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小児がん患者が「最適な抗がん剤にアクセスしやすい環境」の整備に向け、患者申出療養を拡充―患者申出療養評価会議

2020.2.14.(金)

小児がん患者が、遺伝子パネル検査によって「最適な抗がん剤」へアクセスしやすくなる環境を整えるため、患者申出療養の「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」について、「小児患者への実施」を可能とするような実施計画の変更(拡充)を認める―。

2月13日に開催された「患者申出療養評価会議」(以下、評価会議)で、こういった方向が了承されました。今後、国立がん研究センターで「実施計画の見直し」に向けた検討が進められます。

2月13日に開催された、「第20回 患者申出療養評価会議」

小児がん患者の「抗がん剤の適応外使用」要望に、迅速に応えられるように準備

患者申出療養は、2016年4月1日からスタートした新たな保険外併用療養制度(保険診療と保険外診療との併用を認める仕組み)です。傷病と闘う患者の「海外で開発された未承認(保険外)等の医薬品や医療機器を使用した治療にチャレンジしたい」などの希望・申し出を起点として、当該医療技術(未承認の医薬品等)の安全性・有効性を評価会議で確認した上で、保険診療との併用を可能とするものです。

これまでに、次の8種類の患者申出療養が認められています。
(1)腹膜播種・進行性胃がん患者への「パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法」
(2)心移植不適応な重症心不全患者への「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」(関連記事はこちら
(3)難治性天疱瘡患者への「リツキシマブ静脈内投与療法」(関連記事はこちら
(4)髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍または非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍患者への「チオテパ静脈内投与、カルボプラチン静脈内投与およびエトポシド静脈内投与ならびに自家末梢血幹細胞移植術の併用療法」(関連記事はこちら
(5)ジェノタイプ1型C型肝炎ウイルス感染に伴う非代償性肝硬変患者への「レジパスビル・ソホスブビル経口投与療法」(関連記事はこちら
(6)進行固形がん(線維芽細胞増殖因子受容体に変化を認め、従来治療法が無効、かつインフィグラチニブによる治療を行っているものに限る)患者への「インフィグラチニブ経口投与療法」(関連記事はこちら
(7)早期乳がん患者への「ラジオ波熱焼灼療法」(関連記事はこちら
(8)遺伝子パネル検査でactionableな遺伝子異常を有すると判断された固形腫瘍に対する「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」(関連記事はこちら



このうち(8)の「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」は、もっぱら「分子標的薬の適応外使用」を希望する患者について保険診療と保険外診療との併用を可能とするものです。

複数の遺伝子変異を網羅的に分析・検出する遺伝子パネル検査の結果、「あなたにはこの抗がん剤が効果的と考えられる」と示された医薬品(抗がん剤)が「適応外」(Xがんについては有効性・安全性が確認され保険適用されているが、別のがんについては保険適用されていないなど)であるというケースがあります(決して少なくない)。この場合、▼完全に自費で適応外の抗がん剤を使用する▼治験で適応外の抗がん剤を使用する▼患者申出療養で適応外の抗がん剤を使用する―などの選択肢がありますが、治験のハードルや費用負担などを考慮すると「患者申出療養」は、非常に有力かつ魅力的な選択肢となるでしょう。

そのうえで「一刻も早く、可能性のある抗がん剤にたどり着きたい」という患者の思いに応えるために、想定されるプロトコルを事前に国立がん研究センター中央病院が準備。昨年(2019年)9月に、実際の患者からの要望に即座に対応して患者申出療養としての実施が承認されました(通常であれば、患者からの要望を踏まえてプロトコルを立て、実施計画を作成することになるため、評価会議に申請が行われるまでに相当の時間が必要となる)。

「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の実施計画概要(1)(患者申出療養評価会議1 200213)

「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」の実施計画概要(2)(患者申出療養評価会議2 200213)



