骨太方針2023に「看護職員処遇改善評価料をすべての看護職員へ拡大する」ことなど盛り込むべき—日看協
2023.6.8.(木)
近く策定される骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2023の中に、(1)すべての看護職員の処遇改善が可能となるよう必要な財政措置を講じる(2)2024年度診療報酬・介護報酬改定等において看護職員処遇改善評価料の対象を「すべての看護職員に拡大」する—ことを盛り込むべきである—。
日本看護協会は5月29日、このような内容の要望書を岸田文雄内閣総理大臣に宛てて提出しました(日看協のサイトはこちら)。
看護職員の処遇改善を看護職員全体に拡大することで、「成長と分配の好循環」が実現
岸田首相への要望事項は、(1)物価高騰に苦しむ医療機関、訪問看護事業所、介護保険施設・事業所等の経営を支援し、すべての看護職員の処遇改善が可能となるよう、必要な財政措置を講じてほしい(2)2024年度診療報酬改定において看護職員処遇改善評価料の対象を「すべての看護職員に拡大」するとともに、介護報酬、障害福祉サービス報酬改定においても同様の措置を講じてほしい—の2点です。
昨年(2022年)10月より、【看護職員処遇改善評価料】が設けられました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
2021年12月21日に当時の後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣との間で「看護職員について、賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、収入を3%(月額1万2000円)程度引き上げる診療報酬上の対応を行うことが合意されたことを受けたものです(関連記事はこちら)。
▼【救急医療管理加算】を届け出ており、救急搬送件数が年間200件以上(賃金改善を行う期間を含む年度の「前々年度」実績)である医療機関(さらに詳細な要件あり)▼「救命救急センター」、「高度救命救急センター」、「小児救命救急センター」のいずれかを設置している医療機関―が対象となり、病院ごとの「看護職員数」「延べ患者数」に応じて0-340点に設定された看護職員処遇改善評価料の算定を認めるものです。
日看協は、この看護職員処遇改善評価料の創設を高く評価していますが、算定医療機関の縛り(上記)があるため「全体の3分の2にあたる約100万人の看護職員が対象とならない」ことを指摘。
他方、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画において「すべての職場における看護師のキャリアアップに伴う処遇改善のあり方について検討する」とされ、国家公務員医療職俸給表(三)が見直されています(関連記事はこちら)。
こうした中で、医療機関が自力で処遇改善を行おうにも「電気代等のエネルギー関連費用をはじめとする諸物価高騰の直撃を受け、公定価格(診療報酬など)の下で単価増も適わず、その余力もない」のが実際です。
このため、「医療機関等への強力な経済的支援」がなければ、看護職員処遇改善の拡大は極めて困難です。
そこで日看協は、「医療機関等の経営を支え、すべての看護職員の賃金引き上げが可能となる」にように、近く策定される、いわゆる骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2023に、(1)物価高騰に苦しむ医療機関、訪問看護事業所、介護保険施設・事業所等の経営を支援し、すべての看護職員の処遇改善が可能となるよう必要な財政措置を講じる(2)2024年度診療報酬改定において看護職員処遇改善評価料の対象を「すべての看護職員に拡大」するとともに、介護報酬、障害福祉サービス報酬改定においても同様の措置を講じる—の2点を明記するよう岸田首相に要請しました。
なお日看協は、医療・福祉分野の就業者数(全就業者の14%にあたる908万人)のうち、約17%が看護職であり、すべての看護職員の賃上げを実現することで『労働者の所得向上』につながり、岸田内閣の掲げる政策目標の1つ『成長と分配の好循環』が実現する」とも付言しています。
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