コロナ禍におけるがん医療を他院と比較し、がん診療供給体制を考える―CQI研究会
2021.6.10.(木)
がん診療連携拠点病院(以下、がん拠点病院)などの間でも、がん治療の内容や実績に大きな違いがあることが知られており、厚生労働省の「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」では、がん拠点病院の指定要件を見直しながら、適切ながん診療体制の整備を進めています。
そうした中で「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、全国がん拠点病院の「DPCデータをもとにした各病院の治療内容・実績比較」「各病院のクリニカルパス比較」を可能とした会員サイトを設けています(CQI研究会のサイトはこちら、CQI研究会会員リストはこちら)。
また今年(2021年)8月28日には、第15回CQI研究会がオンラインで開かれます。そこでは、お互いの施設名を開示した形で病院間比較が可能な「がん手術分析ツール」の提供や、「新型コロナウイルス感染症によるがん診療および病院経営分析」などが開催予定となっています(第15回CQI研究会申込サイトはこちら)。
第15回CQI研究会では、新型コロナウイルス感染症による影響を分析
「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」は、がん医療の質向上を目指す有志施設が集まり、2007 年に設立した研究会です。 参加施設の診療プロセスについてDPCデータ等を用いて分析し、お互いの施設名を開示した形で病院間比較を行っています。分析結果をフィードバックすることで各施設での質改善活動を支援し、その結果として「がん医療の均てん化」推進が期待されます。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(以下、GHC)では、DPCデータに基づく診療内容・実績の分析を通じてCQI研究会の活動を支援しています。
CQI研究会の会合は、2年に一度集合型で行われていましたが、今年度の第15回CQI研究会は、社会情勢を踏まえてオンラインでの開催となります。(前回第14回CQI研究会に関する記事はこちらとこちら)。
今年度の第15回CQI研究会では、(1)がん医療・経営の質向上のベンチマーク分析ポイント解説(2)新型コロナウイルス感染症によるがん診療および病院経営分析—のプログラムが予定されています。
このうち(1)は、会員専用サイトにおいて、DPCデータを持ち寄った病院同士で、がん医療の内容・実績について病院実名ベンチマーク分析を可能とするものです。「悪性腫瘍」の名称が付く診療報酬点数のKコード(手術)すべてのデータについて、例えば、「術式の割合」(開腹手術なのか、腹腔鏡手術なのか)、「平均在院日数」「術後日数」「抗菌剤の使用銘柄と使用日数」「医療資源の投下状況」「各種加算の算定状況」などを瞬時に視覚的に把握し、▼自院の立ち位置▼他病院の状況—を見ることができます。
また、(2)では、新型コロナウイルス感染症による患者受療行動、患者層、診療内容の変化や、がん拠点病院におけるコロナ対応状況などを加味した影響分析を報告予定となっています。GHCでは以前、新型コロナ分析として、『治療を待てない患者』であるはずのがんにおいても、コロナ禍で症例数が減少していることを報告しており、がん種別や診療内容(検査、手術、化学療法など)によっても傾向が異なることが明らかになっています(GHC分析に関する記事はこちら(7月)とこちら(6月)とこちら(5月)とこちら(4月)とこちら(3月))
こうしたがん診療の実態について、がん拠点病院での状況やがん診療そのものの変化などについて分析し、今後のがん診療供給体制を考える機会になるかと思います。ぜひご参加ください。
また、同日午前中には、GHC特別セミナー「(収益UP = 患者単価UP × 患者数UP)」をCQI会員限定で開催します。こちらもぜひご参加ください。お申込みはこちらから。
【開催概要】
■第15回CQI研究会
日時:令和3年8月28日(土)13:30~16:00
会場(開催方法): Webセミナー(リアルタイム型)
参加対象病院:がん診療連携拠点病院
参加対象:院長、副院長、診療部長、看護部長、事務部門(経営企画、医事課等)
参加費:お一人様 1000円(税込)
【当日のプログラム(予定)】
1. がん医療・経営の質向上のベンチマーク分析 ポイント解説
参加施設の「診療プロセス」や「経営指標」を実名でベンチマーク(手術全がん種対応)
・診療プロセス:各がんの在院日数、抗生剤、輸液、処置、リハビリ、栄養指導etc.
・経営指標:症例数、医療資源量、がん関連の加算算定率、入退院支援加算算定率etc.
2. 新型コロナウイルス感染症によるがん診療および病院経営分析
新型コロナウイルス感染症による患者受療行動、患者層、診療内容の変化や、がん拠点病院におけるコロナ対応状況などを加味した影響分析を報告
●お申込みは、こちらから
【CQI研究会世話人(北から記載、敬称略)】
岩手県立病院 名誉病院長・八幡平市 病院事業管理者 : 望月 泉
栃木県立がんセンター 理事兼副病院長 : 藤田 伸
千葉県がんセンター 副病院長 : 浜野 公明
神奈川県立がんセンター 総長兼病院管理者 : 中山 治彦
愛知県がんセンター病院 病院長 : 丹羽 康正
独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 血液腫瘍内科医長 : 吉田 功
独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 院長 : 藤 也寸志
【関連記事】
がん医療関係者、医療の質評価事業に参加し、医療の質向上を目指してほしい―第14回CQI研究会(2)
がん診療連携拠点病院でも診療内容に大きなバラつき、パス見直しなど検討を―第14回CQI研究会(1)
がん医療の内容、実績、クリニカルパスを他院と比較し、がん医療の質向上を目指す―CQI研究会
胸部食道がん、平均値では胸腔鏡手術のほうが開胸手術よりも術後日数が長い―CQI研究会
ベンチマークと臨床指標でがん医療の均てん化を推進―CQI研究会、8月開催
大腸がんの在院日数、短縮傾向もなお病院格差-CQI研究会が経年分析
乳がんの治療法、放射線実施率など格差鮮明―CQI研究会、臨床指標20項目を調査
前立腺がん手術、在院日数最短はダヴィンチ、合併症発生率は?―第10回CQI研究会
拠点病院は現場の使命感で支えられている、今こそ「医療の質評価」の普及を――九がん・藤院長
小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存療法を費用助成、エビデンス構築目指す―がん対策推進協議会(2)
コロナ感染症で「がん検診の受診控え」→「大腸がん・胃がん手術症例の減少」が顕著―がん対策推進協議会(1)
新型コロナ禍で「自身の判断で治療中断するがん患者」も、がん拠点病院は「治療継続の必要性」呼びかけよ―がん拠点病院指定検討会(2)
地域トップの「高度型がん拠点病院」、新規に藤沢市民病院・浜松医大病院・伊勢赤十字病院・香川労災病院を指定―がん拠点病院指定検討会(1)
骨太方針2020を閣議決定、「新型コロナ禍の医療提供体制強化」と「ポストコロナ下の社会保障改革」を推進
骨太方針2019を閣議決定、給付と負担の見直し論議を先送りするなど「形骸化」著しい