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グループホームの「1ユニット1人夜勤」体制、安全確保のため「現状維持」求める声多数—社保審・介護給付費分科会(3)

2020.10.13.(火)

認知症高齢者共同生活介護(グループホーム)について、緊急ショートの受け入れを促進するために人数要件・日数要件を緩和してはどうか―。

一方、夜勤体制確保が難しい状況を踏まえて、現在の「1ユニット1人夜勤」体制を「2ユニット1人夜勤」体制に緩和していくべきだろうか—。

特定施設については、入居継続支援加算の「喀痰吸引が必要な入居者が15%以上」という要件について、現場の実態を踏まえて「10%以上」などに緩和してはどうか—。

10月9日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった議論も行われました(関連記事はこちらこちら)。

グループホームでの緊急ショート受け入れ促進に向け、日数・人数要件を緩和へ

Gem Medでお伝えしているとおり、10月9日の介護給付費分科会には、2021年度の次期介護報酬改定に向けて、地域密着型サービスに関する具体的な見直し方向案が示されました。【定期巡回・随時対応型訪問介護看護】【夜間対応型訪問介護】【小規模多機能型居宅介護】【看護小規模多機能型居宅介護】についてはお伝え済です。

本稿では、【認知症対応型共同生活介護】(グループホーム)と【特定施設入居者生活介護】等に焦点を合わせて見ます。厚労省老健局認知症施策・地域介護推進課の笹子宗一郎課長からは、次のような見直し方向案が提示されています(再掲)。繰り返しになりますが、今後の介護給付費分科会論議や予算編成(改定財源の決定)などを待つ必要があり、「決定してない」点に留意が必要です。

【認知症対応型共同生活介護】
(1)緊急ショートについて、▼日数要件を「7日を限度」から「7日以内を原則として、家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日を限度」に見直す▼人数要件を「1事業所1名まで」から「1ユニット1名まで」に見直す▼「個室」要件の柔軟化を検討する—こととしてはどうか

(2)【医療連携体制加算】のIIとIIIにおける「医療的ケアが必要な者の受け入れ実績要件」について、他の医療的ケアにも拡大、「他事業所の看護職やリハビリテーション専門職」との活用を検討してはどうか

(3)ユニット数の弾力化(現在は2ユニットまで)と報酬区分の細分化、サテライト事業所の創設を検討してはどうか

(4)夜勤職員体制について「1ユニット1人夜勤」の緩和をどのように考えていくか

(5)計画策定担当者(介護支援専門員)について「最大3ユニット分まで兼務可能」としてはどうか(現在は1ユニットのみ)

(6)管理者交代時の「研修修了」要件について、猶予措置を設けてはどうか

(7)「運営推進会議」と「外部評価」について、事業所がいずれかを選択して評価を受ける形としてはどうか(現在、グループホームについてのみ両方の評価が必要となっている)

【特定施設入居者生活介護】
(1)【看取り介護加算】等の在り方、看護体制を充実した事業所の評価を検討してはどうか

(2)機能訓練を充実した事業所の評価を検討してはどうか

(3)【入居継続支援加算】における「たんの吸引等を必要とする割合が利用者の15%以上」という要件を緩和してはどうか



まず【認知症対応型共同生活介護】(以下、グループホーム)の(1)は、緊急ショートの受け入れ要件を小規模多機能型居宅介護等に合わせてはどうか、という提案です。

在宅生活を行う要介護者において、一時的に状態が悪化した場合、あるいは家族の休息が必要な場合(レスパイト)などに、一時的な入所を可能とする「緊急ショート」は、在宅限界を高めるために極めて重要なサービスです。認知症高齢者については、その対応に精通したグループホームでの緊急ショート受け入れに期待が集まります。

しかし、受け入れ要件を見てみると、同じ地域密着型サービスであるにもかかわらず、グループホームと小規模多機能型居宅介護等とでは差異があり、「グループホームのほうが要件が厳しい」(つまり受け入れにくい)状況となっています。

グループホームにおける緊急ショートの受け入れ要件は他に比べて厳しい(介護給付費分科会(3)1 201009)



