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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

がん検診、非正規や無職では受診率が低く、零細・中小企業では実施率が低い―東京都

2019.5.28.(火)

 がん検診の受診率は、正規雇用者では高いが、非正規雇用者や主婦・主夫、無職者などでは低い。また、事業所におけるがん検診実施率は、従業員500人以上の大企業では高いが、零細・中小企業では低い―。

 東京都が5月23日に発表した2018年度の「東京都がん予防・検診等実態調査」から、こういった状況が明らかになりました(東京都のサイトはこちら(報道発表)こちら(概要版))。

 がんの早期発見に向けて「がん検診」の受診・実施が極めて重要であり、どういった支援が行えるのか検討していく必要があるでしょう。

がん検診の受診率、正規雇用者では7割近いが、非正規や無職では3-5割にとどまる

 調査は、都内在住の20歳以上の男女2700名(男性44.1%、女性54.5%)と、都内の事業所(企業等、675事業所)と健康保険組合(64組合)を対象に、「がん検診」「がん予防」に関する取り組みを調べています。

 まず都民のがん検診受診率(対象者に占める受診者の割合)を見ると、▼胃がん:49.5%(2013年調査の33.9%から15.6ポイント増)▼大腸がん:48.9%(同じく41.6%から7.3ポイント増)▼肺がん:50.2%(同じく40.4%から9.8ポイント増)▼乳がん:53.0%(同じく37.8%から15.2ポイント増)▼子宮頸がん:47.5%(同じく37.9%から9.6ポイント増)―となりました。5大がんについては、概ね5割前後と言えそうです。
2018年度東京都がん予防・検診等実態調査1 190523
 
 ただし、がん検診受診率を職業(雇用形態)別にみると、次のように大きなバラツキのあることが分かりました。

【胃がん】
▼全体:49.5%▼正規雇用労働者:69.6%▼非正規雇用労働者:38.7%▼自営・フリーランス等:47.0%▼専業主婦・主夫:46.5%▼無職等:40.3%

【大腸がん】
▼全体:48.9%▼正規雇用労働者:60.0%▼非正規雇用労働者:44.7%▼自営・フリーランス等:43.8%▼専業主婦・主夫:46.1%▼無職等:38.2%

【肺がん】
▼全体:50.2%▼正規雇用労働者:62.5%▼非正規雇用労働者:46.6%▼自営・フリーランス等:40.8%▼専業主婦・主夫:50.7%▼無職等:34.6%

【乳がん】
▼全体:53.0%▼正規雇用労働者:72.6%▼非正規雇用労働者:54.0%▼自営・フリーランス等:43.1%▼専業主婦・主夫:51.0%▼無職等:31.1%

【子宮頸がん】
▼全体:47.5%▼正規雇用労働者:64.6%▼非正規雇用労働者:41.1%▼自営・フリーランス等:38.6%▼専業主婦・主夫:48.1%▼無職等:26.1%

 正規雇用の労働者では高くなっており、「がん検診の受診機会」に関して「職場の健康診断で受けた」との回答が多かったことと合致します(▼胃がんでは54.6%で第1位▼大腸がんでは47.3%で第1位▼肺がんでは58.3%で第1位▼乳がんでは39.7で第2位▼子宮頸がんでは37.2%で第2位―)。
2018年度東京都がん予防・検診等実態調査2 190523

2018年度東京都がん予防・検診等実態調査3 190523

2018年度東京都がん予防・検診等実態調査4 190523
 

健診や人間ドックにないために、がん検診を受けないという声が多い

 また、「がん検診を受診しなかった理由」(複数回答)を見ると、「多忙」のほかに「健康診断や人間ドックの項目・内容に含まれていなかったから」「健康診断・検診の対象年齢でない」という回答が目立ちます。

【胃がん】
▼多忙(家事、育児、介護、仕事等、以下同):34.9%▼健診・人間ドックに含まれていない:34.8%▼健診・検診の対象年齢でない:23.8%▼面倒:17.9%▼いつでも医療機関を受診できる:17.1%

【大腸がん】
▼健診・人間ドックに含まれていない:36.6%▼多忙(家事、育児、介護、仕事等、以下同):30.2%▼健診・検診の対象年齢でない:23.9%▼面倒:19.4%▼受診方法などが不明:15.4%

【肺がん】
▼健診・人間ドックに含まれていない:39.5%▼多忙(家事、育児、介護、仕事等、以下同):28.6%▼健診・検診の対象年齢でない:22.6%▼面倒:17.7%▼どのような検査か分からない:16.8%

【乳がん】
▼多忙(家事、育児、介護、仕事等、以下同):33.8%▼健診・人間ドックに含まれていない:26.7%▼いつでも医療機関を受診できる:21.4%▼痛みがあると思う:18.6%▼健診・検診の対象年齢でない:17.8%

【子宮頸がん】
▼多忙(家事、育児、介護、仕事等、以下同):24.2%▼健診・人間ドックに含まれていない:22.4%▼どのような検査か分からない:18.4%▼健診・検診の対象年齢でない:16.6%▼面倒:16.6%

