2017年2月までに546件の医療事故が報告、過半数では院内調査が完了済―日本医療安全調査機構
2017.3.17.(金)
今年(2017年)2月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は29件。一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートしてから、累計で546件の医療事故が報告され、このうち半数超の52.9%(289件)で院内調査が完了。また遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で27件となった―。
こうした状況を、日本で唯一のセンターである医療安全調査機構が先ごろ公表しました(機構のサイトはこちら)(前月の状況はこちら)。
遺族からセンターへの相談には対象外事例も、国民への制度周知が必要
一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートしました。責任追及ではなく「医療事故の再発防止」を目指すことを目的とした仕組みで、管理者(院長など)が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のすべてをセンターに報告することが医療機関管理者に義務付けられています。事故が発生した医療機関ではその原因を調査し、調査結果をセンターに報告、遺族に説明。センターでは事故事例を集積していく中で具体的な再発防止策などを練っていきます。
我が国唯一のセンターである医療安全調査機構では、毎月、医療事故の報告状況を公表しています。今年(2017年)2月には、医療事故が新たに29件報告され、制度発足からの累計報告件数は546件となりました。
2月の報告は、病院からが26件、診療所からが3件で、診療科別に見ると▼整形外科5件▼心臓血管外科3件▼消化器科2件▼循環器内科2件▼脳神経外科2件―などとなっています。
医療事故が発生した場合、医療現場では「患者が死亡してしまったが、これはセンターに報告すべき医療事故に該当するのか?」「センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問が生じることでしょう。また遺族側に「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽しているのではないか?」といった疑義が生じるケースもあります。そのためセンターでは、医療機関や遺族からの相談に対応しており、今年(2017年)2月には、新たに167件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は2639件となっています。内訳を見ると、医療機関からが90件、遺族などからが61件、その他・不明が16件です。
医療機関からの相談内容は、「医療事故報告の手続き」51件、「院内調査」32件が多く、「医療事故に該当するか否かの判断」は16件にとどまりました。昨年(2016年)6月に▼医療事故該当性の判断などを標準化するために、支援団体等連絡協議会を設置する▼センターが医療機関に対して、「遺族などからの相談内容」を伝達可能なことを明確化する―といった運用改善が行われており、この効果が出ていると考えられます(関連記事はこちらとこちら)。
一方、遺族などからの相談の内容を見ると、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が圧倒的多数を占めており、今年(2017年)2月分は34件(55.6%)となりました。ただし、この中には「制度開始前の事例」「生存事例」など報告対象外のものも含まれており、さらなる国民に対する制度の周知を行う必要があります。
医療事故調査制度は再発防止を目的としていることから、「医療事故が発生した医療機関が、院内で原因究明に向けた調査を行う」ことがもっとも重要です。今年(2017年)2月に新たに院内調査が完了した事例は31件で、制度発足からの累計では289件となりました。報告された全546件のうち52.9%で院内調査が完了していることになり、各医療機関における調査のスピードは制度発足からさらに向上しています。
なお、遺族の中には院内調査結果に満足がいかない、あるいは院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)と考える人も出てくることでしょう。また診療所など小規模の医療機関では、院内調査にスタッフを避けないところも少なくないでしょう(医師会や病院団体などの支援団体がサポートを行う仕組みもある)。こうしたケースに備え、遺族や医療機関がセンターに調査を依頼できる仕組みも用意されており、今年(2017年)2月にセンターへなされた調査依頼は6件ありました。遺族から4件、医療機関から2件という内訳で、制度発足からの累計では27件(遺族から19件、医療機関から8件)となっています。このうち22件が「院内調査結果報告書の検証中」(適切に院内調査が行われたかのチェック)、2件が「報告書の準備作業中」、3件が「院内調査の結果待ち」という状況です。
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