マイナンバーカードによるオンライン資格確認、医師等による診察時、医療機関等窓口の受け付け時にも本人確認を!—厚労省
2023.7.18.(火)
マイナンバーカードによるオンライン資格確認が進んでいるが、加入者データ登録の誤りなどを完全にゼロにすることはできない。このたね、医師等による診察時や、医療機関等窓口の受け付け時にも本人確認を併せて行うようにしてほしい—。
厚生労働省は7月4日に事務連絡「オンライン資格確認等システムを活用した薬剤情報等の閲覧により診療等を実施する場合における確認について」を示し、こうした点に留意する医療機関等に要請しています(厚労省サイトはこちら)。
オンライン資格確認の表示画面と、患者の申告情報(氏名、生年月日等)との突合を
医療分野においても、質向上・生産性向上に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きが加速化しており、政府の医療DX推進本部は「全国の医療機関で電子カルテ情報を共有可能とする仕組みを構築し、2024年度から順次稼働していく」「標準型電子カルテについて、2030年には概ねすべて医療機関での導入を目指す」などのスケジュールを明確化しています。
医療DXは、オンライン資格確認等システムのインフラを基盤に進められることから、その本領を発揮するためには、「すべての医療機関等でDXの基盤となるオンライン資格確認等システムが導入」され、「すべての国民がマイナンバーカードの被保険者証(保険証)利用」を行うことが求められます。医療機関側の基盤は整ったが患者がその利用を求めない、逆に、国民・患者側の準備は整ったが医療機関等でそれを活用する体制が整っていないのでは、DXは進みません。
前者の「オンライン資格確認等システム」については、本年(2023年)4月以降、原則としてオンライン資格確認等システムを導入することが保険医療機関等に義務付けられています(紙レセプト対応医療機関等は例外、また一部医療機関等には経過措置を設けることが昨年末(2022年末)の中央社会保険医療協議会で決定された、関連記事はこちら)。導入状況を見ると、本年(2023年)6月18日時点で、▼カードリーダー申し込み:91.6%(義務化施設では98.3%)▼準備完了:82.6%(義務化施設では88.6%)▼運用開始:77.1%(義務化施設では82.7%)—という状況です。
後者のマイナンバーカードについては、人口比で有効申請が77.2%、交付済が73.3%となりました。
このようにマイナンバーカードの保険証利用が進んでおり、オンライン資格確認等システムを活用して「本人であること」や「患者本人の同意」が得られた場合には、過去の薬剤情報や診療情報などの閲覧・共有が可能となり、例えば処方時に「重複投薬となっていないか」「併用禁忌はないか」など確認などが可能となっています。
ただし、「他人の情報が紐づけられていた」などの事例もあり、例えば、新規の誤り(転職時や新生児など)事案発生を防ぐために▼資格取得届出において「被保険者のマイナンバー」記載義務を法令上明確化する▼やむを得ず保険者がJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)に住民基本台帳情報照会をして加入者のマイナンバーを取得する際には、必ず5情報(漢字氏名、カナ氏名、生年月日、性別、住所)により確認する▼新規登録時に全てJ-LIS照会を行う—とともに、既に登録されているデータについて▼全保険者による点検(漢字氏名や住所を確認せずに登録をしていないか)▼登録済みデータ全体の5情報に関するJ-LIS照会—によるチェックを行うなどの対応が進められています。
もっとも、こうした確認は「人の目と手」で行うため、ミスをゼロにすることは困難です。そこで厚労省は「資格確認等を行う医療機関や薬局においても、本人であることの確認を行ってほしい」と考え、次のような取り組みを進めるよう要望しています。
(1)医師・歯科医師が診察・処方する際、薬剤師が調剤する際の「患者本人確認」
→これまでも「丁寧な問診」や「お薬手帳による確認」などにより、本人であることや実際の薬剤の服用状況、併用禁忌等について確認いただいている
→マイナンバーカードによるオンライン資格確認により閲覧した薬剤情報等を診察等において活用する際も、同様の確認を行ってほしい
(2)受付窓口のおける「本人確認」
→当面の間、上記(1)のほか、「患者がマイナンバーカードを使って当該医療機関・薬局を初めて受診・利用する場合」「保険者を異動した場合」などには、受付窓口においても必要に応じて、「オンライン資格確認時に表示された資格情報」と「以下の(a)(b)情報」とに相違がないか照合確認を行ってほしい
→その際、▼「(a)(b)情報」と「オンライン資格確認時に表示された資格情報」が突合できない▼「(a)(b)情報」が得られない—場合には、患者本人に口頭で氏名、生年月日、住所(資格情報に住所が表示されない場合には保険者名称)などを確認することにより本人確認を行うことが考えられる。
(a)初診・初めての来局の患者の場合:診療申込書や問診票(薬局の場合は初回質問票)に記入された患者情報(漢字氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所)
(b)再診・再来局の患者の場合:医療機関・薬局で保有する患者情報(診療録、調剤録、 医療保険請求に関する情報等)
なお、マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応(救済措置)については、別途、通知が示されており、別稿で報じます(関連記事はこちら)。
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