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外国人旅行者への医療提供、通訳などのコストに見合った診療費を各医療機関で設定せよ―外国人旅行者への医療提供検討会

2019.4.1.(月)

 訪日外国人旅行者への医療提供に当たり、一般の医療法人では、自由診療として「自由な価格設定」を行うことができ、また社会医療法人等においても「通訳等の費用を、診療費などとは別に請求する」ことができる。今後、診療価格の算定方法や事例を記した研究報告書をまとめ、公表する―。

 「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(以下、検討会)は3月29日に、こういった内容を盛り込んだ「議論の整理」を行いました(関連記事はこちらこちら)。

3月29日に開催された、「第5回 訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」

3月29日に開催された、「第5回 訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」

 

各都道府県で「外国人旅行者を受け入れる医療機関」の選定を

 安倍晋三内閣は、「観光立国」を重要政策の1つとして掲げています。今年(2019年)9月にはラグビーワールドカップが、2020年にはオリンピック・パラリンピックが我が国で開催されることから、2020年には4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人旅行者数が目標に据えられています。

 外国人旅行者が我が国で傷病にあった場合、当然、医療機関を受診する必要がありますが、患者側には「どの医療機関に行けば良いのかわからない」、医療機関側には「言語対応はどうすればよいのか、費用請求はどのように行えばよいのか」などのさまざまな疑問が生じることでしょう。検討会では、こうした疑問を解消するための方策について議論を行ってきました。

まず、外国人旅行者を受け入れる医療機関については、厚生労働省から都道府県に対し、▼重症(入院)患者を受け入れる医療機関を都道府県単位で(少なくとも1か所)▼軽症(外来)患者を受け入れる医療機関を2次医療圏単位で―選定し、リスト化するよう要請。各都道府県では、▼行政の医療・観光・多文化共生等の部局▼医療機関▼医師会▼病院団体▼病院グループ▼医療通訳関係団体▼消防・救急▼観光協会▼宿泊関連業者▼国際交流団体―などで構成される「協議体」を設け(設置済であればその協議体を活用)、そこで「外国人旅行者を受け入れる医療機関の選定」などを行うことが求められます。

5月31日までに各都道府県で選定を行ったうえで、6月中に医療機関のリストを作成・公表。順次、更新していくことが求められます。

外国語対応が可能な医療機関が整備されている2次医療圏は全体の7割程度

 外国人患者への診療に当たる医療機関では、まず「外国語にどう対応すれば良いのか」が大きな課題となるでしょう。

 この点、▼医療通訳を雇用・配置する▼必要に応じて医療通訳の派遣を求める▼電話等による医療通訳を活用する▼翻訳ソフトなどを活用する―など、さまざまな対応方法が考えられます。外国人患者の状況(多いのか、少ないのか)、地域の状況(医療通訳者の確保が可能か)などを勘案して、各医療機関で判断することになります。

 この点、検討会では「医療通訳の養成に向けて、2019年度から『医療通訳の認証制度』を開始することが期待される」との考えをまとめています。

 厚生労働省の行った調査(全病院や京都・沖縄の診療所などを対象に行った「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」)では、▼医療通訳者の配置▼電話通訳が利用可能▼タブレット端末等が利用可能―な2次医療圏(2次医療圏内にいずれかの対応が図られている医療機関がある)は233で、全体の69.6%となっていることが分かりました。

厚労省は、2019年度予算において「外国人患者に対する医療提供体制整備等の推進」に15億円強、「医療機関における外国人患者受け入れ環境整備」に1億4000万円弱などを盛り込んでおり、前者では、医療機関における▼医療通訳の配置▼翻訳機能を持たせたタブレットの配置―費用が補助されることから、こうした制度の更なる活用が期待されます。
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一般医療法人では自由に価格設定を、社会医療法人等でも通訳費用の請求可能

 また医療機関にとっては、自由診療である外国人旅行者への費用請求をどのようにすればよいのかも頭を悩ませるところでしょう。ここでは、▼診療価格をどう設定するか▼確実に支払ってもらうためにどうするか―の2つの課題があります。