そこで、グループホームにおける緊急ショート受け入れ要件を、次のように見直す方向が提示されているのです。

▽日数要件
現在の「7日を限度」から、「7日以内を原則として、家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日を限度」に見直す

▽人数要件
現在の「1事業所1名まで」から、「1ユニット1名まで」に見直す

▽「個室」要件
パーティション等によりプライバシーが確保される場合には「個室以外」も認めることを検討してはどうか

この点「日数要件」「人数要件」の緩和は歓迎する声が多数出ていますが、「個室要件」について江澤和彦委員(日本医師会常任理事)から「個室に準ずるスペースの例示を見ると『居間の一角』などとされているが、そこで寝起きしたいと考える人はいないであろう。相応しい場を検討すべき」との強い要望が出されています。個室要件の緩和については再考の余地がありそうです。

グループホームの入居者へ外部からの訪問看護提供を認めるべきか

またグループホームの(2)は、医療ニーズの高い認知症高齢者に対し、より適切な医療的ケアをどう実施すべきかという論点です。この点、事業所に看護師等の医療スタッフを確保することがまず考えられますが、小規模なグループホームにそれを期待することは困難なのが実際です。

そこで厚労省は外部スタッフ(訪問看護ステーションの看護師など)と連携をとる(グループホームへの訪問)ことをどう考えるべきか、という論点を提示しているのです。

この点、明確な反対意見は出ておらず、江澤委員や齋藤訓子参考人(日本看護協会副会長、岡島さおり委員(日本看護協会常任理事)の代理出席)らは「限りある地域の専門人材を有効活用するために外部からの訪問看護等を認める」ことを強く求めています。ただし、グループホームについては区分支給限度基準額の適用外となっており、他のサービス利用者との公平性をどう確保するかなどの詳細を今後、詰めていく必要があります。



なお、併せて【医療連携体制加算】のIIとIIIの取得要件拡大も検討されます。医療連携体制加算は、医療ニーズの高い入居者を積極的に受け入れ、かつ医療専門人材を配置している事業所について経済的な支援を行うものです。2018年度の前回改定で新設された加算II(1日につき49単位)と加算III(同59単位)については、現在「▼喀痰吸引を実施している状態▼経鼻胃管・胃瘻等の経腸栄養が行われている状態―のいずれかの入居者が直近12か月に1人以上」という要件が設けられていますが、医療ニーズはより多様である状況を踏まえて、▼喀痰吸引▼経管栄養—以外の医療的ケア(例えば透析やストーマ、インスリン注射など、が想定されうる)が必要な者も受け入れ要件に加えられる見込みです。ただし、単純に「他の医療的ケアが加わる」のか「他の医療的ケアを加えるとともに、人数要件(現在は年間1人以上)を厳しくする」のか、などは今後の検討を待つ必要があります。

グループホームでは喀痰吸引・経管栄養以外にも様々な医療的ケアを実施している(介護給付費分科会(3)2 201009)

グループホームのユニット数制限を緩和し、サテライト設置を可能へ

またグループホームの(3)は、「事業所規模が大きくなるにつれ、グループホームの経営が安定する」こと、「現在でも待機者が想定程度おり、グループホームの整備が期待されている」ことなどを踏まえ、次のような見直し行ってはどうかと提案されたものです。

▽ユニット数について、現在の「2ユニットまで」の規定を弾力化し、報酬区分も細分化する(3ユニット以上の創設を認め、報酬設定も行う)

▽サテライト型事業所の創設を可能とする(基準・報酬は小規模多機能型居宅介護を参考にする)

この点、明確に反対する意見こそ出ていませんが、小泉立志委員(全国老人福祉施設協議会理事)や江澤委員は「複雑になるだけではないか、小規模なグループホームに、より小規模なサテライトを設ければ非効率な運営にならざるを得ないのではないか」と心配する声が上がっています。もっとも、サテライト設置を義務付けるものではなく、事業所の判断でサテライトを設置することを可能とする見直しであり、「非効率になるので設置しない」と事業所サイドが判断することももちろん自由です。

小規模多機能型居宅介護等におけるサテライト事業所基準と報酬の概要(介護給付費分科会(3)3 201009)

