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2021年度介護報酬改定、「介護人材の確保定着」「アウトカム評価」などが最重要ポイントか―社保審・介護給付費分科会

2020.3.16.(月)

2021年度の次期介護報酬改定に向けて、3月16日には社会保障審議会・介護給付費分科会のキックオフ会合が開かれました。

厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、(1)地域包括ケアシステムの推進(2)⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進(3)介護⼈材の確保・介護現場の⾰新(4)制度の安定性・持続可能性の確保―の4つの横断的項目を当面の議題とする考えを提示。委員からは、とりわけ「アウトカム評価」「介護人材確保」の重要性を訴える意見が目立ちました。

3月16日に開催された、「第176回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

当面、地域包括ケアシステムや自立支援、介護人材確保などの横断的事項を議論

公的介護保険サービスの公定価格である介護報酬は、事業所・施設の経営動向や賃金・物価水準、さらに介護現場の課題解決などを総合的に勘案して改定されます(介護報酬改定)。現在は介護保険事業(支援)計画に合わせて、3年に一度、改定が行われ、サービス基盤整備や保険料設定とも密接に関係してきます。

次期介護報酬改定は2021年度に予定されており、眞鍋老人保健課長は、当面は(1)地域包括ケアシステムの推進(2)⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進(3)介護⼈材の確保・介護現場の⾰新(4)制度の安定性・持続可能性の確保―の4つの横断的項目を議題とし(第1ラウンド)、その後に個別サービスの報酬論議を行っていく考えを示しました(第2ラウンド)。通常どおり、今年末(2020年末)の来年度(2021年度)予算編成過程における改定率決定を受けて、年明け(2021年)早々に新単位数や各種基準に関する諮問・答申が行われる見込みです。

この4つの横断的項目は2018年度改定時と同じものですが、委員からは「2000年度の介護保険制度スタートから20年近くが経過した。これまでの『2025年度に向けたサービス量の拡充』を目指す改定とは、様相が異なるものになるのではないか」と見通す声が多数でています。ここには、いくつかの視点があります。

まず、「次期介護報酬改定および第8期介護保険事業(支援)計画が射程とする2021-23年度の間に、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める」という点です。急速に介護ニーズが増加することが見込まれ、上記のうち(4)の「制度の安定性・持続可能性の確保」の勘案が、これまで以上に重要になってくると見込まれるのです。

また、「2025年度の先、2040年度まで高齢者を支える現役世代が減少していく」という点も十分に考慮しなければなりません。介護保険財政の基盤が脆くなることはもちろん、「サービス提供体制の確保」がさらに難しくなっていくと考えられます。上記のうち(3)の「介護⼈材の確保・介護現場の⾰新」を報酬面でどうサポートしていくべきか、十分かつ迅速な議論が行われることが期待されます。

こうした点も踏まえながら、3月16日の介護給付費分科会は、いわゆる「キックオフ会合」としてフリートークが行われました。

介護人材の確保、処遇改善の拡充やタスク・シフティングなどを求める意見

まず、横断的項目(3)の「介護⼈材の確保・介護現場の⾰新」に関しては、2021年度改定の最重要項目の1つであることは委員間の共通認識と言えますが、その考え方になると相違が出てきます。

人材確保・定着に関しては、例えば、介護職員の給与増などを目的とする▼2012年度改定で創設された【介護職員処遇改善加算】(従前の介護職員処遇改善交付金を引き継ぐもの)▼2019年度改定で創設された【特定処遇改善加算】―があります。2021年度改定でも、その効果を検証したうえで「拡充や改善の必要性」を探っていくことになると思われ、大西秀人委員(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長、香川県高松市長)も拡充論議へ期待を寄せました。

また安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、処遇改善の向上にとどまらず「介護離職ゼロに向けた基盤づくり」を報酬面でもさらに推進するよう求めています。介護人材の確保がままならなければ、施設等を整備しても稼働はかなわず、結果「家族が老親等の介護のために職を手放さなければならない」事態は解消されないためです。この点、安藤委員は「限られた人材を有効に活用するために、事業所・施設の集約化を検討する時期に来ているのではないか」ともコメントしています。事業所・施設が乱立すれば、介護人材が分散してしまい、1人1人の介護人材の負担が重くなり、結果として「介護業界から去ってしまう」こともあるでしょう。働き方改革(処遇改善・負担軽減にも当然つながる)にも関連する重要なテーマです。

