転移性尿路上皮がん治療、従来の化学療法に比べ「パドセブ点滴静注用とキイトルーダ点滴静注の併用療法」で高い効果—国がん
2025.4.4.(金)
治療困難な転移性尿路上皮がん治療について「パドセブ点滴静注用とキイトルーダ点滴静注の併用療法」が注目されている。世界各国の先行研究を分析すると、この新たな治療法は「従来の化学療法」に比べで高い効果(効果が3.5倍、1年生存率が 2.3倍高い)があることが分かった—。
ただし、「パドセブを用いた治療」では、「従来の化学療法」に比べて「貧血や白血球減少が少ない」一方で「皮膚の発疹やしびれなどが多い」という特徴があり、患者に合わせた副作用対策が必要となる—。
国立がん研究センターが4月3日に、こうした研究方針を公表しました(国がんのサイトはこちら)。治療困難な転移性尿路上皮がんについて「新たな効果的な治療法」の選択肢が増えており、患者には大きな朗報と言えるでしょう。
転移性尿路上皮がん、「パドセブ+キイトルーダ点滴静注」の併用療法が効果的
膀胱がんなどの尿路のがんが転移すると、治療の難しい「転移性尿路上皮がん」となります。
転移性尿路上皮がんの治療には、▼従来はプラチナ製剤という抗がん剤が用いられてきたが、効果には限界があった▼近年、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)も使われてきているが、奏効率が2割程度にとどまる—などの課題があり、より優れた治療法の確立が求められています。
この点、2011年に保険適用(薬価収載)された「エンホルツマブ ベドチン(遺伝子組換え)」(販売名:パドセブ点滴静注用20mg、同点滴静注用30mg)に注目が集まっています。同剤は、がん細胞の表面にある「ネクチン-4」という目印を狙い撃ちするという「がん細胞に薬を直接届けて攻撃する新しい仕組み」をもっています。
国がんでは、世界中の医学データベースを用いて昨年(2024年)8月までに発表された研究の中で「パドセブを単独、または他の免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使った11の臨床試験」(患者数2128名)を抽出し、詳しく分析しました。11研究のうち、3つの研究が患者を無作為に振り分けて比較する試験(ランダム化比較試験)、8つが計画的に治療効果を観察する研究(前向き研究)を実施。2128名の患者のうち、563名が「パドセブとペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ点滴静注)の併用療法」を、814名が「パドセブの単独療法」を、751名が「従来の化学療法」を受けていました。
分析の結果、次のような点が明らかになりました。
【パドセブとキイトルーダの併用療法】
▽約7割(68%)の患者で「がんが縮小」し、約9割(86%)の患者で「がんの進行抑制」の効果が得られている
▽1年後の生存率は約8割(79%)であった
【パドセブの単独療法】
▽約4割(43%)の患者で「がんが縮小」し、約7割(73%)の患者で「がんの進行抑制」の効果が得られている
▽1年後の生存率は約5割(52%)であった
また、直接比較されていない治療法同士でも比較を可能とする「ネットワークメタ解析」という統計手法を用いて、▼パドセブとキイトルーダの併用療法▼パドセブの単独療法▼従来の化学療法—を比較すると、次のようになっています。
▽「パドセブとキイトルーダの併用療法」は、「従来の化学療法」に比べて、効果が3.5倍、1年生存率が 2.3倍高い

尿路上皮がん治療において、「渋滞の化学療法」よりも「パドセブ点滴静注用とキイトルーダ点滴静注の併用療法が高い効果あり
他方、安全性(副作用)について見てみると、「パドセブを用いた治療」では、「従来の化学療法」に比べて、「貧血や白血球減少が少ない」一方で「皮膚の発疹やしびれなどが多い」という特徴があることが分かりました。
「パドセブとキイトルーダの併用療法」は高い効果があるものの、副作用に特徴があるため、国がんでは「患者に合わせた対策が必要」とコメントしています。
国がんでは、今後「どのような患者に最も効果があるのかを見極める」「副作用の対策を改善する」「他の薬剤との更なる新しい組み合わせを開発する」「長期的な効果・安全性評価のために長期間の観察を行う」などの研究が進むことに期待を寄せています。
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