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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

デイサービスとリハビリ事業所・医療機関との連携が進まない根本に、どのような課題があるのか―社保審・介護給付費分科会(1)

2020.10.19.(月)

通所介護(デイサービス)や認知症対応型通所介護(認デイ)について、リハビリ事業所や医療機関との連携等を求める【生活機能向上連携加算】の算定がほとんど進んでいない。連携策を見つけやすくする方策などを検討するが、デイサービス事業所サイドにも「利用者の状態を適切に評価し、生活機能上の課題を見つける」などの取り組みを求めるべきではないか—。

デイサービスの【個別機能訓練加算】について、生活機能向上を目的とした場合でも、公共交通機関の利用訓練などはほとんど行われず、身体機能訓練が中心となっている実態を踏まえた要件の見直しなどが必要である—。

極めて重度かつ医療ニーズの高い利用者を抱える療養通所介護(療養デイ)について、経営を安定化させ、柔軟なサービス提供を可能とするために、例えば「1か月単位の包括報酬」を導入することなどを検討する必要がある—。

10月15日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、こういった議論が行われました。

生活機能向上連携加算、連携相手のリハ事業所・医療機関等を見つけやすくする工夫を

お伝えしているとおり、来年度(2021年度)の介護報酬改定に向け、介護給付費分科会では個別サービスの具体的な見直し内容論議に入っています。10月15日には、▼通所介護・認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション▼短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修―を議題としました。本稿では、▼通所介護・認知症対応型通所介護▼療養通所介護―に焦点を合わせ、他のサービスの議論は別稿で報じます。

【2021年度介護報酬改定に向けた、これまでの議論に関する記事】
●第1ラウンド

▽横断的事項▼地域包括ケアシステムの推進▼⾃⽴⽀援・重度化防⽌の推進▼介護⼈材の確保・介護現場の⾰新▼制度の安定性・持続可能性の確保―、後に「感染症対策・災害対策」が組み込まれる)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護▼夜間対応型訪問介護小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼認知症対応型共同生活介護▼特定施設入居者生活介護―)

▽通所系・短期入所系サービス(▼通所介護▼認知症対応型通所介護▼療養通所介護▼通所リハビリテーション短期入所生活介護▼短期入所療養介護▼福祉用具・住宅改修介護―)

▽訪問系サービス(▼訪問看護訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問リハビリテーション▼居宅療養管理指導▼居宅介護支援(ケアマネジメント)―)

▽施設サービス(▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設(老健)介護医療院・介護療養型医療施設—)

●第2ラウンド
▽横断的事項
(▼人材確保、制度の持続可能性自立支援・重度化防止地域包括ケアシステムの推進―)

▽地域密着型サービス(▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型訪問介護、看護小規模多機能型訪問介護(以下、看多機)認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護―)



【通所介護】(デイサービス)と【認知症対応型通所介護】(認デイ)について、厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長から次の6つの見直し案が提示されました。なお、注目される【ADL維持等加算】(ADLの維持・向上実績のあるデイサービス事業所を評価するアウトカム評価)の見直しについては別途議論が行われる見込みです。

(1)共用型(介護予防)認デイの管理者について、管理上の支障がない場合には、共用型(介護予防)認デイの他の職務に従事することを認めてはどうか

共用型認デイでは、現在、管理者が当該事業所の他職務を行うことが認められていない(介護給付費分科会(1)8 201015)



(2)【生活機能向上連携加算】について、ICTの活用や、連携先を見つけやすくする方策を検討してはどうか

(3)【個別機能訓練加算】について人員配置要件や機能訓練項目を見直してはどうか

(4)【入浴介助加算】について、▼現在の算定状況▼入浴介助を通じた自立支援・ADL向上に資する取り組みを行っている事業所の状況―を踏まえた見直しを行ってはどうか

(5)通所介護について、「地域密着型通所介護等で運営基準上で設けられている『地域等との連携にかかる規定』を設ける」こととしてはどうか

(6)認デイについて、中山間地域等に居住する者への【サービス提供加算】を設けてはどうか

認デイでは、中山間地域等居住者へのサービス提供加算が設けられていない(介護給付費分科会(1)9 201015)



