日本外科学会認定の「外科専門医」などの広告は2028年度で終了、「機構専門医」への移行を急げ—医療機能情報提供制度等分科会(1)
2024.3.26.(火)
専門医資格の広告について、次のように考えることとする—。
【日本専門医機構認定の専門医】
▽基本領域:広告可能(すでに運用中、関連記事はこちら
▽サブスペシャリティ領域
▼基本領域と連動研修が行われるもの:基本領域と同じく広告可能とする
▼それ以外のもの:「新たな判断基準」を設定し、それに照らして総合的に判断する
【学会認定の専門医】
▽日本専門医機構の基本領域と重複するもの:現在「広告可能」とする経過措置が設けられているが、2028年度末で終了する
▽それ以外のもの:「新たな判断基準」を設定し、それに照らして総合的に判断するが、今後「日本専門医機構認定専門医と類似のもの」が現れる可能性もあり、そこはさらなる論点となる
3月25日に開催された「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」(以下、分科会)でこうした方針が決定されました。今後、所要の手続きを経て、近く厚生労働省告示(医療法第六条の五第一項及び第六条の七第一項の規定に基づく医業、歯科医業若しくは 助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項)改正などが行われます。
なお、同日には▼医療機能情報提供制度の全国統一システムをこの4月(2024年4月)から運用開始する▼「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」をバージョンアップする(第4版)—ことも議題となりました。これらは別稿で報じます。
「国民への分かりやすさ」と「医療現場への影響」とを勘案し、広告可能事項を見直し
医療に関しては「広告できる事項」が厳格に定められており、「広告して良い」と認められている事項(広告可能事項)以外の広告をすることは認められません(ただしホームページについては、一定の要件を満たすことで「広告して良い」と認められた事項以外の項目を広告することも可能、【限定解除】、関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
医療に関しては「医療者」と「患者・国民」との間で知識の乖離が著しく(医療者が「当たり前のこと、書かなくとも分かること」と思う事項が、一般国民には「全く知らなかった」という事態が少なからず生じうる)、制限を設けなければ、患者・国民が大きく誤解したまま医療を受け、結果、患者・国民の健康・生命に取り返しのつかない被害が出かねないためです。
具体的には、厚生労働省告示(医療法第六条の五第一項及び第六条の七第一項の規定に基づく医業、歯科医業若しくは 助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項)(以下、本稿では「広告可能告示」と呼ぶ)の中で、広告できる事項を「厳格に限定」しています。
このうち「専門医資格」に関しては、これまでに「日本専門医機構の認定する19の基本領域の専門医資格」などが広告可能とされています(関連記事はこちら)。ただし「サブスペシャリティ領域」などについては別に検討することとされており、前回の分科会では次のような考え方が厚生労働省から示されました(関連記事はこちら)。
【日本専門医機構の認定するサブスペ領域】(2024年1月時点で27領域)
(1)「基本領域との連動研修」が行われる15領域(消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、血液内科、内分泌代謝・糖尿病内科、脳神経内科、腎臓内科、膠原病・リウマチ内科、消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺外科、放射線診断、放射線治療)
→基本19領域と同様に広告可能とする
▽ただし、これら15領域の認定・更新基準等が確定していないことから、日本専門医機構における十分な整理を経て、「研修制度整備基準」「認定・更新基準」「専門医名称」の整備が整ったものか順次、個別に「広告可能事項」に含めるかどうかを審議・認定していく
(2)他のサブスペ領域
→新たに定める「判断基準」(後掲)を満たす場合に広告可能事項とする
【学会認定の専門医資格】(現在56領域)
(3)「日本専門医機構の19基本領域」に対応する学会認定専門医(16学会16専門医、下表の黄色部分)
→機構認定専門医への移行状況を踏まえて近く経過措置を終了する
(現在は機構認定専門医に移行していない場合に、学会認定専門医資格を広告できるが、経過措置終了後は、機構認定専門医に移行していなければ専門医資格を広告できなくなる)
(4)「上記(1)(基本領域と同様に取り扱うサブスペシャルティ15領域」に対応する学会認定専門医
→当該サブスペシャルティ領域の機構認定専門医が広告可能として認められた後に引き続き経過措置の在り方を検討する(当面、広告可)
