電源・水の確保が不十分な災害拠点病院、緊急点検し体制整備を―救急・災害医療提供体制検討会
2019.1.7.(月)
内閣官房の調査で、一部「大規模災害時に3日分の電源・水を確保する体制」が整備されていない災害拠点病院等があることが判明した。都道府県において災害拠点病院の再点検を行うとともに、「飲料水以外の水」を3日分確保する体制の整備を指定要件に盛り込む―。
12月20日に開催された「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった方針が固められました。
2018年度補正予算・2019年度予算で「災害拠点病院等の電源・水確保」費用を補助
昨年(2018年)には大規模な自然災害が相次ぎ、災害拠点病院等における体制整備の重要性が再確認されました。とくに、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震によって北海道全域が停電する事態が生じ、「電源」「水」の確保の重要性が改めて認識されています。
そうした中で内閣官房は、災害時において医療提供の重要な拠点となる▼災害拠点病院(736病院)▼救命救急センター(7病院)▼周産期母子医療センター(79病院)―について「自家発電設備等が整い、燃料等の備蓄がなされているか」「給水設備が整っているか(受水槽や地下水利用をしているか)」を緊急調査。その結果、自家発電設備等については144病院(災害拠点病院114、救命救急センター1、周産期母子医療センター29)、受水槽の水確保については207病院(災害拠点病院177、救命救急センター1、周産期母子医療センター26)で問題のあることが分かりました。
こうした状況を改善するために、厚生労働省では補助を行う方針を固めると同時に、次のように「災害拠点病院の要件見直し」などを行ってはどうかと検討会に提示し、了承されました。
(1)各都道府県において、災害拠点病院の状況(指定要件に合致しているか)を再確認し、要件を満たさない場合には、対応方針を聴取する
(2)災害拠点病院において、「飲料水の備蓄」以外にも、例えば「病院の診療機能を3日程度維持できる量」の水の確保(受水槽の保有や、地下水(井戸水)利用確保など)を要件化する
(3)救命救急センター、周産期母子医療センターについても、▼自家発電機(燃料備蓄を含む)▼受水槽(飲料水備蓄を含む)の保有・地下水(井戸水)利用―を求める規定を検討する
現在、災害拠点病院については、▼通常時の6割程度の発電容量のある自家発電機等を保有し、3日分程度の燃料を確保する▼適切な容量の受水槽の保有、停電時にも使用可能な井戸設備の整備、優先的な給水協定の締結等により、災害時の診療に必要な水を確保する▼食料、飲料水、医薬品等について、流通を通じて適切に供給されるまでに必要な「3日分程度」を備蓄する―ことが求められています(指定要件)。
しかし、内閣官房の調査でこれら要件を満たしていない災害拠点病院が存在する可能性が明らかとなり(1)のように再点検を「今年度内」(つまり2019年3月末まで)を目途に都道府県に求めることになりました。なぜ要件を満たさない災害拠点病院が存在するのか、は明らかになっておらず、調査結果を待つ必要があります。
また(2)は、救援物資(水や燃料など)の到着までに3日程度かかることを踏まえた、新たな要件(受水槽等に3日分程度の水(飲料水以外)確保)を設けるものです。厚労省では今年度中(つまり2019年3月末まで)に新指定要件を踏まえた医政局長通知を発出する考えです。
検討会では、こうした体制の確保にとどまらず、また災害拠点病院等以外にも、少なくとも入院医療を提供する医療機関においてはBCP(事業継続計画:Business continuity planning)を策定しておくべきとの指摘が山本光昭構成員(兵庫県健康福祉部長)らからなされました。自然災害はもちろん、新型インフルエンザなどの感染症が蔓延し「スタッフの確保」が困難になるケースなども想定したBCP策定が急がれ、さらに実効性の確保に向けた国や自治体による支援も必要となります。
なお、災害拠点病院等の耐震整備、給水設備強化、非常用自家発電設備整備等の費用を補助するために、2018年度の第2次補正予算では43億円、2019年度予算では75億4500万円が計上されています。再点検の結果、電源や水の確保等体制が不十分であることが判明した災害拠点病院等では、こうした予算を活用して体制整備を緊急に進める必要があります(関連記事はこちら)。
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