このうち(2)の【生活機能向上連携加算】は、デイサービス利用者について、リハビリ事業者や医療機関のリハビリ専門職がデイサービス事業所を訪問し、デイサービススタッフと共同してアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成することを評価するものです。より専門的な視点での個別訓練を実施することにより、利用者の機能向上を目指すものです。

ただし、算定率は極めて低く(基本報酬の算定回数に対する加算の算定率は1%に満たない)、その理由として「コストに対し加算の単位数(月200単位、個別機能訓練加算を算定している場合には100単位)が低い」「リハビリ事業所や医療機関などの連携先を探せない」などの声が上がっています。

生活機能訓練連携加算の算定しない理由の1つに「利用者がいない」という答えがある(介護給付費分科会(1)2 201015)

生活機能向上連携加算を算定しない理由の1つに「連携先が分からない」というものがある(介護給付費分科会(1)3 201015)



そこで、算定のハードルを下げるために、眞鍋老人保健課長は▼ICTを活用した連携を可能とする(訪問介護や小規模多機能型居宅介護などと同様)▼連携先のリハビリ事業所や医療機関を見つけやすくする方策を設ける—ことを提案しています(短期入所生活介護でも同様の見直しを提案)。

この提案に対する反対の声は出ておらず、特に後者については歓迎の声が多数でています。ただし、「より根本的な見直しが必要ではないか」との指摘も出ています。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会)は「加算未算定の理由で2番目に多いのが『加算の対象者がいない』というものだが、利用者の状態をきちんと評価すれば、必ず生活機能が低下している方はおり、こうした回答をする事業所自体に問題がある」と厳しく指摘。また小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)や江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「リハビリ専門職を派遣する側のリハビリ事業所、医療機関にも何らかの報酬上のインセンティブを付与しなければ、安定的な派遣を確保できない」と異なる側面からの提案を行っています。

生活機能向上を目指す場合でも、「生活機能向上を目指す訓練」はあまりなされず

また(3)の【個別機能訓練加算】には、利用者の▼身体機能向上を目的とする加算(I):1日につき46単位▼生活機能向上を目的とする加算(II):同56単位—の2種類があります(人員配置要件や対象者要件にも差がある)。

個別機能訓練加算の概要(介護給付費分科会(1)4 201015)



両者の目的とは異なり、単位数も異なりますが、実施している機能訓練の内容を見ると両者に特段の差はなく、加算(II)を算定している場合でも「生活機能向上に向けた訓練」(例えば公共交通機関の利用練習、家の手入れ練習、仕事練習など)はほとんど実施されていないのが実際です。この点「生活機能向上訓練の前に、まずADL等の身体機能向上の訓練を十分に行っている」と見ることもできますが、算定率があまりにも低い状況について委員からも問題視する声が出ています。

個別機能訓練加算における訓練内容をみると、生活機能向上を目的とした場合でもそれにマッチした訓練の実施は極めて低調である(介護給付費分科会(1)5 201015)



こうした実態を踏まえて、人員配置要件や機能訓練項目の見直しを今後検討していくことになりますが、「加算を1本化して、生活機能訓練を実施した場合に上乗せする形にしてはどうか」(安藤伸樹委員:全国健康保険協会理事長)などの意見が出ている点に注目が集まります。

なお、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は、「人員配置要件の厳格化(より多くのスタッフ配置を求める)」を求めています。デイサービスの機能訓練指導員は多忙であり、そのために十分な訓練が実施できていない可能性があると伊藤委員は見ています。

入浴介助、「居宅での自立入浴を目指す」などの工夫を評価要件してはどうか

一方、(4)の【入浴介助加算】については、算定率が高い(基本報酬の算定回数に占める加算の算定率は6-7割程度)こと、また工夫を凝らした入浴を実施している事業所も少なくない(居宅で自立して入浴できることを目指した介助など)ことを踏まえた見直しを検討してはどうかと眞鍋老人保健課長は提案しています(通所リハビリ(デイケア)でも同様の見直しを提案)。

