「医療資源を重点的に活用する外来」=「紹介中心」ではない、個々の病院の外来機能を丁寧に見ることが必要不可欠―四病協
2021.8.26.(木)
来年度(2022年度)から「外来機能報告」制度がスタートするが、『医療資源を重点的に活用する外来を行う』ことは、『紹介中心型』であることとはイコールではない。報告データをベースに「個々の病院が地域でどういった機能を果たしている」のかを丁寧に見ていくことが必要不可欠である―。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)の総合部会が8月25日に開かれ、こうした問題意識を共有したことが、全日病の猪口雄二会長から報告されました。
同規模の類似した病院であっても、地域によって果たす機能は全く異なる
来年度(2022年度)から「外来機能報告」制度がスタートします。
「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に対し、外来診療に係るデータを都道府県へ報告することを義務付けるものです。このデータをもとに、各地域で「紹介中心型の病院」(医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関)を明確にし、外来患者の「まずかかりつけ医を受診し、そこから高機能の病院外来を紹介してもらう」という流れを強化することが狙いです(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
(A)「一般病床・療養病床を持つ医療機関」(病院・有床診療所)に外来診療に係るデータを都道府県に報告することを義務付ける【外来機能報告制度】
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(B)提出された外来診療データをもとに、各地域で紹介型病院となる「『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関」を明確化する
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(C)重点外来基幹病院へは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする(紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収を義務化)
現在、(A)(B)の詳細について、「外来機能報告等に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、外来機能報告等WG)で議論が進められています(関連記事はこちらとこちら、(C)は社会保障審議会・医療保険部会や中央社会保険医療協議会で議論される)。
この点、猪口・全日病会長は「外来機能報告制度により、各病院等の外来データを収集する」ことと、「紹介中心型の病院を明確化する」こととは、まったく次元が異なると指摘します。
前者の外来機能報告制度では、例えば「医療資源を重点的に活用する外来」として、例えば▼手術等前後の外来▼高額医療機器を使用する外来―などのデータを、また、それ以外にも「紹介率・逆紹介率」や「在宅医療の実施状況」「かかりつけ医機能の発揮状況」などのデータをNDB(National Data Base、医療レセプトと特定健診のデータベース)などから拾い上げ、それを都道府県に報告します。
その中で「医療資源を重点的に活用する外来」(▼手術等前後の外来▼高額医療機器を使用する外来―など)の実施状況を元に、地域の医療関係者などで議論し、「〇〇病院は紹介中心型」とするなどの合意形成を図っていきます(当該病院の「意向」が最優先される)。
しかし、猪口・全日病会長は「医療資源を重点的に活用する外来の実施状況」などのデータと、「当該病院が地域で果たしている機能」とは、そう容易くは連関・相関しないのではないか、と見通しています。
従前から指摘されているとおり、同じ規模の病院であっても、地域によって果たす機能は区々で、猪口・全日病会長は「何か枠組みを設けたら、それに医療実態が当てはまるというわけではない。医療資源を重点的に活用する外来をも行いながら、一方で、かかりつけ医機能を果たしているという病院もある」(例えば、医療機関が少ない地域に所在する病院など)と指摘し、「それぞれの病院が、地域でどういった機能を果たしているのかを、具体的に1つ1つ考えていかなければならない。『医療資源を重点的に活用する外来を行う』=『紹介中心型』ではない。丁寧な議論が必要である」と強く訴えました。今後の、外来機能報告等ワーキングの議論にも、さらに注目が集まります。
このほか、8月25日の四病協・総合部会では、▼新型コロナウイルス感染症対応に病院団体も共同していく(例えば、HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)を活用した、自宅・宿泊療養患者の健康観察への協力など、関連記事はこちら)▼医師働き方改革の仕組みが非常に複雑であり(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)、個々の病院が労務管理を適切に行えるように、四病協でも情報収集して対応策を考えていく―などの点が確認されたことが、猪口・全日病会長から報告されています。
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