能登半島大地震の被災医療機関等、看護必要度や医療区分2・3患者割合など満たさずとも、当面、従前の入院料算定を可能とする—厚労省
2024.1.10.(水)
能登半島地震で被災した患者を受け入れることで「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」を満たさなくなった場合でも、当面の間、従前の入院料算定を認める—。
また、被災地以外の医療機関が「被災地医療機関の患者の転院受け入れ」を行った場合には、「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」について、当該転院患者を計算から除外することを認める—。
また、被災地医療機関で適時・適温の食事提供が難しい場合でも、当面の間は入院時食事療養費などの算定を認める—。
厚生労働省は1月7日に事務連絡「令和6年能登半島地震の被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて(その2)」を示し、こうした考えを明らかにしました。
被災地医療機関では、適時・適温の食事提供が困難でも入院時食事療養費の取得認める
1月1日に能登半島を中心に大きな地震が発生し、大きな被害が出ています。被害にあわれた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
そうした中で厚労省は、「保険証やマイナンバーカードを持たずに避難した場合などに、特例的に保険証などを提示せずとも保険診療を受けられる」特例や、「被災者を多く受け入れ、またスタッフが被災するなどして、一時的に施設基準を満たせなくなった場合でも、従前の診療報酬取得を認める」特例、「医療機関等が被災し、レセプトを汚損等した場合には、過去の診療実績に基づく概算請求を可能とする」特例などを設けています(関連記事はこちらとこちら)。
さらに今般、診療報酬算定等にかかる新たな特例的考え方を明らかにしました。
まず「被災地に所在する医療機関」について、(1)入院料取得の特例(2)入院時食事療養の特例—についてです。
(1)は、被災地の保険医療機関が、災害等やむを得ない事情で患者を入院させたことによって「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」を満たさなくなった場合の特例です。
例えば、急性期一般1を取得するためには、「平均在院日数18日以内」「看護必要度を満たす患者割合が許可病床数200床以上病院では28%以上(必要度II)、200床未満病院では28%以上(必要度I)・25%以上(必要度II)」「在宅復帰率80%以上」などの施設基準を満たす必要があります。また療養病棟1を取得するためには「医療区分2・3の患者割合」が80%以上、療養病棟2を取得するためには同じく50%以上であることが求められます。
しかし、今般の大地震により「自宅や介護施設等に患者を退院・転院させられない」ために平均在院日数や在宅復帰率を満たせない、「被災した患者を受け入れる」ために看護必要度や医療区分を満たす患者割合が下がってしまうケースが出てきます。
こうした場合に「下位の入院料を取得してほしい」と求めることは医療機関にも、患者にも酷です(入院料が下がってしまえば、病院による被災患者受け入れに支障が出かねない)。
このため厚労省は、被災前に「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」の施設基準を満たしていた保険医療機関では、災害等やむを得ない事情により患者を入院させたことにより、▼平均在院日数▼重症度、医療・看護必要度(特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料を除く)▼在宅復帰率▼医療区分2・3の患者割合—を満たさなくなった場合でも、当面の間、直ちに施設基準の変更の届出を行う必要はないことを明らかにしました(継続して従前の入院料算定が可能となる)。
また、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料の治療室に「やむを得ず本来当該治療室への入院を要さない患者」を入院させた場合には、当該保険医療機関の入院基本料を算定した上で、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の算出から除外する取り扱いが可能となります。
例えば「急性期一般1+ICU」を持つ病院で、急性期病棟が満床となり、やむを得ずICUに「ICU入室を要さない患者」を数人入室させた場合、当該数人のICU入室患者については「急性期一般入院料1」を算定(特定集中治療室管理料の算定は不可)し、当該数人のICU入室患者はICUの看護必要度計算から除外することになります。
また(2)の入院時食事療養・入院時生活療養を取得するためには「適時の食事の提供が行われていること」「保温食器等を用いた適温の食事の提供が行われていること」などが求められます(厚労省サイトはこちら)。
しかし、医療機関が被災し、やむを得ない事情で「食事提供を適時に、かつ適温で行うことが困難となる」ことも想定されます(食材の確保困難、電源喪失などの事態も生じている)。
この点について厚労省は、▼当面の間、「従前の入院時食事療養費・入院時生活療養費を算定できる」ものとする▼ただし、適時かつ適温の食事提供が困難な場合でも、できる限り適時かつ適温の食事提供に努めてほしい—との考えを明らかにしています。
他方、「被災地以外」の医療機関では、被災地の医療機関が被害を受けたために「患者の転院受け入れ」を行うケースが多々あります。
これにより「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3」の患者割合を満たさなくなるケースも出てくるでしょう。
厚労省は、この場合にも上記と同様に次のような診療報酬上の特例を設ける考えを明らかにしています。
▽被災地以外の保険医療機関において、被災地医療機関から転院の受け入れを行った場合には、「平均在院日数」「重症度、医療・看護必要度」「在宅復帰率」「医療区分2・3の患者割合」について、当面の間、被災地から受け入れた転院患者を除いて算出することができる
▽ただしICU・HCUに、被災地医療機関から転院受け入れにより、やむを得ず当該治療室 への入院を要さない患者を入院させた場合には、当該保険医療機関の入院基本料を算定した上で、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の算出から除外する
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