2017年4月までに601件の医療事故が報告、約6割で院内調査が完了―日本医療安全調査機構
2017.5.16.(火)
今年(2017年)4月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は33件。一昨年(2015年)10月に医療事故調査制度がスタートしてから、累計で601件の医療事故が報告され、このうち約6割(58.9%・354件)で院内調査が完了。また遺族や医療機関からのセンターへの調査依頼は累計で31件となった―。
こうした状況を、日本で唯一のセンターである医療安全調査機構が11日に公表しました(機構のサイトはこちら)。
医療事故再発防止が制度の目的、国民へのさらなる周知が必要
医療事故調査制度は、事故の責任追及(犯人探し)ではなく「再発防止」を目指す仕組みで、一昨年(2015年)10月にスタートしました。医療機関の管理者(院長など)が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」が発生した場合、管理者はまず事故発生の旨をセンターに報告。その上で、医療機関ではその原因を調査し(院内調査)、調査結果をセンターに報告するとともに、遺族に説明します。センターでは事故事例を集積していく中で具体的な再発防止策などを練っていきます。すでに今年(2017年)3月には「中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―」を公表しています。
我が国唯一のセンターである医療安全調査機構では、毎月、医療事故の報告状況を公表しています。今年(2017年)4月には、医療事故が新たに33件報告され、制度発足からの累計報告件数は601件となりました。
4月の報告は、病院からが30件、診療所からが3件で、診療科別に見ると▼外科8件▼消化器科3件▼整形外科3件▼脳神経外科3件―などとなっています。
医療事故が発生した場合、医療現場では「患者が死亡してしまったが、これはセンターに報告すべき医療事故に該当するのか?」「センターへの報告はどのように行えばよいのか?」といった疑問も生じると思われます。また遺族側が「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。隠蔽しているのではないか?」といった疑問を抱くケースもあります。そのためセンターでは、医療機関や遺族からの相談に対応しており、今年(2017年)4月には、新たに161件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計は2968件となっています。内訳を見ると、医療機関からが84件、遺族などからが60件、その他・不明が17件です。
医療機関からの相談内容は、「医療事故報告の手続き」43件が圧倒的で、「医療事故に該当するか否かの判断」は18件にとどまりました。制度の周知や運用の改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」設置など)の効果が出ていると言えるでしょう(関連記事はこちらとこちら)。
一方、遺族などからの相談の内容を見ると、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が圧倒的多数を占めており、今年(2017年)4月分は42件(70%)となりました。もちろん、この中には「制度開始前の事例」「生存事例」など報告対象外のものも含まれており、国民に対する制度の周知の余地はまだまだ大きいと言えます。
医療事故調査制度は再発防止を目的としていることから、「医療事故が発生した医療機関が、院内で原因究明に向けた調査を行う」ことが基本となります。今年(2017年)4月に新たに院内調査が完了した事例は24件で、制度発足からの累計では354件となりました。報告された全601件のうち58.9%で院内調査が完了しており、各医療機関における調査のスピードは制度発足から向上を続けています。
なお、遺族の中には院内調査結果に満足がいかない、あるいは院内調査が遅すぎる(何かを隠すために時間稼ぎをしているのではないか)と考える人も出てきかねません。また診療所など小規模の医療機関では、自力での院内調査が困難なところも少なくありません(医師会や病院団体などの支援団体がサポートを行う仕組みあり)。こうしたケースに備え、遺族や医療機関がセンターに調査を依頼できる仕組みも用意されており、今年(2017年)4月にセンターへなされた調査依頼は3件ありました。すべて遺族からの依頼です。制度発足からの累計では31件(遺族から22件、医療機関から9件)となっています。このうち28件が「院内調査結果報告書の検証中」(適切な院内調査が行われたかの確認)、3件が「院内調査の結果待ち」という状況です。
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