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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

セルセプトを「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」治療に、パラプラチンを「子宮体がん」治療に用いることを保険診療の中で認める―厚労省

2024.2.9.(金)

臓器移植後の拒絶反応抑制などに用いる「ミコフェノール酸 モフェチル」(販売名:セルセプト)について、新たに「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」治療に用いることを保険診療の中で認める―。

多くのがん化学療法に用いる「カルボプラチン」(販売名:パラプラチン)について、新たに「子宮体がん」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

厚生労働省は2月5日に通知「公知申請に係る事前評価が終了した医薬品の保険上の取扱いについて」を発出し、こうした点を明らかにしました。同日(2024年2月5日)から保険適用範囲が拡大されています。

保険診療の中で「ドラッグ・ラグ」に強力に対応する特別ルール

従前、我が国において医薬品の承認・保険適用手続きが複雑で時間がかかることを原因といた「ドラッグ・ラグ」(欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品が我が国で保険診療において使用できない)が問題視されました(現在、新たな「ドラッグ・ラグ」が問題視されており、2024年度薬価制度改革での対応が図られる、関連記事はこちら)。

日本国民が最新の医療技術にアクセスしにくい状況は解消しなければならず、例えば「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、我が国では未承認・適応外となっているが医療上の必要性の高い医薬品について製薬メーカーに開発要請を行うなど、ドラッグ・ラグ解消に向けた取り組みが進められています。

また、未承認・適応外薬の開発促進に向けて、2010年度の薬価制度改革で【新薬創出・未承認薬解消等促進加算】を創設し、2018年度の薬価制度抜本改革でこれを制度化。その後の薬価制度改革でも加算の見直しを続けています。

さらに、医療保険制度からドラッグ・ラグ解消に強力にアプローチするために、2010年8月25日の中央社会保険医療協議会・総会で「医薬品の適応外使用について、薬事・食品衛生審議会の事前審査で『公知申請を行っても差し支えない』と判断された場合には、その翌日から自動的に保険適用を行う」という特別ルールが創設されました。

保険診療では、安全性・有効性を確保するために、医薬品は「効能・効果が認められた(=安全性・有効性が確認された)傷病の治療」以外に用いることはできません。仮にその他傷病の治療に用いれば保険外診療(自由診療)となり、当該一連の治療全体が全額患者負担となるのが原則です。「この医薬品は異なる傷病の治療に効果があるのではないか」と考えられる場合には、治験などを実施して有効性・安全性に関するデータを揃え、薬食審で効能・効果追加の承認を得ることが原則です。限られた公的財源(保険料、税)の中で、安全性・有効性が確認されていない治療を認めることは好ましくないためです。

もっとも、治験等を実施してエビデンスを構築し、審査が完了する(=効能・効果追加が認められる)までには相当の時間が必要です。このため、上記原則をあまりに厳格に適用すれば「今まさに疾病と闘っている患者」が最新の医療技術(医薬品)にアクセスするチャンスが大きく阻害されてしまいます(事実上、我が国では最新医療技術(医薬品)にアクセスできないことになってしまう)。

これでは「傷病と闘う患者にあまりに酷」であることから、中医協において「医療保険の原則」と「最新の医療技術へのアクセス」とのバランスに配慮して上記特別ルールが創設されました。▼適応外使用であれば、既に「人体への安全性」は審査済である▼海外の論文など(公知)で一定の有効性・安全性が確保され、それをもとに薬食審の事前審査で「公知申請を認めて良い」と判断された場合には、必ず後に効能・効果追加が認められている—ことなどに鑑みたものです。本特例ルールにより「公知申請を認めてよいとの事前審査から、実際に効能・効果追加が行われるまでの期間」分(概ね6か月程度とされる)、保険収載を前倒しすることが可能となります(ドラッグ・ラグの短縮)。



今般、この特別ルールにより次の3医薬品について、新たな効能・効果が認められることになりました(保険診療の中での適応外使用が認められる)。

●ミコフェノール酸 モフェチル(販売名:セルセプトカプセル250、同懸濁用散31.8%)

【現在認められている効能・効果】
▽腎移植後の難治性拒絶反応の治療(既存の治療薬が無効または副作用等のため投与できず、難治性拒絶反応と診断された場合)
▽腎移植、心移植、肝移植、肺移植、膵移植における拒絶反応の抑制
▽ループス腎炎
▽造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制

【新たに認められる効能・効果】
▼全身性強皮症に伴う間質性肺疾患

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼診療ガイドライン等の最新情報を参考に、本剤投与が適切と判断される患者に投与する▼通常、成人にはミコフェノール酸 モフェチルとして1回250-1000mgを1日2回・12時間毎に食後経口投与する
→年齢、症状により適宜増減するが、1日3000mgを上限とする
▼緊急時に十分対応できる医療施設において、「本剤に関する十分な知識」と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の治療に十分な知識・経験」をもつ医師のもとで使用する



●カルボプラチン(販売名:パラプラチン注射液50mg、同注射液150mg、同注射液450mg)

【現在認められている効能・効果】
▽頭頸部がん、肺小細胞がん、睾丸腫瘍、卵巣がん、子宮頸がん、悪性リンパ腫、非小細胞肺がん、乳がん
▽小児悪性固形腫瘍(神経芽腫・網膜芽腫・肝芽腫・中枢神経系胚細胞腫瘍、再発または難治性のユーイング肉腫ファミリー腫瘍・腎芽腫)に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法

【新たに認められる効能・効果】
▼子宮体がん

【新たに認められる効能・効果における留意事項等】
▼他の抗悪性腫瘍薬との併用において、通常、成人には「カルボプラチンとして、1日1回・AUC5-6mg・min/mL相当量を投与し、少なくとも3週間休薬する」こと1クールとし、投与を繰り返す
→投与量は、年齢、疾患、症状により適宜増減する
▼AUC目標値および腎機能に基づく本剤の投与量については、関連学会の最新ガイドライン等を参考に設定する
▼併用薬「ドセタキセル水和物」(販売名:タキソテール点滴静注用20mg、同点滴静注用80 mg、ワンタキソテール点滴静注20mg/1mL、同点滴静注80mg/4mL)および「パクリタキセル」(販売名:タキソール注射液30mg、同注射液100mg)における「子宮体癌:本剤の術後補助化学療法における有効性・安全性は確立されていない」との記述を削除する



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