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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

診断穿刺・検体採取料や手術料の算定がない場合、【病理組織標本作製】は原則として算定不可—支払基金

2022.2.7.(月)

診断穿刺・検体採取料または手術料の算定がない場合、【病理組織標本作製】の算定は原則として認められない―。

プロトンポンプ・インヒビター(PPI)の投与中止・終了から2週間以上経たないうちに【ヘリコバクター・ピロリ抗原定性】検査を実施しても、点数算定は、原則として認められない―。

社会保険診療報酬支払基金(支払基金)は1月31日に「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)」を公表し、レセプト審査上、こうした取り扱いを行うことを明確にしました(支払基金のサイトはこちら(今回分)こちら(医科全体))。

1型糖尿病に対しては、効果が期待できないため「グルファスト錠」を投与不可

敢えて述べるまでもありませんが、レセプトの請求・審査は▼健康保険法等▼療養担当規則▼診療報酬点数表▼基本診療料・特掲診療料の施設基準▼各種解釈通知や事務連絡―に則って行われます。限りある医療資源を「安全性・有効性の確認された医療技術」に集中させる必要があるためです。

ただし、医学的な観点から「点数表等のルール外であるが、安全性・有効性が高いと推定される」ケースもあり、これらは▼診療担当代表者(医師など)▼保険者代表者▼学識者―の3者で構成される審査委員会で「点数表や療養担当規則等の考えに合致しているか。医学的に妥当か」という観点で個別審査などが行われます。

その際、地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認めている」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)の存在が知られており、これが横行すれば「全国一律の診療報酬」という大原則に反し、さらに審査の透明性が確保できなくなってしまいます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そこで支払基金では、審査の公平・公正性・信頼性を確保するために「審査の一般的な取扱いに関する検討委員会」「疑義対応検討委員会」を設置(2019年4月)。全国統一ルールと言える「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)」を順次取りまとめ、公表しています。

今般、新たに次の9点の取り扱いが公表されました。ただし、支払基金では「療養担当規則等に照らし、診療行為の必要性などに係る医学的判断に基づいた審査が前提となり、公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に画一的・一律的に適用されるものではないことに留意する」ことを求めています。

(1)「肺動脈性肺高血圧症の傷病名がない」場合の▼混合性結合組織病▼強皮症▼慢性動脈閉塞症—に対する「ベラサスLA60μg錠」(一般名:ベラプロストナトリウム、肺動脈性肺高血圧症への効能効果が認められている)の投与は、原則として認められない

▽取り扱いの根拠
・混合性結合組織病と強皮症は共に膠原病の一種で、「肺動脈性肺高血圧症」 はこれら疾患の合併症の1つだが、学会ガイドラインによれば合併頻度は高くなく(2-10%程度)、書面審査上、混合性結合組織病、強皮症の傷病名記載のみで「肺動脈性肺高血症の併存を推測する」ことが困難なため
・慢性動脈閉塞症治療には、同成分の「ドルナー錠20μg」や「プロサイリン錠20 20μg」などが他に存在するため



(2)1型糖尿病に対する「グルファスト錠」(一般名:ミチグリニドカルシウム水和物、2型糖尿病での効能効果が認められている)の投与は、原則として認められない

▽取り扱いの根拠
・本剤の添付文書の「禁忌」 欄に「重症ケトーシス、糖尿病性昏睡または前昏睡、1型糖尿病の患者には投与しないと記載されている」こと、また作用機序から投与効果が期待できないため



(3)肝がんに対し、抗がん剤を使用せず、K615【血管塞栓術(頭部、胸腔、腹腔内血管等)】の「2 選択的動脈化学塞栓術」を算定することは原則として認められない(「3 その他のもの」に該当すると判断する)

▽取り扱いの根拠
・日本肝臓学会の2013年版肝癌診療ガイドラインでは(a)肝動脈化学療法(TAI):抗がん剤の肝動注療法であり塞栓物質は使わない(b)肝動脈塞栓療法(TAE):ゼラチンスポンジ、多孔性ゼラチン粒、アイバロンやその他の球状塞栓物質等の固形塞栓物質を用いて動脈内を塞栓する方法で、抗がん剤は使用しない(c)肝動脈化学塞栓療法(TACE):抗がん剤と固形塞栓物質を用いて行う化学塞栓療法—と分類されている。厚生労働省の通知「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(2020年3月5日付)の記載からは、K615【血管塞栓術】の「2 選択的動脈化学塞栓術」は上記(c)のTACEを指し、抗がん剤を使用しない上記(b)TAEとは区別されるものと解されるため



