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災害などで移転余儀なくされる場合でも、介護保険の自己負担が高額にならないような見直し―厚労省

2018.3.23.(金)

 災害の被災地などでは、別の土地に移転居住するため、やむを得ず自宅を手放すこともある。この場合、売却収入によって所得が急増し、介護保険利用時の自己負担が高額になってしまう。こうした不都合を是正するために、災害や土地収用などの場合には、土地の売却収入等を所得として取り扱わないこととする―。


こうした内容の「介護保険法施行令等の一部を改正する政令」が3月22日に公布されました。今年(2018年)8月1日から施行されます(関連記事はこちらこちら)。

自己負担割合などを決める「所得」から、土地売却収益等を一定程度控除

 昨年(2017年)5月に改正介護保険法が成立し、▼保険者等による自立支援・重度化防止の強化(保険者機能推進交付金の創設など)▼介護医療院の創設▼介護納付金(健保組合や協会けんぽからの支援金)における総報酬割の段階的導入▼高額所得者の自己負担引き上げ―などが行われます(関連記事はこちらこちら)。

改正案の概要

改正案の概要

 
 このうち「高額所得者の自己負担引き上げ」は、年金収入等がおよそ340万円以上の高額所得者について、自己負担割合を3割とするものです。介護保険料の自己負担は、所得に応じて▼340万円以上では3割▼280万円以上340万円未満では2割▼280万円未満では1割―の3段階となります。
高所得者の介護サービス利用者負担を、来年(2018年)8月から3割に引き上げるが、実際に負担額が引き上げられる人はごくごく限られる

高所得者の介護サービス利用者負担を、来年(2018年)8月から3割に引き上げるが、実際に負担額が引き上げられる人はごくごく限られる

 
 また法改正事項とは別に、昨年(2017年)8月から高額介護(予防)サービス費(暦月1か月当たりの自己負担が高額にならないよう、上限を定め、超過分が介護保険から給付される仕組み)について、「世帯員のだれかが市町村民税を負担している」世帯では、これまでの月額3万7200円から「月額4万4400円」に引き上げられています(関連記事はこちら)。

高額介護サービス費見直しの概要。赤枠の「世帯員のだれかが市区町村民税を課税されている」世帯では、月額の上限が4万4400円に引き上げられる。ただし急激な負担増を避けるために、新たな年額自己負担上限(従前の3万7200×12=44万6400円)が設定される

高額介護サービス費見直しの概要。赤枠の「世帯員のだれかが市区町村民税を課税されている」世帯では、月額の上限が4万4400円に引き上げられる。ただし急激な負担増を避けるために、新たな年額自己負担上限(従前の3万7200×12=44万6400円)が設定される

月額自己負担が4万4400円となり、年間自己負担上限の対象となるかどうかの具体例

月額自己負担が4万4400円となり、年間自己負担上限の対象となるかどうかの具体例

 
 ところで、災害や政策的な土地収用などによって、やむを得ず自己所有の土地等を譲渡した場合、譲渡した年の翌年には所得が急増します。その結果、自己負担割合や高額介護サービス費(予防)の上限値が引き上げられてしまうケースが生じてしまっています。

 厚労省は、今般、こうした不都合を是正するために、自己負担割合等を決める際の所得(合計所得金額)から、「租税特別措置法に規定される長期譲渡所得または短期譲渡所得に係る特別控除額を控除して得た額」を用いることを決めました。具体的には、以下の金額が所得から控除されます。

(1)収容交換等のために土地等を譲渡した場合:5000万円(最大)
(2)特定土地区画整理事業や被災地の防災集団移転促進事業等のために土地等を譲渡した場合:2000万円(最大)
(3)特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合:1500万円(最大)
(4)農地保有の合理化等のために農地等を売却した場合:800万円(最大)
(5)居住用財産を譲渡した場合:3000万円(最大)
(6)特定の土地(2009年および2010年に取得した土地等であって所有期間が5年を超えるもの)を譲渡した場合:1000万円(最大)
(7)(1)から(6)のうち2つ以上の適用を受ける場合:最高限度額5000万円(最大)

 
 なお、高額介護(予防)サービス費の上限額を決める際の所得については、公的年金等控除(1月1日時点で64歳の人は70万円、65歳以上の人は120万円を控除する)による「生年月日による所得段階の差」を是正するための見直しも行われます(現在「公的年金等の収入金額に合計所得金額を加えて得た額」→改正後「『公的年金等の収入金額に合計所得金額を加えて得た額』から、年金収入に係る所得を控除した額」)。

 
 介護保険料の計算においても、既に同様の対応が図られています(今年(2018年)4月1日から適用)(関連記事はこちら)。

 
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