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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

介護サービスの1人当たり費用は前年より減少、特養での減少が目立つ―2015年度介護給付費等実態調査

2016.9.1.(木)

 2016年4月時点の「要介護者1人当たりの費用額」は前年より400円減少し、19万900円となった。とくに特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)において1人当たり費用額の減少が大きい―。

 このような結果が、厚生労働省が8月31日に公表した2015年度の「介護給付費等実態調査」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

 2015年4月から特養ホームの新規入所者が「原則、要介護3以上」とされており、これと費用額の減少にどのような関係があるのか、今後のさらなる分析が期待されます。

介護サービスの累計利用者、全体では3.8%増加、介護療養は7.8%減

 この調査は、介護サービスにかかる給付費の状況を把握するもので、介護報酬改定などの基礎資料となります。厚労省は毎月、調査結果を公表しており、今回は2015年5月審査分から16年4審査分を年報として集計しています。

 集計対象は、都道府県の国民健康保険団体連合会が審査したすべての介護給付費明細書・給付管理票です。

 受給者の状況を見てみると、2015年度の累計受給者数は6193万2000人で、前年度に比べて224万6500人・3.8%増加しました。同一人物を名寄せした実受給者数は605万1100人で、前年度に比べて16万8100人・2.9%の増加となっています。実受給者数よりも累計受給者数の伸びが1ポイント近く大きなことから、「1人が利用するサービスの回数」がさらに増加している状況です。

 サービス種類別に累計受給者数を見てみると、次のようになっています。

▽介護予防訪問介護:525万2900人(実受給者数は60万2300人)で、前年度比2.8%減

▽介護予防訪問看護:59万5000人(同8万6100人)で、前年度比17.0%増

▽介護予防通所介護:614万9500人(同76万300人)で、前年度比4.2%増

▽介護予防通所リハ:167万1800人(同20万3600人)で、前年度比3.8%増

▽訪問介護:1177万2600人(同142万5000人)で、前年度比1.8%増

▽訪問看護:430万人(同56万5800人)で、前年度比8.3%増

▽訪問リハ:93万7900人(同12万5800人)で、前年度比3.0%増

▽通所介護:1668万500人(同191万8900人)で、前年度比5.5%増

▽通所リハ:507万5900人(同59万4900人)で、前年度比1.0%増

▽小規模多機能型居宅介護(短期利用以外):99万3700人(同12万200人)で、前年度比9.1%増

▽認知症対応型共同生活介護(短期利用以外):226万9700人(同23万4600人)で、前年度から3.0%増

▽特養ホーム(介護老人福祉施設):6150万900人(同64万100人)で、前年度比3.5%増

▽老健施設:425万8400人(同54万7900人で)で、前年度比0.6%増

▽介護療養型医療施設:72万9200人(同9万7100人)で、前年度比7.8%減

 介護予防訪問介護の減少(地域支援事業への移行の影響か)、介護療養の減少(施設の減少の影響か)などが目を引きます。今後、介護予防訪問・通所介護の地域支援事業への移行が本格化し、また介護療養から新類型への移行方策などが固まることから、利用者の動向を注視していく必要があります。

 また2012年度の介護保険制度改正、介護報酬改定で新設された定期巡回・随時対応サービスは14万8300人(同2万500人)で前年度比39.9%増、看護小規模多機能型居宅介護(旧、複合型サービス、短期利用以外)は5万4000人(同7500人)で前年度比69.3%増と、従前ほどではないものの大きな伸びを示しています。

介護予防サービスの受給者(累計と実人数)、介護予防訪問介護で減少ている点について、地域支援事業への移行が関係している可能性もある

介護予防サービスの受給者(累計と実人数)、介護予防訪問介護で減少ている点について、地域支援事業への移行が関係している可能性もある

介護サービスの受給者(累計と実人数)、介護療養では大幅に減少している

介護サービスの受給者(累計と実人数)、介護療養では大幅に減少している

要介護4では改善した人と悪化した人が同程度、事業所・施設の努力が見える

 次に1年間継続してサービスを受給した人について、2015年4月から16年3月にかけて要介護度がどのように変化したのかを見てみましょう。

 いずれの要介護度区分でも変化のない「維持」の割合が最も多く7~9割程度となっている状況に変わりはありません。

 また、「要支援2」から「要介護3」では、改善(軽度化)よりも悪化(重度化)の割合がはるかに高くなっていますが、「要介護4」では、改善(軽度化)と悪化(重度化)の割合がほぼ同程度となっており、重度者について「機能改善」に向けた努力を各事業所・施設が行っていると考えられそうです。