このように患者視点に立った極めて画期的な仕組みですが、対象患者は「16歳以上」に限定されています。しかし、16歳未満の小児がん患者(対象外患者)が「分子標的薬の適応外使用」を希望するケースもあると考えられます。

患者申出療養は、保険外技術の保険適用を目指す仕組みであり、「臨床研究」の一環として厳密に設計された「実施計画」に基づいて実施されます。このため、実施計画に定められた対象患者以外への実施は、そのままでは不可能であり、▼実施計画の変更を行う▼新たな実施計画を作成し、その中で実施する―のいずれかを選択する必要があります。

この点について評価会議では、(8)技術の申請者である国立がん研究センター中央病院において、▼当該療養が依拠したエビデンスの範囲から逸脱しない▼当初計画の骨子が大きく変わらない―かどうかを勘案したうえで、まず「実施計画の変更」を検討すべきである(逆に言えば、実施計画の変更により「エビデンスの範囲を逸脱する」ようであれば、別の新実施計画を策定する必要がある)との見解で一致しました。

今後、国立がん研究センター中央病院で、例えば「A分子標的薬は、そもそも小児に関する用法用量が設定されていない。これをさらに適応外使用する場合に安全性は十分に確保できるだろうか」などの点を十分に勘案しながら、「実施計画の変更案」を探っていくことになるでしょう。そのうえで、早々に小児からの要望が実際に出てくれば「具体的な実施計画の変更案」を、また小児からの要望が出てくるまでに時間がかかれば「実施計画変更案の素案」を評価会議で審議することになりそうです。いずれにせよ、小児サイドから「患者申出療養として(8)の技術を使いたい」という要望が出た場合に、即座に対応できる体制が整えられることになります。

遺伝子パネル検査後の適応外薬候補としてオプジーボなどをメーカーが無償提供

なお、(8)の「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」のプロトコルには、昨年(2019年)9月時点でノバルティス社の9種類の抗がん剤のみしか記載されていませんでした(同社から無償提供)。この点、新たに▼ALK阻害薬の「ジカディア錠」(ノバルティス社)▼ALK阻害薬の「アレセンサカプセル」(中外製薬)▼抗HER2ヒト化モノクローナル抗体の「ハーセプチン注射⽤」(同)▼PD-L1ヒト化モノクローナル抗体の「テセントリク点滴静注」(同)▼ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体の「オプジーボ点滴静注」(⼩野薬品⼯業)―についても無償提供されることとなりました。

「マルチプレックス遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく分子標的治療」で使用可能な医薬品が、メーカーの協力により拡充された(マーカー部分が追加された抗がん剤)(患者申出療養評価会議3 200213)



治療の選択肢が広がることになり、福井次矢座長(聖路加国際大学学長)と患者代表の天野慎介構成員(全国がん患者団体連合会理事長)は「良い方向である」と、協力製薬メーカーの姿勢を称賛しています。現在、国立がん研究センター中央病院では、他の製薬メーカーとも交渉を重ねており、より多くの抗がん剤がプロトコルに記載されると予想されます。

患者申出療養の利用促進に向け、国民へのPR強化や事務手続きの簡素化なども検討

また、2月13日に評価会議には、2018年7月から19年6月までの1年間における「患者申出療養の実績」に関する報告も行われました。この期間には38人が患者申出療養を利用していますが、2017年7月から18年6月までには84人、2016年7月から17年6月までには111人が利用しており、「患者申出療養の利用者が減少している」ようにも思われます。

患者申出療養の実績(患者申出療養評価会議4 200213)



この背景には、1番目の患者申出療養である「腹膜播種・進行性胃がん患者への『パクリタキセル腹腔内投与および静脈内投与ならびにS-1内服併用療法』」の利用者が多かったことから、時間の経過とともに、見かけ上「利用者数が減少している」という面もあります(現に技術数は増加している)。ただし、福井座長は「一般国民へのPR強化」の必要性を、また天野構成員は「事務手続きなどの簡素化」の必要性を強調しており、今後、「患者申出療養の利用推進」に向けた方策も議論されていきます。


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