算定率の高い加算については、かねてから「簡素化の意味も込めて、基本報酬に組み込んではどうか」との声が出ており、デイサービスにおける【入浴介助加算】はその代表例とも言えるでしょう。

ただし、「居宅で自立して入浴できることを目指す」などの工夫を行っている事業所については「上乗せの評価」が妥当です。江澤委員は「個浴を中心に評価を行っていく」ことの重要性を強調しています。

これらを合わせて考えると、例えば、▼「見守りを含めた入浴介助を行う」ことをデイサービス事業所に義務付け、その分、基本報酬を引き上げる▼工夫を凝らした入浴介助を、新たな加算で評価する(あるいは【入浴介助加算】の要件組み換え—ことなどが想像されます。介護報酬においても、このように「特別な取り組みを行う事業所を加算で評価する」→「加算の浸透を待って、基本報酬に組み入れる」ことによって、介護サービス全体の質向上を目指すことが期待されます。

入浴に関する自立を目指した目標を個別機能訓練計画に盛り込み、工夫を凝らした入浴介助を行っているデイサービス事業所も少なくない(介護給付費分科会(1)6 201015)

通常型のデイサービスにも「地域連携活動」の実施を義務付けてはどうか

また(5)は、すでに地域密着型のデイサービスにおいて義務付けられている「地域との交流」活動を一般のデイサービスにも義務付ける内容です。例えば、▼地域の自治会・町内会や各種の催事への出席・参加支援▼地域の公園や歩道などの清掃やごみ拾い活動への参加支援—などによって、要介護高齢者が地域とのつながりを持つことで、自立・重度化防止につながると期待されます。要介護高齢者にとって「地域、社会の対し、自分自身も一定の役割を持ち、貢献している」と自覚することが極めて重要であるとかねてから報告されており、より広い実現につながることでしょう。

もっとも椎木巧委員(全国町村会副会長、山口県周防大島町長)からは「義務化は厳しすぎないか。地域との連携が自立支援・重度化防止につながるというエビデンスがあるのなら、指標をおいてアウトカム評価を導入したほうが進むのではないか」との考えを示しています。もっとも、アウトカム評価の導入には時間がかかる(適正な指標の設定、いわゆるクリームスキミング防止策の設定など)ため、義務化とアウトカム評価の双方を検討していくべきでしょう。

療養デイ、1か月単位の包括報酬を設定し、事業所の経営安定を図ってはどうか

一方、療養通所介護(療養デイ)については、眞鍋老人保健課長から次の2点の見直し案が提示されました。

(1)柔軟なサービス提供を可能とするために「包括報酬」を導入してはどうか

(2)長期間、状態眼底している利用者については、ICTを活用した状態確認を可能としてはどうか

このうち(1)は、極めて重度かつ医療ニーズの高い利用者が多い療養デイにおいて、▼状態悪化等による直前のキャンセルが多い▼多様な医療的処置・ケアを実施することが多い▼個別送迎体制強化加算が6割算定されている▼入浴介助体制強化加算が8割算定されている—などの状況を踏まえ、いくつかの加算を包括報酬に組み入れるなどの「報酬体系そのものの見直し」を検討するものです(例えば1か月当たり●単位などの報酬設定が考えられる)。

療養デイの利用者は重度者が多い(介護給付費分科会(1)7 201015)



極めて重度な利用者では、状態の変動が大きく「急に悪化したために本日の利用をキャンセルする」との連絡が事業所にまま入ります。その際、利用料の算定はできなくなるため事業所にとっては「経営の安定化」が難しくなります。これを例えば1か月の包括報酬とすれば、キャンセルによる報酬減のリスクを低減できることになり、岡島さおり委員(日本看護協会常任理事)はこの提案を歓迎しています。ただし江澤委員からは「直前のキャンセルはどのサービスでもありうる。療養デイについては看護小規模多機能型居宅介護との一体化も含めた検討を行うべき」との意見も出ています。今後の調整に注目が集まります。

療養デイでは、利用者の2割が月に1回以上キャンセルをしている(介護給付費分科会(1)8 201015)

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