 外国人旅行者への医療提供にあたっては、「外国語での対応が必要となる」「文化や風習等が異なる」などさまざまな事情で高コストになりがちです。しかし、厚労省の調査によれば、▼90%の医療機関が保険診療と同じ価格設定(1点10円)としていた▼99%の医療機関が通訳費用を請求していない―ことが分かりました。この理由は明確ではありませんが、厚労省担当者は「医療機関が自由に価格を設定できることや、通訳費用を請求できることを知らない可能性もある」と見ており、3月28日に通知「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について」を発出しています。
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通知では、まず一般の医療法人においては「自由診療となる外国人旅行者への診療について、必要な経費を請求できる」ことを明確にしています。医療機関の事務を考慮すれば、例えば、保険診療を勘案し「1点15円や20円など」で請求する手法が1つ考えられるでしょう。なお、あくまで自由価格であり厚労省から「1点●円が望ましい」などの見解は示されません(独占禁止法に抵触する恐れがあるため)。

一方、税制上の優遇措置が受けられる社会医療法人や特定医療法人、認定医療法人などでは、自由診療においても「1点10円」で請求することが求められます。ただし、「通訳などに関する費用」については、2005年に厚労省通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」で明示されているように、患者から費用徴収することが可能です。今般の通知では、こうした点を再周知するとともに、「医療機関から空港までの患者搬送」等の費用も実費請求できることを明確にしています。

外国語対応などのコスト増分は、まず受益者である外国人患者自身が負担することがふさわしく、「公費や診療報酬の加算等による補填」については慎重に検討することになるでしょう。

この点、厚労省の「訪日外国人に対する適切な診療価格に関する研究」班(厚生労働科学研究)が、今後、診療価格の算定方法や事例などの研究成果を検討会に報告する見込みです。

外国人旅行者との費用面でのトラブルを避けるため、事前に概算医療費額の説明を

 外国人旅行者に限った話ではなりませんが、患者から医療費を確実に徴収できないケースもあります。厚労省の調査では、外国人患者(旅行者に限らず)の受け入れ実績のある医療機関のうち、18.9%で「外国人患者による未収金」が発生しており、平均して1病院あたり8.5件・42万3000円(総額)の未収があることが分かりました。中には未収金総額が100万を超える病院もあるようです。
訪日外国人旅行者医療提供検討会3 190329
 
 この点、「医療機関における外国人患者受入れの在り方に関する研究班」(厚生労働科学研究)では、(1)保険(民間の海外旅行保険など)の確認など(2)事前の医療費概算金額の提示―の2点が重要であると強調しています。

まず(1)の保険については、▼保険に加入していない外国人旅行者もいる(2018年3月の観光庁調査では23%の外国人旅行者が未加入)▼保険に加入していても「Pay & Claim」方式では、一度、患者が医療機関に全額を支払い、保険会社から加入者(患者)に保険金が支払われる▼保険会社から医療機関に費用が支払われるタイプ(キャッシュレス)の保険でも、契約内容の限定があり、加入者(患者)から保険会社への事前連絡・許諾が必要なケースも多い―ことに留意し、対策をとることが重要と指摘しています。

また(2)の「事前の医療費概算金額の提示」については、保険診療では馴染みがありませんが、外国人旅行患者からは「聞いていない」「それほど高いのであれば、この検査は受けなかった」などのクレームが出ないよう、事前説明が極めて重要であることを研究班は強調しています。

 
こうした内容は、研究班の作成する「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」にも盛り込まれます。文言の整理などを行い、近く厚労省のホームページで公表されます。またマニュアルは、2019年度以降、順次更新され、例えば「診療に関するフォローチャートの追記」、「事例紹介の追記」などが予定されています。

 
検討会では、こうした外国人旅行者向けの医療提供体制整備は、在留外国人への医療提供にも資することを確認しています。

厚労省や都道府県では、▼外国人旅行者を受け入れる拠点医療機関等の選定状況▼外国人旅行者への医療提供状況―などを適宜、確認し、今後も検討会で必要な対応等に向けた議論が行われることになります。
 
 
 
 

 

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