グループホームの夜勤体制「1ユニット1人夜勤」を緩和すべきか

一方、グループホームの(4)は、夜勤体制を緩和すべきか否かという論点です。従前、グループホームの夜勤体制は「2ユニットにつき1人夜勤」が可能とされていましたが、事業者サイドの「安全性を担保する必要がある」との強い要望を受けて「1ユニットにつき1人夜勤」とされました(2012年度改定)。

グループホームの夜勤体制の変遷、2012年度改定で「1ユニット1人夜勤」体制が必須となった(介護給付費分科会(3)4 201009)



その後、▼夜勤人材の確保の難しさ▼スプリンクラー設置の義務化―などの状況を踏まえ、今般「夜勤体制を緩和すべきか否か」が論点として再浮上したものです。

介護給付費分科会では、「1ユニット1人夜勤体制を堅持すべき」との声が多数を占めています。江澤委員や齋藤参考人は「現在の1人夜勤でも担当者には相当な負担があり、突発的な事由への対応は難しい。2ユニットを1人で担当することは極めて慎重に検討すべき」旨を強調。費用負担者である河本滋史委員(健康保険組合連合会理事)も「緩和は慎重に検討すべき」とコメントしています。

さらに伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)は「むしろ、他のサービスの夜勤配置基準を、グループホームを参考に手厚くし、利用者・入所者の安心確保、スタッフの負担軽減を図るべき」と逆の提案を行っている点も注目されます。

グループホームの夜勤体制は「1ユニット1人夜勤」となっている(介護給付費分科会(3)5 201009)

特定施設の加算体系組み換え、入居継続支援加算の要件緩和等を検討する

また特定施設入居者生活介護(以下、特定施設)については、看護職員の配置、機能訓練指導員の配置が義務付けられていることから、外部の「訪問看護」「訪問リハビリテーション」を受けて、その費用を併算定することは認められていません(看護やリハビリ等は包括評価の中に含まれているという考え方)。

ただし、「中重度者への対応や看取り対応を充実させる」「リハビリや機能訓練を充実させる」ために、「外部の訪問看護ステーションや訪問リハビリ事業所と連携し、限られた医療専門人材の助力を得たい」と考える特定施設も少なくありません。

こうした点をどのように考えるべきかが、2021年度の次期介護報酬改定に向けた重要論点として示されています。すでに、外部リハビリ事業所等と共同して個別機能訓練計画を作成することを評価する【生活機能向上連携加算】や、夜間に病院や訪問看護ステーションと連携し必要に応じて健康管理を行える体制を整えることを評価する【夜間看護体制加算】なども設けられており、これらの整理も含めた加算の組み換えなどが進められる可能性があるでしょう。

特定施設では夜間における訪問看護STとの連携が評価されている(介護給付費分科会(3)6 201009)

特定施設における生活機能向上連携加算の概要(介護給付費分科会(3)7 201009)



ところで、喀痰吸引などのケアを提供する施設を評価する【入居継続支援加算】については「喀痰吸引が必要な入居者が15%以上」という要件が設けられています。しかし、特定施設では、特別用老人ホームと異なり比較的軽度な入居者が多いことから、この「15%」要件を満たせる施設は限られてきます(同加算の算定率はわずか1.68%)。

この点、喀痰吸引が必要な入居者の割合を見ると、15%以上は「8.64%」、10%以上は「16.61%」、5%以上は「33.39%」となっていることなどを踏まえ、要件の緩和(例えば現行の「15%」から「10%以上」に引き下げるなど)を行う方向で検討が進められます。

特定施設における喀痰吸引が必要な入居者の割合を見ると「15%以上」は9%弱にとどまり、「10%以上」の場合17%弱に、「5%以上」の場合33%強となる(介護給付費分科会(3)8 201009)



なお、河本委員からは「要件緩和を行う場合、報酬も引き下げよ」との注文がついている点に留意が必要でしょう。要件緩和がなされた場合、加算を算定する特定施設が増え、介護費の増加にもつながるためです。高齢者の増加、現役世代の減少により介護保険財政は厳しくなっていきます。とりわけ団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始める2022年度からは「財政状況の厳しさの度合いが急速に深刻化する」と見込まれており、これに備えた2021年度の次期改定において「制度の持続性」も重要なテーマの1つとなります。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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