(5)その他の学会認定専門医
→「新たな判断基準」の検討状況を踏まえ、経過措置期間や、既に広告可能な資格を有している医師の取り扱いなどを引き続き検討する(当面、広告可)
こうした厚労省案に対しては、「サブスペ領域専門医資格の広告は、『まずかかりつけ医を受診し、そこから必要に応じて専門医や大病院を紹介してもらう』という流れに水を差さないか」、「学会認定専門医の広告(3)はいつまで可能とするのか、医療現場に混乱が生じないようにすべき」などの意見が出されていました。
まず、前者の意見に対し、厚労省は次のような整理を行いました。
▽サブスペ領域専門医が「大病院に集中している」とは言えず、診療所勤務も多い。ゆえに「サブスペ領域の専門医情報」が直ちに大病院受診を促すとは言えず、新たに定める「判断基準」の中で「専門医資格の広告が大病院志向を促すことにつながらないか」を個々に総合的に判断することとしてはどうか
新たに定める「判断基準」は、(1)国民へのわかりやすさ(2)質の担保(3)社会的・学術的意義—の3つの視点で、専門医資格広告を是とするか非とするかを判断するものです。このうち(1)の「国民へのわかりやすさ」という視点の中で、「サブスペ領域の広告を可能とすることで国民・患者の医療機関の選択や受療行動に与える影響の観点も含め、総合的に判断する」考えを厚労省は明らかにしています。
この考え方に異論・反論は出ていませんが、「国民に『まずかかりつけ医を受診し、そこから専門医などを紹介してもらう』という流れを理解してもらう。あわせて『サブスペ領域の広告を慎重に広げていく』という2つをセットで進めていくことが重要だ。国民・患者に情報が伝わらないことも、かかりつけ医にすべてをお願いすることも好ましくない。新たな判断基準については『国民の目線』を重視し、あまり細かな領域を広告可能とすることは好ましくない」(黒瀨巌構成員:日本医師会常任理事、幸野庄司構成員:健康保険組合連合会参与)、「大病院の直接受診では特別料金がかかることが国民に浸透してきており、サブスペ広告が受療行動に悪影響を及ぼすとは考えにくい」(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)、「国民が医療機関選択をする際に必要となる情報と、かかりつけ医が患者紹介をする際の医療機関選択に必要となる情報とは異なる。前者は基本領域+連動研修サブスぺ領域程度で十分ではないか。国民への分かりやすさが重要である」(森隆夫構成員:日本精神科病院協会副会長)、「広告可能な専門医資格が乱立しては本末転倒である。広告可能な専門医資格は抑制的に考えるべき」(桐野髙明構成員:東京大学名誉教授)などの注文・提案がなされています。今後、新たな判断基準を策定する際、個々のサブスペ資格などを審査する際に重視する必要があります。
また、後者の意見に対しては次のような整理が行われ、了承されています。
▽基本領域19領域に対応する学会認定専門医(16学会16専門医)について、「2028年度末」を目途に経過措置を終了し、以降は広告不可とする
▽ただし、2028年度末までに学会認定専門医を取得・更新した医師は、「更新による認定期間の開始日から起算して5年間」に限って広告可とする
▽新たな学会認定専門医を広告可能とする場合も、基本領域19領域と同一の専門性があるものについては、広告可能としない
つまり、現在、下表16の「学会認定専門医」を広告している場合、それは原則として「2028年度末まで」しか認められず、早期に「日本専門医機構認定の専門医」に移行することが求められます(さもなくば、近い将来「専門医である」旨を広告できなくなる)。
このように上記(1)から(5)の厚労省提案がより明確化され、了承されました。改めて簡単に整理すると次のようになります。
【日本専門医機構認定の専門医】
▽基本領域:広告可能(すでに運用中、関連記事はこちら
▽サブスペシャリティ領域
▼基本領域と連動研修が行われるもの:基本領域と同じく広告可能とする
▼それ以外のもの:「新たな判断基準」を設定し、それに照らして総合的に判断する
【学会認定の専門医】
▽日本専門医機構の基本領域と重複するもの:現在「広告可能」とする経過措置が設けられているが、2028年度末で終了する
▽それ以外のもの:「新たな判断基準」を設定し、それに照らして総合的に判断するが、今後「日本専門医機構認定専門医と類似のもの」が現れる可能性もあり、そこはさらなる論点となる
今後、所要の手続きを経て、近く厚生労働省告示(医療法第六条の五第一項及び第六条の七第一項の規定に基づく医業、歯科医業若しくは 助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項)改正などが行われます(まずは(2)のとおり連動研修サブスぺ領域を広告可能事項に追加)。
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