(4)胸郭出口症候群(肋骨・鎖骨・前斜角筋などで構成される胸郭出口の神経や血管が圧迫・牽引されることで、腕神経叢刺激症状(上肢の痛み、しびれ、だるさ、冷感)、頸部・肩甲帯のこりや疼痛、頭痛、めまい、倦怠感 などの症状をきたす症候群)に対し、L100【神経ブロック(局所麻酔剤又はボツリヌス毒素使用)】の「5 星状神経節ブロック」の算定は、原則として認められる

▽取り扱いの根拠
・日本ペインクリニック学会の「ペインクリニック治療指針改訂第6版」(2019年7月)において「胸郭出口症候群に対する星状神経節ブロック(頸部の交感神経節である星状神経節および周囲に局所麻酔薬を注入することで、星状神経節、頸部交感神経幹、交感神経の節前・節後繊維を遮断する)は、症状改善に有効である」として推奨されているため



(5)ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)投与中止または終了後2週間以上経過せずに、D012【感染症免疫学的検査】の「23 ヘリコバクター・ピロリ抗原定性」を実施したとしても、点数算定は原則として認められない

▽取り扱いの根拠
・厚労省通知「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」(2013年2月21日最終改正)で「ランソプラゾール等、ヘリコバクター・ピロリに対する静菌作 用を有するとされる薬剤が投与されている場合は『偽陰性』となるおそれがあるので、除菌前・後の感染診断は、当該静菌作用を有する薬剤投与中止または終了後2週間以上経過していること」を求め、日本ヘリコバクター学会の「H.pylori 感染の診断と治療のガイドラ イン 2016改訂版Q&A」で「現時点では、保険診療ではPPI内服中の便中抗原測定は認められていない」とされているため



(6)ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)投与中止または終了後2週間以上経過せずに、D023-2【その他の微生物学的検査】の「2 尿素呼気試験」(UBT)を実施しても、検査結果が陽性であったとしても原則として 認められない

▽取り扱いの根拠
・本検査で重要なことは「偽陰性例(真の陽性例の見落とし)発生を極力避け、ヘリコバクター・ピロリ感染を正確に診断する」点にあるが、PPI服用におけるヘリコバクター・ピロリ感染者の偽陰性率は、服用中33%、服用中止後3日目9%、同7日目3%、同14日目ゼロ%と報告されているため



(7)狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215【超音波検査(記録に要する費用を含む。)】の「3 心臓超音波検査」の「イ 経胸壁心エコー法」の算定は、原則として認められる

▽取り扱いの根拠
・心臓超音波検査は、狭心症確定後において心腔壁運動の異常、心筋虚血の有無の検出等に有用であるため



(8)大腸造影撮影(逆行性)時の「ガスコンドロップ内用液」の注腸注入は、原則として認められない

▽取り扱いの根拠
・は添付文書に示された用法以外の使用法であるため

【参考】ガスコンドロップ内用液2%の用法・用量
▼胃腸管内のガスに起因する腹部症状の改善に使用する場合:ジメチルポリシロキサンとして、通常成人1日120-240mg2を食後・食間の3回に分割経口投与する(年齢、症状により適宜増減、以下同)
▼胃内視鏡検査時における胃内有泡性粘液の除去に使用する場合:検査15-40分前にジメチルポリシロキサンとして、通常成人40-80mgを約10mLの水とともに経口投与する
▼腹部X線検査時における腸内ガスの駆除に使用する場合:検査3-4日前よりジメチルポリシロキサンとして、通常成人1日120-240mgを食後・食間の3回に分割経口投与する



(9)診断穿刺・検体採取料または手術料の算定がない場合、N000【病理組織標本作製】の算定は原則として認められない

▽取り扱いの根拠
・医科点数表の記載から判断。ただし、診断穿刺・検体採取料が算定できない場合(他院で検体摘出等)については、個々の症例により判断する



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