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健保組合全体の後発品割合は調剤ベースで2024年4月に「87.9%」へ上昇したが、依然として地域格差は大きい—健保連

2024.11.18.(月)

本年(2024年)4月時点で、健康保険組合における後発医薬品の使用割合(調剤ベース)は87.9%に上昇した(本年(2024年)1月時点に比べて1.89ポイント増)—。

もっとも、地域格差が依然として大きい点に留意が必要である—。

健康保険組合連合会が11月15日に公表した「後発医薬品の普及状況」(数量ベース)【令和6年4月診療分】から、こういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

後発品割合の伸び悩みの背景には「長引く後発品の供給不安」があると考えられ、「医薬品の安定供給」に向けた関係者のさらなる努力が切望されています。

医科・歯科・DPCなど含めれば後発品割合は低くなるため、課題はさらに深刻

医療保険財政は厳しさを増しており、今後、さらに状況は深刻になっていきます。

背景の1つとして、まず「医療技術の高度化」があげられます。医療技術の高度化は、述べるまでもなく我々患者・国民に大きな恩恵をもたらしますが、一方で医療費の高騰を招きます。脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)などの超高額薬剤の保険適用が相次ぎ、さらにキムリアに類似したやはり超高額な血液がん治療薬も次々に登場してきています。2022年度には月額1000万円を超える超高額レセプトが過去最高の1792件となりました。また、昨年(2023年)12月には新たな認知症治療薬「レケンビ」が保険適用され、間もなく新たな認知症治療薬「ケサンラ」が保険適用されます。

同時に、高齢化の進展も医療費高騰に大きく関係します。2022年度から人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。後期高齢者は若い世代に比べて、傷病の罹患率が高く、かつ1治療当たりの日数が非常に長いため、高齢者の増加は「医療費の増加」を招いてしまいます。

このように医療費が高騰していく一方で、支え手となる現役世代人口は急速に減少していきます(2025年度から2040年度にかけて急速に減少する)。

少なくなる一方の支え手で、増加する一方の医療費を支えなければならず、医療保険の制度基盤が極めて脆弱になってきているのです。

こうした中では、「医療費の伸びを、我々国民が負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ための取り組みが極めて重要です。政府は、▼平均在院日数の短縮による入院医療費の適正化(入院基本料や特定入院料、DPCの包括点数は「1日当たり」の支払い方式であり、在院日数の短縮が入院医療費の縮減に効果的である)▼後発医薬品(ジェネリック医薬品、後発品)の使用促進による薬剤費の圧縮(関連記事はこちらこちら)▼病院の機能分化推進と連携の強化▼地域差(ベッド数、外来受療率、平均在院日数など)の是正▼保健事業の充実による健康寿命の延伸―など、さまざまな角度から医療費適正化に向けて取り組んでいます。



主に大企業の会社員とその家族が加入する健康保険組合全体でも後発品割合の向上に向けて取り組んでおり、このほど、本年(2024年)4月時点では「87.9%」であることが明らかにされました(調剤分)。本年(2024年)1月時点に比べて1.8ポイントアップしています。

健保組合後発品割合(24.04)



この数字だけを見ると「調剤ベースでは80%を安定してクリアできている」ことが分かりますが、次のような2つの課題もあります。

(1)調剤ベースの健保組合後発品割合は徐々に上昇しているものの、「踊り場状態」になったり、「減少モードに入る」こともたびたびある

(2)都道府県別にみると依然として大きなバラつきがある(ただし、最も低い徳島県(83.7%、本年(2024年)1月時点から1.1ポイントアップ)でも80%台をクリアできている点に留意)

都道府県別の健保組合後発品割合(24.04)



なお、これらの数字は「調剤」ベースであり、調剤・医科・DPC・歯科分の合計でみると「後発品割合は低くなる」ことから、(1)(2)の課題はより深刻に捉える必要があります。



なお、後発品シェア拡大が停滞している背景には「後発品の供給不安」があります。後発品をめぐっては「一部メーカーによる不祥事」(関連記事はこちらこちら)などに端を発し、供給停止・出荷調整が長引いています(A医薬品が出荷停止になると、代替薬であるA1医薬品のニーズが高まり品薄になる、そして次なる代替品A2医薬品のニーズが高まり・・・と連鎖していく、関連記事はこちら)。

状況は徐々に改善しているように見えますが、医療機関・薬局の努力では解決できない事情により「後発品割合を維持・向上することが困難」な状況が生じています。厚労省は診療報酬上の手当て(供給不安になっている品目を加算算定のベースから除外することを認めるなど、関連記事はこちら)を行っていますが、「供給不安そのものを解消するための取り組み」が切望されています。さらに「2025年度の薬価中間年改定を行うべきか」という議論にもつながってきます。

また(2)の都道府県間のバラつきは、協会けんぽ(主に中小企業の会社員とその家族が加入)でも同様で、例えば▼後発品割合が進んでいる地域(沖縄県など)の取り組み内容を参考にする▼医療機関や薬局での情報提供、働きかけを強化する―などの対応を強化していくことがさらに重要となってきています(関連記事はこちら)。

あわせて、上述のように「医療保険の安定的な運営確保」という重要テーマが根底にあることへの理解を関係者全員が深めることが必要不可欠です。

なお、社会保障審議会・医療保険部会では、次のような新たな「後発品使用推進目標」が固められています(関連記事はこちらこちら)。
【主目標】
▽数量シェアを2029年度末までに全ての都道府県で80%以上とする(継続)—

【副次目標】
▽2029年度末までに、「バイオシミラーが80%以上を占める成分数」が全体の成分数の60%以上とする—
▽後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上とする—



また、2024年度診療報酬改定論議の中で後発品でなく、あえて長期収載品を使用する場合には患者負担を重くする後発品使用促進に向けた診療報酬上のさらなる手当て(本年(2024年)10月からスタート)も行われました。その効果に注目が集まります。



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