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論理的に考え、患者に分かりやすく伝える能力を養うため、専門医に論文執筆は不可欠—医学部長病院長会議

2017.5.29.(月)

専門医の資格要件の1つに「論文執筆」や「学会発表」が盛り込まれることが多いが、不明な症例について原因や治療法を論理的に考えて探っていく能力、また患者に分かりやすく状況や治療内容などを伝える能力を養うためには不可避である—。

全国医学部長病院長会議は26日に緊急記者会見を開き、全国市長会による「国民不在の新専門医制度を危惧し、拙速に進めることに反対する緊急要望」への反論をし、その中で上記のような考えを強調しました。

5月26日に緊急記者会見を行った、全国医学部長会議の幹部(向かって左から島田眞路・専門医に関するWG座長、新井一会長、稲垣暢也・後方委員会院長、山下英俊・専門委員長会医学教育委員会委員長)

5月26日に緊急記者会見を行った、全国医学部長会議の幹部(向かって左から島田眞路・専門医に関するWG座長、新井一会長、稲垣暢也・後方委員会院長、山下英俊・専門委員長会医学教育委員会委員長)

複雑な症例をどうすれば治せるのかを「論理的に考える」ことが医師の務め

新専門医制度については、日本専門医機構と関係学会が共同し、「質の確保」と「地域医療への配慮」の両立に向けた検討を進めていますが、全国市長会などから「さらなる地域医療への配慮が必要」という要望が出されています。このため、塩崎恭久厚生労働大臣は省内に「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」を設置し、地域医療への配慮に向けた対応を議論しています(関連記事はこちらこちらこちら

25日に開かれた検討会では、日本内科学会から「どのように地域医療への配慮をしているか」が詳細に報告され、検討会構成員から称賛の声が上がる一方、立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)から「内科学会の配慮は素晴らしいが、専門医資格取得要件の中に『論文』発表を含めている点に違和感を覚える」といった指摘もなされています(関連記事はこちら)。

この点について全国医学部長病院長会議の新井一・会長(順天堂大学学長)は、「症例報告は医師の原点である。珍しい症例を解析して、そこから普遍的な原理を見出すことは医師に必要な能力である。また自分の治療内容を反芻し、正しいのかを検証することも重要である。論文の本数については議論があると思うが、決してスキップしてはいけない」と強調。

5月26日に緊急記者会見を行った、全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)

5月26日に緊急記者会見を行った、全国医学部長病院長会議の新井一会長(順天堂大学学長)

 
また日本専門医機構の副理事長でもある山下英俊・専門委員長会医学教育委員会委員長(山形大学医学部長)も、「論理的に考え、患者が分かるような表現で説明するために論文執筆は欠かせない。複雑な病態に直面したとき、原点にかえってどうすれば治せるのかを論理的に考えなければいけない。ただ患者を診ていればよいというのは暴論ではないか。地方学会では、大学病院以外の病院に勤める医師も多く発表しており、これを求めている。患者に役立つ医師になるために、論文執筆は必要である」との考えを示しました。

さらに同会議の稲垣暢也・広報委員会委員長(京都大学医学部附属病院病院長)も「学会発表ではその場で終わってしまう。論文にすれば(形として残り)次につながる」と、論文執筆の重要性を説明しています。

新専門医制度、「地域の医療機関に医師を循環させる」システム

また新井会長は、全国市長会などには「大学病院への誤解」があるのではないかとし、次のような反論も行っています。

(1) 全国市長会は「新専門医制度で中小病院が危機に陥り、地方創成に逆行する」としているが、研修プログラム制は「地域の病院に医師が循環する」ことを担保するもので、またカリキュラム制を柔軟に取り入れる形で地域医療に配慮している

(2) 全国市長会は「2年の初期臨床研修で十分」な旨を述べているが、現在の2年間の卒後臨床研修(初期研修)で一人前の医師となり、診療を行うことは危険である。それこそ国民の理解が得られるのだろうか

(3) 全国市長会は「初期臨床研修導入時に立ち返り、PDCAで考えるべき」と主張するが、まさにその通りで、初期臨床研修への反省をもとに生まれたのが、現在の「新専門医制度」である。初期臨床研修制度が医療崩壊を招いたというエビデンスもあり、その点に関する議論を行うことはやぶさかではない

(4) 全国市長会は「若手医師に医局生活を理不尽に強いる」とするが、何十年の前の「白い巨塔」の発想で大学病院を捉えてもらっては困る。現在の大学病院は、地域の病院への医師派遣などを初め、地域医療にしっかり取り組んでいる

(5) 全国市長会は「専門職自律(プロフェッショナルオートノミー)という国民不在」と指摘するが、プロフェッショナルオートノミーは患者の命を預かる医師の根本の行動規範であり、これをベースに専門医機構が制度構築することは理に適っており、国民不在という指摘は当たらない

全国市長会を初め、厚労省検討会でも「地域医療への配慮」という指摘が出されますが、同会議の島田眞路・専門医に関するワーキンググループ座長(山梨大学学長)は、「地域医療の崩壊は初期臨床研修制度で始まった。山梨大学では、相当数の卒業生が東京に行ってしまい、医師確保に難渋した。そこで行政や大学医学部などで地域の医療機関に医師が循環するような仕組みとして、現在の専門医制度を作ってきた。もう少しで『質の担保』と『地域医療への配慮』を両立する良い仕組みができるところである」と強調し、新専門医制度への理解を求めています。

 

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