介護医療院で「●●病院」を名乗れるが、利用者が誤認しないようなルール設ける—社保審・医療部会(1)
2017.9.15.(金)
2018年度から新設される介護医療院へ既存の医療機関が転換した場合、従前の「■■病院」という名称を継続して用い、例えば「■■病院介護医療院」「介護医療院■■病院」という名称で開設することが可能となる。しかし、「地域医療支援病院●●病院介護医療院」といった法令などに基づき一定の医療機能を担うことを示す呼称などを用いることは、医療介護サービス利用者が「誤認する」恐れがあり、認められない—。
9月15日に開催された社会保障審議会の医療部会では、こういった方針が厚生労働省医政局総務課の榎本健太郎課長から示されました。この方針は概ね了承されましたが、名称の「掲示方法」などには調整が必要な状況です。
また2018年度の次期診療報酬改定に向けた基本方針策定論議もスタートしており、こちらに関する議論は別途お伝えします。
既存医療機関からの転換に限り、現在の「○○病院」などの名称を継続可能
介護療養病床や、医療法上の看護配置4対1などを満たさない医療療養病床では、2017年度末で設置根拠となる経過措置が切れるため、新たな転換先の1つとして「介護医療院」が2018年度から新設されます。医療・介護・生活の3機能を持つ、新たな介護保険施設です(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
当面は介護療養病床などからの転換が多くなると見込まれ、円滑な転換を促すための1方策として「既存の医療機関から転換する場合には、現在使用している『○○病院』『○○クリニック』などの名称を継続使用できる」こととされています。ただし、単に○○病院を名乗ったのでは、住民からはその施設が介護医療院であることを認識できません。そこで、○○病院という名称の継続使用を認めることとあわせ、「名称の中に『介護医療院』の文字を含めること」も求められています。介護医療院の制度的骨格を固めた社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」で、医療関連団体からの強い要請を受けたものです(関連記事はこちら)。
したがって、既存の■■病院が全部または一部を介護医療院に転換する場合には、例えば「■■病院介護医療院」「介護医療院■■病院」という名称をもって都道府県に開設許可申請を行うことが可能となります(もちろん■■病院を名乗らなくてもよい)。ただし、特定の機能を持つことが名称から読み取れるケースでは「誤認」の恐れが高くなります。これをどのような調整をすればよいのか、9月15日の医療部会では、榎本総務課長から次のような考え方(論点)が示されました。医療・介護サービスを受ける側が「誤認しない」ことを重視したものです。
(1)法令に基づいて一定機能を担う医療機関では、その旨を示す呼称を含めることはできない(例、地域医療支援病院●●病院介護医療院などは不可、単に「●●病院介護医療院」であれば可)
(2)予算事業に基づき一定機能を担う医療機関では、その旨を示す呼称を含めることはできない(例、休日夜間急患センター●●病院介護医療院などは不可)
(3)ほか実態に合わない呼称、患者が誤認するおそれのある文字を含む呼称を用いることはできない(例、マタニティクリニック●●クリニック介護医療院、こども病院●●病院介護医療院などは不可)
(4)一部病棟を介護医療院に転換し、既存病院と介護医療院が併存する場合には、(3)のような呼称を用いることも可能
外付け型における宿直規定、医療療養の経過措置なども検討テーマに
ところで(4)の既存病院と介護医療院が併存するケースのうち「病院名を看板やホームページなどで掲示する」場合には、住民の誤認を避けるために、「既存病院名」(●●病院など)と「介護医療院名」(介護医療院●●病院など)とを、併せて掲示する(つまり2つ掲げる)ことが必要となります。この点について猪口雄二委員(全日本病院協会会長)や加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は「病院にとっては厳しいハードルである」と述べ、工夫してほしいと要望しています。
しかし、介護医療院という文字がなければ、利用者や患者などは当該施設が「介護施設である」ことすら認識できません。このために法律で「介護医療院という文字を使用する」ことが定められていることに鑑みれば、「既存の●●病院という名称だけを掲げる」ことは好ましくないでしょう。
なお菊池令子委員(日本看護協会副会長)は、患者の誤認を避けるために「介護医療院の文字を大きく表示することが必要」と提案(こちらも名称掲示に関する提案)。また山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)や邉見公雄構委員(全国自治体病院協議会会長)は「介護医療院の周知が大前提となる」と述べ、厚労省に大々的な広報を要望しています。
医療部会では、このほかにも、介護医療院に関連して▼併設型における宿直規定をどう整備するのか(いわゆる医療外付け型において、施設部分の夜間体制を、併設医療機関へのオンコールで可としてよいか、など)▼看護配置4対1などの基準を満たさない医療療養病床の経過措置(介護医療院への転換などのために、どの程度の期間、存続を認めるか。介護医療院では6年間の存続が可能)―と言ったテーマも検討します。厚労省医政局総務課の担当者は「医療部会の意見を踏まえ、早ければ年内には関連規定を整備したい」との考えを示しています。
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