費用対効果の高い薬は薬価を引き上げる」ことも含めて検討するよう指示されている)
▼評価体制、データ整備、制度化に対応するための組織など
具体的な価格への反映方法については、薬価算定ルールや材料価格算定ルールに盛り込む必要があるため、薬価専門部会と保険医療材料専門部会で詰める必要があります。両部会での議論の時間も考慮し、費用対効果専門部会では「今夏」を目途に中間的なとりまとめを行うことになりました。
なお、新規収載品に対する費用対効果評価を行う場合、「分析に時間がかかれば薬価の設定、つまり保険収載が遅れ、患者の新薬へのアクセスが阻害されてしまうのではないか」との心配もあり、どのような仕組みを導入するのか注目が集まります。この点、費用対効果評価先進国である英国では「公定価格は据え置くが、実際には一定の割引を行う」(患者アクセススキーム)仕組みや、「市販後のエビデンスをもとに薬価の引き上げを行う」(弾力価格制)仕組みなどが準備されており、こうした仕組みを部会でさらに研究していくことになりそうです。
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