 ただし、介護保険の理念である「自立支援」を考えると、全区分、とりわけ要介護度の低い区分で「軽度化」に向けた機能訓練などを進める必要がありそうです。

要支援2から要介護3では、明らかに悪化した人の割合が高いが、要介護4では改善と悪化が同程度となっている

要支援2から要介護3では、明らかに悪化した人の割合が高いが、要介護4では改善と悪化が同程度となっている

特養で1人当たり費用が大幅減、制度改正との関係について分析が待たれる

 また受給者1人当たりの費用額に目を移すと、2016年4月審査分では▽介護予防サービスで3万6600円(前年度比4400円減)▽介護サービス19万900円(同400円減)―となりました。

 サービス種類別に見てみると、次のような状況です。

▽訪問介護:7万2100円(前年比1700円増)

▽訪問看護:4万9100円(同400円増)

▽訪問リハ:3万9100円(同1200円増)

▽通所介護:9万2200円(同900円増)

▽通所リハ:8万5200円(同2300円増)

▽短期利用以外の特定施設入居者生活介護:21万2900円(同1800円減)

▽定期巡回・随時対応サービス型:16万1900円(同1万4400円増)

▽夜間対応型訪問介護:3万4000円(同2600円増)

▽短期利用以外の看護小規模多機能型居宅介護:25万8400円(同1万4000円増)

▽特養ホーム:27万3100円(同7600円減)

▽老健施設:29万7100円(同900円減)

▽介護療養型医療施設:39万円(同3300円減)

 介護予防・介護サービスのいずれでも1人当たり費用額が下がっており、この要因を詳しく分析することが重要です。とくに、特養ホームについては前年よりも大幅に1人当たり費用額が下がっており、これが制度改正(新規入所者の制限)などとどのように関係しているのか今後の分析が待たれます。

1人当たり費用額は、前年度より減少している。その大きな要因として特養ホームの費用減があると考えられる

1人当たり費用額は、前年度より減少している。その大きな要因として特養ホームの費用減があると考えられる

 受給者1人当たり費用額を都道府県別に比較してみると、介護サービスでは、沖縄県が最も高く21万300円、次いで鳥取県20万6000円、石川県20万3700円となっています。逆に、最も低いのは福島県の18万1700円で、最高の沖縄県と最低の福島県の間には1.16倍の格差があります(前年度より若干、格差は縮小している)(関連記事はこちら)。

1人当たり費用額には大きな地域格差がある

1人当たり費用額には大きな地域格差がある

特養で重度者、長期入所者が増加

 さらに、サービスの利用状況に目を移すと、次のような状況が明らかになりました。

▽2016年4月審査分における居宅サービスの平均利用率は、「要介護5」が最も高く64.6%。要介護度が下がるにつれ利用率も下がるが、要支援1では高くなっている(前年と同じ傾向)

居宅サービスの利用率は要介護度が上がるほど、高くなっている

居宅サービスの利用率は要介護度が上がるほど、高くなっている

▽2016年4月審査分における訪問介護の内容類型は、要介護度が高くなるにつれ「身体介護」の利用度合いが高くなる(要介護1では31.2%だが、要介護5では87.1%)(やはり前年と同じ傾向)(関連記事はこちら

要介護度が高くなるにつれ、訪問介護における身体介護の割合が高くなる

要介護度が高くなるにつれ、訪問介護における身体介護の割合が高くなる

▽1年間における施設サービスの単位数は、特養ホームでは「要介護4」「要介護5」の割合(合計70.5%、前年度よりも0.5ポイント増)が、老健施設では「要介護3」「要介護4」の割合(同52.4%、0.2ポイント増)が、介護療養型医療施設では「要介護5」の割合(58.0%、0.8ポイント減)が多い(これも前年と同じ傾向)

 施設別に入所(院)期間を見てみると、特養ホームでは1年以上5年未満の人が5-7割程度を占め、5年以上の入所者が14.9-25.7%と前年より増えていることが分かりました。制度改正に伴い、重度者の割合が増え、入所期間も伸びたと考えられそうです。

 他の施設に比べて入所期間は明らかに長く、「終の棲家」という呼称と実態がよりマッチしていると言えるのではないでしょうか。

特養ホームでは、老健施設や介護療養に比べて入所期間の長い人の割合が高い

特養ホームでは、老健施設や介護療養に比べて入所期間の長い人の割合が高い

 
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