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「マイナンバーカードで医療機関受診したが、オンライン資格確認できない」場合の救済措置の詳細通知—厚労省

2023.7.18.(火)

「マイナンバーカードを用いて医療機関を受診したが、様々なトラブルにより資格確認ができない」場合でも、通常どおり1-3負担負担となるような救済措置を設ける—。

初めてマイナンバーカードを用いて医療機関を受診する場合や、転職直後にマイナンバーカードを用いて医療機関を受診する場合には、「資格情報がきちんと登録されているか」を患者自身がマイナポータルで確認したり、保険証をあわせて持参する、などの対応をとることが望ましい—。

厚生労働省が7月10日に通知「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応について」を発出し、こうした取り扱いを行うよう医療機関等や自治体、保険者に要請しました(厚労省サイトはこちら)(関連記事はこちら)。

マイナンバーカードでのオンライン資格確認が行えない場合の対応2(医療保険部会(2)4 230629)

保険証やマイナポータル画面え「患者の医療保険資格」を確認することも可能

医療DXの基盤となる「マイナンバーカードによるオンライン資格確認」が医療現場で進められています。患者の過去の診療情報を「今の診療内容」に活かすことで、医療の質向上が期待されます。

しかし、「他人の情報が紐づけられていた」「医療機関で資格確認がなされず10割負担を求められた」などの事例が報告されており、政府は「正確なデータ登録の確保」を進めるとともに、「マイナンバーカードでオンライン資格確認を行うことができない場合の対応」を固め、後者について今般の通知で詳細を明らかにしたものです(関連記事はこちら)。

対応の大枠は(1)保険料を支払っている被保険者等が、適切な自己負担分(1-3割)の支払いで必要な保険診療を受けられるようにする(2)医療機関等に「事務的対応」以上の負担をかけないようにする—と整理されました。医療機関等の窓口で「被保険者資格」(どの医療保険に加入しているか)を行えない場合、いったん「医療費全額」を支払い、後に自身の加入する医療保険者に「7-9割分」を請求することが原則です(償還払い)。しかし、オンライン資格確認等システム側の問題などで資格確認を行えない場合に、この原則を適用すれば医療保険制度への信頼が揺らぎかねません。そこで、オンライン資格確認が行えないケースごとに「どのように医療保険に加入しているのかを確認すればよいか。患者負担をどう取り扱うのか」を整理しています。

まず、マイナンバーカードでオンライン資格確認を行えないケースは、大きく次の2パターンに分けられます。

(1)資格確認端末で「資格(無効)」、「資格情報なし」と表示される(保険者などでデータ確認中であるなど)
保険者等による迅速かつ正確なデータ登録の取り組みを徹底し、事象を減少させていく

→この場合、マイナポータルでも「直近の有効な資格情報」確認を行えない

→患者が保険証を持参し、医療機関等の窓口で健康保険証の資格情報を入力して保険証の有効性をオンライン資格確認等システムに照会する場合も生じる(医療保険資格が喪失している場合(退職している場合など)には、患者の直近の資格情報を確認することはできない)

(2)医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認を行うことができない(顔認証付きカードリーダーや資格確認端末の故障、マイナンバーカードの券面汚損・ICチップ破損、カード搭載の利用者証明用電子証明書の有効期限切れ、停電、施設の通信障害、広範囲のネットワーク障害など)
→「オンライン資格確認等システムへのアクセスは自体は可能」な場合と、「オンライン資格確認等システムへのアクセス自体ができない」場合に分けられる



こうした場合でも、次のように「本人確認」を行うことで「1-3割の負担で医療機関受診を行う」ことが可能となります。

▽患者が自身のスマートフォン等によりマイナポータルにアクセスして医療保険の被保険者資格情報の画面を提示できる場合や、患者が保険証を持参している場合は、それらを用いて医療機関等の窓口で資格確認を行う

▽上記の資格確認ができない場合(スマートフォン等や保険証などの持参なしなど)には、患者に「被保険者資格申立書」(マイナンバーカードの券面情報(氏名、生年月日、性別、住所)、連絡先、保険者等に関する事項(加入医療保険種別、保険者等名称、事業所名)、一部負担金の割合など)を可能な範囲で記入し、医療機関等の窓口に提出してもらうことで、1-3割負担を可能とする
→過去に来院している患者について「その時から資格情報が変わっていない(転職などしていない)ことを口頭で確認し、被保険者資格申立書に記載すべき上記情報を把握できている場合には、「被保険者資格申立書の提出があった」ものと取り扱って差し支えない

被保険者資格申立書(1)

被保険者資格申立書(2)

被保険者資格申立書(3)



→70歳以上等の患者について、「患者の申し立てに基づく割合で一部負担金を受領したが、実際の負担割合が異なっていた」(患者が「1割負担」と申請したが、実際は2割負担であったなど)としても、負担割合相違によるレセプト返戻は行わないことを基本とする(保険者等から患者に対して返還請求等が行われる)

→停電や通信障害、カードリーダー故障などの場合には、オンライン資格確認等システムの「緊急時医療情報・資格確認機能」(システム障害時モード)を立ち上げ、患者の氏名、生年月日、性別、住所・保険者名で照会することにより、停電の復旧等によりオンライン資格確認等システムにアクセス可能になった後に資格確認を行うことができる

