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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

小児科・産科医師不足等の課題解決に向け、「熱い志」を持つ人物を中心にICT利活用を推進—にいがたヘルスケアICTフォーラム

2021.1.25.(月)

ヘルスケア分野でのICT利活用においては、▼社会的課題を解決したいという「熱い志」を起点とする▼小さく興し、迅速な改善を継続する▼本来の趣旨・目的からずれない強力なリーダーシップを発揮できる人間を中心にする—ことが重要である—。

1月22日に開催された「にいがたヘルスケアICTフォーラム」において、こういった議論が行われました。

高齢化が進み、医師が不足する新潟県の課題をICT利活用で解決し、日本・世界に発信

医療分野において「ICT技術」の利活用が大きな注目を集めています。例えば国は、医療・健康・介護情報を個人情報に配慮したうえで個人単位で連結し、「より効果的な医療・介護サービス」の確立につなげる取り組みを進めています。

また世界に目を向ければ、膨大な医療情報をAIに学習させ、診断補助に役立てる取り組みが各所で進んできています。

そうした中で新潟県では、イノベーション創出支援事業の一環として「ICTヘルスケア立県促進事業」を採択。医療・健康問題の課題に、ICTの利活用によって「解」を見出す試みに力を入れています。その一環として、1月22日にキックオフフォーラムが開催されたものです。

フォーラムには、▼新潟県の花角英世知事▼慶應義塾大学医学部教授で、新潟県福祉保健部健康情報管理監でもある宮田裕章氏▼医師で医療経営コンサルタントでもある裵英洙氏(ハイズ株式会社代表取締役社長、慶應義塾大学特任教授)―が登壇し、新潟県はもちろん、我が国、さらには世界における「ヘルスケア分野でのICT利活用の方向」を探りました。

まず花角新潟県知事は、新潟県にはICT利活用に向けた、次の3つのポテンシャルがあることを強調します。

1つ目は、佐渡のひまわりネットや新潟県次世代ヘルスケア情報基盤など、医療情報ネットワーク基盤の整備に古くから取り組んできているという点です。ICT利活用を「進めるべき」であるという風土が醸成されていると言えそうです。

2つ目に、「ものづくり」に関して高い技術・経験があること、さらに3つ目に「医療アクセスが地理的に難しい地域が多い」ことを花角知事はあげました。3つ目の点は、一見「疑問」にも感じますが、「医療へのアクセスが難しい=ICTが真価を発揮しやすい」と考えれば、得心がいくでしょう(例えば、オンライン診療は、アクセス困難地域で非常に有用である)。



もっともポテンシャルがあるからといって、ICT利活用がヘルスケア分野で進むものではありません。裵氏は、「社会的課題の解決に向けた『熱い志』を持つ人間」の存在が最も重要であると強調します。

「熱い志」を持つ人間を核になれば、「支援をしよう」と考える人が現れ、ビジネスへと発展していきます。起点として「『熱い志』を持つ人間」の存在が不可欠であり、新潟県では、花角知事であり、県の担当者であり、県内の医療従事者が「熱い志」を持つ人間と言えそうです。

花角知事もこの見解に強く賛同したうえで、「社会的な課題を解決したい」という思いに沿って、ICT導入等を考えていく必要があるとの考えも強調しました。ヘルスケア分野に限らず、ICT導入等にあたっては「これもあると良いのでは」「この機能も追加したほうが良いのではないか」と、頭でっかちに考え、現場のニーズからかけ離れてしまうことがままあります。

この点、新潟県の医療提供体制の最大の課題として▼小児科医▼産婦人科・産科医—の不足があげられ、ICTを利活用して、こうした課題をどう解決していくのかを検討していくことになりそうです。例えば、オンライン診療を活用して「妊婦や、乳幼児・小児を抱える保護者」の相談に乗ることで、少ない小児科医師・産科医の負担を軽減し「重症者等に集中・重点化する」環境を整備することなどが考えられそうです。裵氏は、すでに150名の医師を抱えて「小児等の保護者からの相談を受ける」オンラインサービスが全国で展開されていることを紹介するとともに、「相談等で得られたデータを集積・解析することで、より効率的な医療提供体制の構築にも活かしていけるのではないか」と見通しています。



また宮田氏は、ICTの利活用を進めるうえで、(A)必要なコア部分を小さく、迅速に構築する(B)状況を踏まえて迅速に改善していく(C)本来の趣旨からずれないようにリーダーが管理する—という3点が極めて重要になると指摘しました。

(A)は、花角知事・裵氏の見解とも強く関連するものです、壮大な計画を立て「こうしたニーズにも対応できるように」「こういう機能も持たせた方が良い」などと考えると、導入までに時間が経ち、関係者の「熱」も冷めてしまいがちです。宮田氏は「例えば『2年後にこうったサービスが提供できます』などと計画を立てても、実行段階では社会が変化してしまう。データプロジェクトなどではよく壮大な計画を立て、瓦解するケースが多い」と分析しました。

また、(B)のように迅速に改善をしていくことの重要性はここで述べるまでもありませんが、往々にして「本来の趣旨・目的」からずれてしまいがちです(「この機能も入れよう」「あの意見も取り入れよう」とカスタマイズを続ける中で、本来の趣旨・目的を忘れがちである)。そこで、強力なリーダーシップを発揮する人物を置き、「本来の趣旨・目的」からずれないように管理することが重要となるのです。そこでは上述の「熱い志」を持つ人間がリーダーになることも1つの方法と考えられます。



宮田氏、裵氏ともに新潟県を起点に「医療の課題をICTの利活用で解決する」本プロジェクトについて、「佐渡地域をはじめ、新潟県では高齢化が進み、我が国や中国などの将来の姿である。ここで優れた取り組みを行いPRすることで、日本・世界の道しるべとなることができる」と強い期待を寄せています。



▼社会的課題(ニーズ)を起点とすべきこと▼「熱い志」を持つ人物を中心に据えること▼小さく興し、迅速な改善を続けるとともに、強いリーダーシップの下で「本来の趣旨・目的」からずれないこと—という3点は、ヘルスケア分野でのICT利活用にとどまらず、さまざまな分野において基本的視点に据えるべきポイントと言えるでしょう。



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