一方、小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)は「介護現場においてもタスク・シフティングが重要である」と指摘します。例えば介護福祉士等は「有資格者でなければならない業務」に特化し、周辺業務はボランティアや介護助手(介護保険部会の中で多くの委員から提唱された)に移譲していく、という考え方です。各サービスの人員配置基準などにも大きく関連するテーマであり、今後、どういった切り口で議論されるのか注目すべきでしょう。

さらに、人員配置基準に関連して堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)は「事業所への人員配置」から「地域への人員配置」へと考え方を切り替えていくことも重要と指摘しています。安藤委員の指摘する「集約化」とも関連するもので、例えば非常に限られた有資格者については「事業所ごとへの配置」を要件とする厳しい基準から、「一定地域への配置」と「事業所間の連携」を要件とするなどの柔軟な取り扱いとすることなどが考えられるかもしれません。

要介護度改善のアウトカムを評価する【ADL維持等加算】、効果・影響を詳しく調査

また横断的項目(2)「⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進」と(4)「制度の安定性・持続可能性の確保」に共通する重要事項である「要介護度の改善」に関しても多くの意見が出されました。

介護保険制度は「尊厳の保持」と「自立支援」の2つを大きな目的としています(介護保険法第1条)が、介護報酬が要介護度別に設定されていることから、要介護度の改善により事業所・施設の収益が下がってしまいます。また在宅サービスにおいては区分支給限度額が設定されていることから、要介護度の改善により、利用者・家族にとっては「1か月当たりに利用可能なサービス量」が減少してしまいます。このため、要介護度の改善に積極的でない事業者・施設や利用者・家族が少なくないと指摘されています。

こうした弊害を是正するために、例えば2018年度の前回介護報酬改定では、要介護度の改善を経済的に支援する【ADL維持等加算】が創設されました。通所介護・地域密着型通所介護において、「要介護度の改善が見込まれる軽度者のみを選別する」(クリームスキミング)ことが生じないように配慮した上で、利用者のADL維持・改善実績に応じた加算の算定を可能とする、極めて画期的な「アウトカム評価」です。

新設されたADL維持等加算の概要



2021年度改定では、この【ADL維持等加算】の効果を検証したうえで、必要な見直し等を検討していくことになると思われ、井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)らは強い期待を寄せています。ほかにも、「介護報酬全体に拡充すべき」、「利用者・家族へのインセンティブとして要介護度が改善した場合に利用者負担を軽減する仕組みなども検討してはどうか」(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)などの具体的な提案も行われています。

ただし、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は、拡充等について「クリームスキミングが本当に生じていないのか、十分な検証をしたうえで、慎重な検討が必要である」とコメント。例えば、通所介護事業所が「ADLの維持・向上が期待できる軽度者のみ」を選別して受け入れ、中重度者の受け入れを拒んでいるような事態があるとれば、これは大きな問題であり早急な改善が求められます。

まず【ADL維持等加算】の効果(要介護度の維持・改善)と、弊害(クリームスキミング)との状況を詳しく調べ、その分析が十分に行われることが期待されます。

なお、昨年(2019年)11月28日に公表された2018年度の「介護給付費等実態統計」によれば、ADL維持等加算の前(2017年度)と後(2018年度)を比較すると「利用者の要介護度が改善傾向にある」ことが伺えるデータが示されています。詳しい調査結果に注目が集まります。

2017年度(下グラフ)から18年度(上グラフ)にかけて、要介護度が改善する方向にシフトしている(2018年度介護給付費等実態統計3 191127)



また、(4)の「制度の安定性・持続可能性の確保」に関して、医師である武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)と江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「寝たきり防止」「要介護状態の防止」が重要であると強調しており、(2)「⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進」と表裏一体の関係にあることが再確認できます。



さらに、非常に複雑になってきている介護報酬体系について、大西委員や伊藤委員は「簡素化」の必要性も強調しました。しかし、事業所・施設の取り組みをきめ細かく評価していくためには「加算」等の新設・細分化等がどうしても必要であり、そうたやすい道程ではなさそうです。


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