→何らかの事情により顔認証付きカードリーダーで顔認証が上手く機能しない場合には、「カード搭載の利用者証明用電子証明書の暗証番号入力」「オンライン資格確認を目視モードとし、医療機関等職員による目視確認」により本人確認を行うことも可能



▽「マイナンバーカード、保険証のいずれも持参していない」「保険証の交付を受けていない」場合で、マイナンバーカードによる資格確認を行うこともできない場合には、医療機関等は患者に対して医療費の全額(10割)請求することを基本とする
→当該患者が再診で、医療機関等で「過去の受診歴等」「患者の身元」が分かる場合などには、柔軟な対応(1-3割負担とする)を行うことも可能

「患者がどの医療保険に加入しているか不詳である」とのレセプト請求も今後可能に

医療機関等では、患者に1-3負担分を請求するとともに、医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に残りの9-7割分を請求します(レセプトによる診療報酬請求)。後者の診療報酬請求については、次のような取り扱いとすることが示されています。

▽「マイナポータル画面や保険証の提示」「システム障害時モード」で資格確認を行った場合
→当該資格確認結果に基づく患者の保険者等番号、被保険者等記号・番号をレセプトに記載して診療報酬請求等を行う

▽「患者からの聞き取り等により患者の現在の資格情報を確認できた」「過去の来院時から資格情報が変わっていないことを口頭で確認できた」場合
→当該資格に基づく患者の保険者等番号、被保険者等記号・番号をレセプトに記載して診療報酬請求等を行う

▽「有効な保険証が発行されているが、患者の現在の資格情報を確認できなかった」場合
→オンライン資格確認等システムの「資格(無効)」画面に表示された喪失済みの資格、過去の来院歴から確認した資格に基づく保険者等番号、被保険者等記号・番号をレセプトに記載して診療報酬請求等を行うことができる

→喪失済み資格に基づいてレセプト請求等を行った場合でも、審査支払い時点で新たな保険者等からデータ登録がなされれば、オンライン資格確認等システムのレセプト振替機能を活用して、返戻せずに、当該新たな保険者等に対して請求を自動的に振り替えることを基本とする

▽「有効な保険証が発行されているが、上記によることができない」場合
→被保険者資格申立書(上述)の提出があった患者で、患者から事後的に医療機関等に対して被保険者等記号・番号等の提供がなかった場合には医療機関等から患者へ確認を行った上で、患者の現在・喪失済みの保険者等番号、被保険者等記号・番号を特定することができないときにはレセプトの摘要欄に「被保険者資格申立書により把握している患者の住所、事業所名、連絡先等の情報、その他請求に必要となる情報」を記載し、保険者等番号、被保険者等記号・番号を「不詳」のまま診療報酬請求等を行える仕組みを設ける(本年(2023年)9月請求分から)



レセプト請求を受けた審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会)は、オンライン資格確認等システムのレセプト振替機能も活用して「患者が医療機関等を受診等した際に、どの医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)に加入していたのか」を可能な限り特定します。

ただし、様々な努力によっても「患者が医療機関等を受診等した際に、どの医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)に加入していたのか」を特定できない場合も出てくると予想されます。この場合には、災害等の際の取り扱いに準じて「各保険者等で、当該医療機関等に対する診療報酬支払い実績に応じて、診療報酬等を按分して支払う」ことになります。例えば、Aクリニックから「保険者を特定できなかった」レセプト請求額が10万円であったとします。過去の支払い実績を見ると、Aクリニックからのレセプト請求にはX健康保険組合が20%割、Y県の協会けんぽが20%、Z国民健康保険が25%、α県の後期高齢者医療広域連合が35%の支払いを行っていた場合には、当該10万円は「X健康保険組合が2万円、Y県協会けんぽが2万円、Z国民健康保険が2万5000円、α県の後期高齢者医療広域連合が3万5000円」という形で負担するイメージです。医療機関が報酬を受けられない事態は生じない見込みです。



このほか、次のような点にも留意することが求められます。

▽マイナンバーカードによる オンライン資格確認を行うことができない場合でも、被保険者資格申立書(上述)を医療機関等の窓口に提出することで、1-3割負担で保険診療受診が可能だが、本来、「保険者が加入者に対し、個別にオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況を知らせる」ことができれば、こうした手続きは不要となる
→今後、被用者保険の保険者が「転職等による保険資格変更時に、保険証交付と併せてオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況を知らせる」取り組みを進める

→こうした仕組みが整備されるまでの間、被用者保険の各保険者等、事業主が加入者に対して、▼マイナンバーカードで医療機関等を受診等する際に、事前にマイナンバーを提出していないなどにより、オンライン資格確認等システムへのデータ登録に必要な確認に時間を要する場合は、医療機関等で「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示される場合があること▼オンライン資格確認等システムへのデータ登録が完了しても、医療機関等の機器不良等によりオンライン資格確認を行うことができない場合があること▼本来の1-3割負担で受診することも可能だが、マイナンバーカードの券面情報等を記載した書面を提出する必要があること▼初めてマイナンバーカードで医療機関等を受診等する場合、転職等により新たな保険証が交付された場合などは、受診等の前にマイナポータルで新しい資格が登録されていることを確認するか、念のため保険証も持参してほしいこと—などを周知してもらう

▽上記の事務取り扱いの詳細は追って別途通知する

▽「保険者不詳」でのレセプト請求は、本年(2023年)9月請求分から適用するが、これに先立って「被保険者資格申立書を活用した運用」を行うことも可能



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