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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

リツキサンのループス腎炎治療での使用、ソル・メドロール静注用の川崎病急性期治療での使用などを保険診療の中で認める―厚労省

2023.3.8.(水)

「リツキサン点滴静注」(リツキシマブ(遺伝子組換え)を「既存治療で効果不十分なループス腎炎」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

「ジアグノグリーン注射用」(インドシアニングリーン)を「網脈絡膜血管の造影」に用いることを保険診療の中で認める—。

「ソル・メドロール静注用」(メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム)を重症で冠動脈障害の発生リスクがある場合の「川崎病の急性期」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

厚生労働省は3月3日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2023年3月3日)から保険適用範囲が拡大されています(厚労省サイトはこちら)。

保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に協力に対応する特別ルール

「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が従前より問題視され、日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況の改善が求められています(なお、新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されており、対策が別途検討されている、関連記事はこちら)。

そこで、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みを進めています。また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。

さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

もっとも、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了する(=効能・効果追加が認められる)までには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。

これでは「傷病と闘う患者にあまりに酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。



今般、この特別ルールにより次の3医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。

●リツキシマブ(遺伝子組換え)(販売名:リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mg)

【現在認められている効能・効果】
▼CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
▼CD20陽性の慢性リンパ性白血病
▼免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患
▼多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎
▼難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)
▼慢性特発性血小板減少性紫斑病
▼後天性血栓性血小板減少性紫斑病
▼全身性強皮症
▼難治性の尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡
▼視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防
▼腎移植、肝移植におけるABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
▼インジウム(111In)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液、およびイットリウム(90Y)イブリツモマブ チウキセタン(遺伝子組換え)注射液投与の前投与

【新たに認められる効能・効果】
▼既存治療で効果不十分なループス腎炎

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼既存治療(ステロイド、免疫抑制剤等)で十分な効果が得られない患者に対し、本剤の投与を考慮する
▼診療ガイドライン等の最新の情報を参考に、本剤の投与が適切と判断される患者に使用する
▼通常、リツキシマブ(遺伝子組換え)として1回量・体表面積1平米当たり375mgを1週間間隔で4回点滴静注する
▼原則として副腎皮質ステロイドと併用する
▼再投与時の有効性・安全性に関する情報は限られているため、本剤の再投与に関しては実施の可否を慎重に検討する



●インドシアニングリーン(販売名:ジアグノグリーン注射用25mg)

【現在認められている効能・効果】
▼網脈絡膜血管の造影

【新たに認められる効能・効果】
▼肝外胆管の造影

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼インドシアニングリーンとして2.5mgを1mLの注射用水で溶解し、静脈内投与する



●「メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム」(販売名:ソル・メドロール静注用40mg、同静注用125mg、同静注用500mg、同静注用1000mg)

【現在認められている効能・効果】
※40mg製剤の効能・効果を記載
▼急性循環不全(出血性ショック、感染性ショック)
▼腎臓移植に伴う免疫反応の抑制
▼受傷後8時間以内の急性脊髄損傷患者(運動機能障害および感覚機能障害を有する場合)における神経機能障害の改善
▼ネフローゼ症候群
▼多発性硬化症の急性増悪
▼治療抵抗性のリウマチ性疾患(全身性血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、高安動脈炎等)、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、難治性リウマチ性疾患)
▼気管支喘息
▼「再発または難治性の悪性リンパ腫」に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

【新たに認められる効能・効果】
▼川崎病の急性期(重症であり、冠動脈障害の発生の危険がある場合)

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼「静注用免疫グロブリン不応例」または「静注用免疫グロブリン不応予測例」に投与する
▼通常、メチルプレドニゾロンとして体重1kgあたり30mg(最大1000mg)を1日1回、患者の状態に応じて1-3日間点滴静注する



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