 
 また、がん検診を受診しなかった最大の理由(単一回答)では、5大がんすべてで「健診・人間ドックに含まれていない」が最も多くなっています。

正社員以外へがん検診実施する企業は少なく、正社員でも零細・中小企業の実施率は低い

 こうした結果を見ると、がん検診の受診率向上に向けて「職場や健康保険の健康診断の機会において、がん検診を実施する」ことが重要なことが分かります。

 まず事業所における「がん検診の実施率」を、従業員の雇用形態別にみると「正社員に比べて、正社員以外への実施率は半分程度にとどまる」状況が分かりました。

【胃がん】
▼正社員:70.1%▼正社員以外:31.6%(正社員の45%)

【大腸がん】
▼正社員:64.3%▼正社員以外:30.5%(正社員の47%)

【肺がん】
▼正社員:67.0%▼正社員以外:33.6%(正社員の50%)

【乳がん】
▼正社員:58.2%▼正社員以外:25.5%(正社員の44%)

【子宮頸がん】
▼正社員:54.8%▼正社員以外:23.3%(正社員の43%)
2018年度東京都がん予防・検診等実態調査5 190523

  
 また正社員に対する「がん検診の実施率」を、事業所の規模別に見てみると、次のように「小規模の事業所で実施率が低く、規模が大きくなるほど実施率が高くなる」ことが分かります。

【胃がん】
▼全体:70.1%▼50人未満:66.9%▼50-499人:74.5%▼500人以上:97.1%

【大腸がん】
▼全体:64.3%▼50人未満:61.5%▼50-499人:68.3%▼500人以上:88.6%

【肺がん】
▼全体:67.0%▼50人未満:64.7%▼50-499人:71.0%▼500人以上:80.0%

【乳がん】
▼全体:58.2%▼50人未満:56.5%▼50-499人:58.6%▼500人以上:85.7%

【子宮頸がん】
▼全体:54.8%▼50人未満:51.8%▼50-499人:60.7%▼500人以上:77.1%
2018年度東京都がん予防・検診等実態調査6 190523

2018年度東京都がん予防・検診等実態調査7 190523
 
 さらに、「がん検診の受診者を増やす取り組み」の実施状況を見ても、▼全体:31.3%▼50人未満:27.2%▼50-499人:36.6%▼500人以上:62.9%―という具合に、事業所の規模で大きな差のあることが分かりました。「従業員が少なく、検診受診中の支援体制をとれない」「予算が不足している」などが、実施に消極的な理由として挙げられています。

健保組合、40-74歳の「特定健診」とのセットでがん検診を実施する割合が高い

 
 一方、健保組合における「がん検診の実施状況」を見ると、次のようになっています。40-74歳を対象とする特定健診とセットで実施する健保組合が多いようですが、これでは39歳未満の組合員が漏れてしまうことも考えられます。

【胃がん】
▼特定健診(40-74歳対象)との同時実施:65.6%▼事業者健診の項目に追加:45.3%▼その他の方法:14.1%▼がん検診単独実施:12.5%▼未実施:1.6%

【大腸がん】
▼特定健診(40-74歳対象)との同時実施:62.5%▼事業者健診の項目に追加:43.8%▼その他の方法:14.1%▼がん検診単独実施:12.5%▼未実施:3.1%

【肺がん】
▼特定健診(40-74歳対象)との同時実施:65.6%▼事業者健診の項目に追加:46.9%▼がん検診単独実施:15.6%▼その他の方法:9.4%▼未実施:7.8%

【乳がん】
▼特定健診(40-74歳対象)との同時実施:62.5%▼事業者健診の項目に追加:28.1%▼がん検診単独実施:25.0%▼その他の方法:15.6%▼未実施:9.4%

【子宮頸がん】
▼特定健診(40-74歳対象)との同時実施:59.4%▼がん検診単独実施:31.3%▼事業者健診の項目に追加:23.4%▼その他の方法:23.4%▼未実施:7.8%

 また76.6%の健保組合は、「がん検診の受診者を増やす取り組み」を実施していると回答しています。具体的には▼がん検診受診費用の補助(95.9%で実施)▼ホームページ等による受診勧奨(77.6%で実施)▼受診時間を就労時間と扱う(38.8%で実施)▼利便性の向上(38.8%で実施)▼医療機関との連携(36.7%で実施)―などです。

 
 
 国立がん研究センターの示す「がんの3年生存率・5年生存率・10年生存率」を見ても、「早期発見、早期治療」が予後に大きく関係していることが分かります(関連記事はこちらこちら)。このためには、やはり「がん検診」の受診率・実施率を高めることが必要で、今回の調査結果からは、例えば▼非正規労働者に対する職場のがん検診の実施率を向上するための支援▼零細・中小企業におけるがん検診の実施を促すための支援▼被扶養者に対するがん検診実施の促進▼対象者が限定される特定健診でなく、網羅的な健康診査とセットで「がん検診」を実施する―ことなどが重要になってくると考えられます。
 
 
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