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初期臨床研修をゼロベースで見直し、地方大学病院の医師確保を—医学部長病院長会議

2017.7.21.(金)

 2004年の新医師臨床研修制度から、大学病院、とくに小都市の大学病院では初期臨床研修医、後期研修医が確保できず、地域の病院への医師派遣が困難となり、地域の医師偏在を招いている。初期臨床研修をゼロベースで見直すことが、地域医療の確保にとって不可欠である—。

 全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)は20日の定例会見で、このような見解を示しました(関連記事はこちら)。

全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)

全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)

地方大学の医師不足が、地域医療機関への医師派遣低下、ひいては医師偏在を招く

 全国医学部長病院長会議では、毎年、全大学附属病院を対象に「研修医に関する実態調査」を実施しており、20日の定例会見では地域医療検討委員会の守山正胤委員長(大分大学医学部長)から2016年度の調査結果が報告されました。そこからは、例えば次のような状況が明らかになっています。

全国医学部長病院長会議・地域医療検討委員会の守山正胤委員長(大分大学医学部長)

全国医学部長病院長会議・地域医療検討委員会の守山正胤委員長(大分大学医学部長)

 
【初期臨床研修医の充足率】(初期臨床研修医の定員に対する実数の割合、いずれも1年目の研修医)

▼平均71.3%だが、地域ごとのバラつき(近畿地方の86.2%に対し、東北地方では36.3%)、地域内でのバラつきが依然として大きい

▼中大都市では78.6%だが、小都市では59.5%にとどまる

▼旧帝国大学では83.2%にのぼるが、他の国立大学では61.9%にとどまる

【初期臨床研修修了医の受け入れ率】(自大学出身の医師国家試験合格者に対する、初期臨床研修を終了し、後期研修を自大学で行う医師の割合)

▼中大都市では新研修医制度実施前(2002年)は69.4%であったが、その後、低下。しかし2016年度には94.5%となった

▼小都市では新研修医制度実施前は71.2%であったが、その後、低下し、2016年度でも50.6%にとどまっている

▼旧帝国大学では133.2%に達したが、他の国立大学では64.1%にとどまる

【後期研修医出向率】(自大学で後期研修を受けている医師のうち、地域の病院に出向している者の割合)

▼中大都市では2014年度に16.4%、15年度に26.0%、16年度に28.5%と上昇傾向にあるが、小都市では14年度に17.4%、15年度に20.9%、16年度に15.6%で増加していない

 
 守山委員長は、この中でも【初期臨床研修修了医の受け入れ率】と【後期研修医出向率】に注目し、「地方大学において研修する医師が、新臨床研修医制度施行前の状態に回復しておらず、地域の関連病院への出向・派遣が十分にできていない。これが地域の医師偏在の大きな要因になっている」と分析しました。

 さらに守山委員長は、大分県における大学からへき地医療拠点病院への医師派遣実施を紹介。それによると、地方大学である大分大学からは2016年度に35名の医師が派遣されているものの、自治医大や他の大規模大学からは1桁の医師しか派遣されていません。さらに派遣医師(51名)のほうが、へき地医療拠点病院に就職している医師(29名)よりも多いことも分かりました。守山委員長は「地方大学からの医師派遣が、地域医療を支えていることが分かる」と指摘し、医師偏在の主因が「地方大学の医師(とくに後期研修医)不足にある」ことの証左であると強調しました。

 
こうした状況を踏まえ新井会長は、「明らかに、新臨床研修医制度(初期研修制度)の2004年スタートがトリガー(引き金)となって地域の医師偏在が進んでいる。初期研修制度をゼロベースで見直すことが必要であろう。初期研修の一部を医学部教育に移管し、学部から初期研修、後期研修(専門医研修)をシームレスに実施し、学部時代から『地域で医師を育てる』仕組みとする必要がある」と強く訴えました。

また専門委員長会医学教育委員会の山下英俊委員長(山形大学医学部長)も、「厚生労働省の調査では、研修医の半数程度は『地域医療に貢献する』意思を持っていることが分かっている。ただし、(1)期間を限定する(2)専門医の勉強ができる—という2つの条件がある。裏返せば、2つの条件を満たす仕組みを設ければ、多くの医師が地域医療に従事し、医師偏在が是正されることになる。そこで、『1人の医師が大学と地域の医療機関を循環する』仕組み(例えば大学病院での専門医研修を受け、その後、地域の医療機関に従事し、さらに大学に戻ったり、海外に行き、さらに高度な医療を学ぶ。そこで得た知識・技術を再度、地域医療で提供する、など)を作ることが必要だ。こうした采配はかねてから大学の医局が行ってきたもので、『大学の医局が医師を囲い込んでいる』というのは全くの誤解であり、無益な議論である」と述べています。

全国医学部長病院長会議・専門委員長会医学教育委員会の山下英俊委員長(山形大学医学部長)

全国医学部長病院長会議・専門委員長会医学教育委員会の山下英俊委員長(山形大学医学部長)

 
 なお、20日定例会見では「大学病院の医療事故対策委員会」の中島勧委員(東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長)から7月1日に開催された「医療事故の調査などに関するシンポジウム」に関する報告も行われました。

全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策委員会」の中島勧委員(東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長)

全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策委員会」の中島勧委員(東京大学医学部附属病院医療安全対策センター長)

 
 2015年からスタートした医療事故調査制度ですが、中島委員は「医療事故の再発防止」という本来の趣旨を忘れるような動きがあることを懸念。例えば日本医療安全調査機構(日本で唯一の医療事故調査・支援センター)が「医療事故報告の対象となるか否かを判断する」ことは利益相反に陥る可能性があり、判断は「都道府県医師会などの地域の支援団体に任せるべき」と訴えています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 

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